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ドイツの憲政・法治の弱体化一25周年におもうー

Posted on October 12, 2015 By 何清涟 No Comments on ドイツの憲政・法治の弱体化一25周年におもうー

何清漣

2015年10月4日

全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

http://twishort.com/dGjjc

今年は東西ドイツが統一されて25周年を迎えますが、かつての「解放された空は真っ青に晴れ上がってま〜す」一辺倒だったのと違って、少なからず「政治的に間違っている」という声がでています。「東西ドイツ統一25周年;一切がうまくいっているフリをするのはやめよう」という文章は多方面から「ちっともよくない」現状の一面に触れています。それでも私は一番深刻な状況はこの文章は触れていない、今年のドイツが難民危機に際しての法律をほとんど無視した政府の行為が問題だとおもっています。これまで外国人がドイツに対してもっていた「ドイツ人は法律を守る」という実直謹厳な印象を覆し、ドイツには法治の基礎というものがあるのかと疑わしめるものだからです。

⚫︎*メルケルはどんな法律に違反しているか

難民受け入れでドイツ政府のやりかたは始終くるくる変わり根拠もありません。10日もたたないうちに、「無制限に受け入れる」から、再び国境での検問を実施し、十代政策が気ままに変わりその執政能力に疑いを生じさせました。

ハンガリーなど東欧4カ国の堅い反対の声の中、メルケルは9月5日に難民の無制限受け入れを発表し、副総理のガブリエルははっきりと今後毎年50万人の難民w受け入れるといいました。世界はドイツがそんなに難民を受け入れられるのかと危惧しましたが、ドイツ政界とマスコミの一部は「難民歓迎の文化」による道徳的高揚感と誇らしさに自己陶酔してしまいました。

ミュンヘンでは一週間に6万人以上の難民を迎え、そのうえ毎日、一万人を超える速度で難民はやってきました。ババリア州ではその負担に耐えかねて不満をいいだし、Mettmann地方政府は難民に対する財政支出の増加のために不動産税と商工企業税を値上げし、難民税とし難民歓迎した人もふくめた現地住民から抗議をうけました。情勢は急転直下し、連邦内政大臣・Thomas de Maizièreは9月14日午後、記者会見で、ドイツは”暫時”オーストリア国境地区での入国検査を行うと発表しました。メルケルの宣言から10日もたっていないのにです。

ドイツの政策のくるくる変わることで、ドイツのEU内部での指導的地位は深刻に傷つきましたし、またEU全体の統一性も深く傷つきました。こうしたすべての原因はドイツがさまざまな理由をつけて法律や各種の協定を破ぶったことからおきました。

まず、ドイツ政府が政策決定の過程で、「人権」を口実にEUの難民問題にかんする「ダブリンⅡ規則」(*1990年6月の首脳会議で合意、1997年9月発効)をひっくり返してしまったこと。この規則は難民はまずEUの最初に到着した国で登録を行うことになっていますが、ドイツはハンガリーで登録していな難民を入国させ、さらに特別列車を派遣して難民をドイツにつれてきたのです。

しかしその次には、押し寄せる難民を受け入れきれなくなったとき、ドイツ政府は「国家安全」を理由に、”暫時”、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可するシェンゲン協定からの「臨時脱退」を宣言し、国境での管制チェックを復活させました。周知のことですがシェンゲン協定は国境間で検査をしないということでEU加盟国の「加盟国ない無国境」の夢を実現したものです。

ドイツがEU内部のルールを破ったのは今回の難民危機が初めてではありません。EU国家のうち、ドイツはまっさきに「安定と成長の公約」に違反しました。理由は東西ドイツの合併で債務がかさみ、国内債務の比率が欧州国家のなかで最初にGDPの6割を超えたからです。ドイツが”模範”を示したため、フランスなども相次いでルールを破り、のちのち欧州債務危機に禍根をのこしました。ドイツは欧州連盟債務危機を最初に作った張本人なのです。

⚫︎*憲法裁判官の眼に映る法治の危機

連邦憲法院の裁判官Peter Huberは堪忍袋の緒を切らし、「フランクフルトアルゲマイネ」で「ドイツは自ら危機のなかへ」(Deutschland ist in der Sinnkrise, 09/30/2015),という一文でさまざまな面から鋭い批判をしました。

1;憲法のルールの衰弱、法治の侵食。ドイツは統一4分の1世紀で基本法がきめた民族国家を危機に故意に陥れており、法治国家としても侵食されており、民主は弱まって、権力の分立構造も執行者に有利な方向に偏って、連邦国家としての発展の方向が見失われている。
この意味は、政府の権力者の意思が法律より上にあって、かつバランスをとるための行政権力や議会権力がその責務を果たしていないので、政府と連邦議会の勢力の対比では「実際には政府の力をつよめており、議員個人には不利に働いている」と。

2;ドイツのEUに対してなしたところはその法治秩序に致命的な傷をあたえた。法律の政治に対する拘束力がうしなわれ、ユーロ危機においても条約を無視し、各連邦の州の管理上も連邦法がちゃんと実行されていない「超法律的な実例は枚挙にいとまがない」と。

3;ドイツの政党勢力の発展は選挙民のためになっていない。勢力の大きい政党の政治主著はひましに同じものになってきており、選挙民の影響力の可能性が剥奪されている。選ぶことができなければ選挙民の選択はなくなる。それにくわえて政党資金の配給では投票率が1%に満たない政党も国家の資金配給をうけ、一票ごとに0.5ユーロを受け取れる。このほかに連邦レベルの直接選挙と政党組織の構造の特徴として、ドイツの政党は自ら一切の権力を塩梅する力を持っており、政府の役職が党内のハイレベルが指定するため政党のメンバーは党内の権力者に依存し、その奴隷となりやすい。こうしたすべてが「市民が政治に何も言えないことを強化してしまい、こうしたことが長く続けば憲法への威嚇となるだろう」と。

この種の政党政治は「龍の種をまいて、ノミを収穫する」ということになりかねません。2013年のドイツ総選挙では左派の社民党(ドイツ社会民主党 SPD)は歴史的惨敗を喫し、キリスト教同盟(ドイツキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟 CDU、CSU)が勝利しました。しかしキリスト教同盟の得票は絶対多数に達しなかったため独立して政権をとれませんでした。伝統的盟友だった自由民主党(FDP)の得票はきわめてすくなく、国会に議席を得られませんでしたので、キリスト教同盟はやむをえず左派の中でも比較的温和な社民党と連合政権をくみました。社民党の核心政策の全国最低賃金など、すべてキリスト教同盟がわは飲みました。キリスト教同盟がメルケルの元で左傾するにしたがって、保守党を主とする連合政府は次第に差は政府になっていきました。多くのドイツ人が右派をえらんだのに得たのは左派政権という苦い結果となってしまったのです。

⚫︎*ドイツ政府の世論独裁

今回の難民危機の中でドイツ政府がおこなった世論コントロールはメルケル政府が民主主義の道をはるかに離れてしまった、と感じさせました。

難民の大量流入がはじまったときには「難民歓迎の文化」が主導的地位をしめ、ドイツのメディアも「政治的に正しい」という縛りをうけ、メルケル政府と一致した態度をしめしました。しかしソーシャルメディア上では「無制限受け入れ」について激烈な討論が巻き起こり、多くの発言者が、自分たちの国がそんなに多くの難民を受け入れる力があるのか」、「難民の面倒を見なければいけない社会福祉国家としてどれほど能力があるのか」、「彼らと文化的な融合は可能なのか」、と多くのネット民の不満がきかれましたが、政府はこうした声はきかないうちに決定をくだしました。

そして、政府はこうした疑問を口にする人々を「ブラックなドイツ」としてその言論をすべて「新ナチス的民族差別主義言論」として、ドイツ版のネット監視・管制の挙にでたのでした。9月14日、法務部長のHeiko Maasはフェイスブックの代表をよびつけ、フェイスブックとNGOによる小グループを結成し、「ヘイト言論」を即刻削除するように求め、さらにそうした言論にたいして反証をあげることをもとめました。9月下旬には国連の全体会議の間隙をぬってメルケルはフェイスブックのCEOのザッカーバーグに民族と難民についての発言が増えていることを指摘して、ザッカーバーグは厳しくコントロールすることを約束しました。

こうした言論統制のやり方はドイツの一部の知識人には我慢のならないもので、ベルリンフンボルト大学の東欧史・スターリン主義研究者のJörg Baberowski 教授はスイスのノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)紙に「ドイツは自らを道徳国家にしようとしている」という一文で、「ドイツ政府は市民の心配をよそに、世論統制による専制統治をおこなおうとしている」、と警告しました。メディアは政府に追随し、「政治的な正しさ」を保ち、世論に対して勢い付け助長させるような専制的態度をとっていると。「しかしドイツの現実から見れば、市民が提起した問題はどれも道理のあるものである。この種の世論統制の結果おきることは大変深刻で、市民に政治にたいして冷淡にさせ、ドイツの社会的な調和と凝集力を存亡の危機においやるだろうと、それなのに総理は彼女がひとりで生み出している災難をみてみぬふりをしている。他の国なら政治家はもっとちいさな過ちでも辞任しているだろう」と指摘しています。

メルケルとその仲間たちが間違っているのは言論の自由とは真理を表明することであり、「政治的に間違った」発言は削除され制限されるべきだとおもっていることです。言論の自由と法治の関係ではたしかにドイツ人の認識は米国人にははるかにおよびません。

米国の権利の法案第一条は「国会は以下のような法律を制定することを禁じる。;一種類の宗教の確率、あるいは信教の自由を禁止すること。言論出版の自由を剥奪すること。人民の平和的集会と政府に要求する権利を剥奪すること、となっています。

米国では「言論の自由」と「真理の追求」の間の限界は大変はっきりしています。言論の自由の唯一の目的はすなわち、誰であれ自らの思ったことを話すことができるということの保証であり、この世の中には永遠に異なった意見があることを保証しているのです。そしてそれはたった一種類の声しかだせないということでは絶対にありません。たとえそれが公に「政治的に正しい」とされていてもです。

旧ソ連などの社会主義国家では言論の自由の目的は真理を追求するためだとされていたために、言論管制が出現したのです。当局者や当局者が許した一群のいわゆる「大多数」がつねに自分たちの観点や考え方を「真理」として宣伝し、異なった意見をそれでもって圧殺したのでした。

難民問題で、ドイツ政府はすでに対応する根拠をうしなっており、法治に破綻し、社会的な再認識・反省を引き起こしたことで、すでに難民問題そのものの問題を超えてしまっています。注意にあたいするのはすくなからぬ批判者がこの件を深く考え、「東西ドイツ統一以来、こうしたやりかたで問題の起源を考えると、これは『政治的にただしい』で長いこと抑圧されていたから、その思いが爆発した」と述べていることです。

ドイツ民族はかつて、大変よく反省する民族でした。今回の難民の危機はドイツ人に深くさまざまに考えさせて行動をうながすことでしょう。法治の弱化によってドイツを危険なまでになっていますし、この状態をなんとか変えていくことは急務だからです。

(終)
なお、本文のドイツ資料の翻訳、チェックはドイツのネット友達の野罂粟さんの大きな協力を得ています。

拙訳御免
原文は; 德国的宪政、法治在弱化 – 写于德国统一25周年之际 http://www.voachinese.com/content/heqinglian-blog-germnay-20151004/2991014.html

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日文文章 Tags:ドイツ, 世論独裁, 何清漣, 国境での管制, 政策決定, 法治の危機, 難民, 難民税

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