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アラブの春とノーベル平和賞

Posted on October 26, 2015 By 何清涟 No Comments on アラブの春とノーベル平和賞

何清漣

2015年10月20日

全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

http://twishort.com/Zwpjc

2015年のノーベル平和賞はチュニジアのイスラム勢力と政教分離を重んじる世俗勢力の歩み寄りを促し民主化推進の力となった「チュニジア国民対話カルテット」に与えられ、婉曲なやりかたで世界に「アラブの春」の残したものに注意を喚起しました。「血まみれの騒乱の中からの果実」が生き残れたのはこの組織の努力があったからで、チュニジアの動乱を終わらせ政権の平和的移行を促したのでした。

*チュニジア;革命で唯一生き残った赤ん坊

2011年の中東・北アフリカでジャスミン革命が起きた当初、世界中でこれを讃える声ばかりでした。そして「アラブの春」と呼ばれ、「民主化の第三の波」はまだ成功してないけれど、成功する望みに大きな希望が寄せられました。しかし、エジプトでは「第二の革命」がおき、軍政府が捲土重来、復活しムスリム同胞団を残酷に弾圧し、西側世界はやっと今回の革命の血糊の中から民主という子供は生まれないのだと知ったのでした。

今、カダフィ政権を倒したリビアでは地方武装勢力同士が衝突し、東西に二つの政府ができて分裂統治状態です。シリアの内戦では400万人以上の人々が住む所を失い流浪し、最後には欧州に向けての巨大な難民の潮流となっています。もっとも深刻なのはISがこの混乱に乗じて漁夫の利をしめ国際的に最も脅威となるテロ組織になったことです。しかし西側は「政治的な正しさ」というタブーによって、この恐ろしい結果と数年前のアラブの春との関連させたがりません。

2015ノーベル平和賞がチュニジアの「チュニジア国民対話」大会に与えられた理由は「最大労組チュニジア労働総連盟や経営者団体である産業商業手工業連合、人権擁護連盟、全国弁護士会の4者がおこなったチュニジア国民対話大会はチュニジア社会の異なった価値観をもつ社会に、中東の揺れ動く局面の中で各自の調停作用を発揮し、平和的な過渡期を実現し、短期間内に憲法体系を作り人民全体の基本的権利を保障した」とはっきり言明されています。ノーベル賞委員会が特に強調しているのはこの4者の協力機構に対して賞を与えたものであって個別の4組織に与えたのではない、ということです。

チュニジアはまるまる5つの異なった過渡的政府を体験しており、その政権交代の多くは大規模な抗議行動やはては政治的な暗殺事件までおきました。全国対話大会が成立後も何度も困難な局面解決のための話し合いが行われてきました。イスラム復興運動党と政治的な手詰まりに直面して、彼らは政治的なチャート図をつくりまず民主憲法をつくって、選挙を実施する道を開きました。2014年12月21日に行われた初の大統領選挙の決選投票で、与党ニダ・トゥーネス党(「国民の呼びかけ」党)のベジ・カイッド・エセブシ党首が現職のモンセフ・マルズキ大統領を大きく引き離して当選し、12月31日にチュニジア初の民主選挙で選ばれた大統領として就任。2015年1月、揺れ動きながらもなんとか第一回の正式な政府を樹立し、政治的過渡期が基本的に集結しました。いまは国民議会第1党ニダー・トゥーネスと連合政権(エンナハダ,自由愛国連盟(UPL)(第3党,16議席),アフェック・トゥーネス(第5党,8議席)には多くの全国対話大会の4組織のメンバーがおります。

ではなぜ、4つの中東の国々のなかでチュニジアだけがこうした成熟してかつ政治的な頭脳を有する社会組織があったのか? それは、私が「チュニジア憲政の“*パスディペンデンス”ーアラブの春3年目回顧⑴」http://yangl3.sg-host.com/2014/02/05/jasmine-revolution-1-japanese/ (2014年2月1日)などで論じてきていますが、;「ベンアリ政権時には開明的専制がおこなわれ、経済発展追求のほかに、ベンアリは人権を擁護し、民主拡大を政権目標にして多くの出版統制令を廃止し、個人が新聞を経営したり民営放送局を許し、多党制もみとめて、ときには政府が反対党に活動の資金援助もしてチュニジアの軌跡をつくってきており、エジプトやリビヤと違ってチュニジア革命の前にすでに中産階級社会を生み出しており、民衆の権利意識の発達度合いが比較的高かった」のでした。

まさにノーベル賞委員会のカーシ・クルマン・フィーベ委員長は;「国家はそれぞれ違うし、体制もそれぞれ違う。しかし、私たちはチュニジアでおきたことと価値観、そしてその過程が他の国家の参考になり啓発となることを希望している」としています。

*人口爆発がアラブの混乱の源

否定できない事実は、アラブの春が世界与えた教訓は;革命は旧体制を覆せることはあっても、必ずしも民主主義をもたらさない、ということです。

米国の著名な政治学者ハンチントンは「第三の波」で近代歴史上の民主化の波は三回あり、第一波は米国の独立とフランス大革命に始まり19世紀末の欧州全体の民主運動をもたらした。第二の波は第二次大戦後の民族独立の潮だった。第三の民主化の波は1974年のボルトガルのカーネーション革命からはじまり、この波は80年代にはラテンアメリカや東南アジアにおよび、1989年に最高潮に達した。東欧の民主への戦いは間接的にソ連の崩壊をうながし90年代はじめに南アフリカを席巻した。第三の波は多くの過去において民主を経験していない国家に、自由化、民主化、民主の亜流や場合によっては民主をより強固にすることまでやりとげた。フリーダム・ハウス(*アメリカに本部を置国際NGO団体)1998年当時で世界には自由な国家88、半自由国家53、不自由な国家は50としている。

民主の波の勢いは止め難いとはいえ、しかし中東と北アフリカはイスラム教を信じるアラブの国々で、「第三の民主化の波」はすれすれに掠って通りすぎていきました。2011年チュニジアのジャスミン革命が起き、その影響がエジプトに及んだ時には西側メディアは拍手喝采し「アラブの春」と呼びましたし、これは第四の民主化の波をひらくだろうとさえいいました。

しかし、当時、私は「この革命と第三の民主化の波の及んだソ連や東欧とは違う。ソ連・東欧の波が起きたとき、世界ははっきりとその変化は民主化に向かうとわかっていましたが、中東・北アフリカといった国々でおきた革命では未来の制度的な出口はどこにあるのか判断は大変難しい。これらの国々の歴史をみると、かつて分析したとおり誰が権力から一番近いかによって誰が次の統治者になるかが決まる」と述べました。

私がこう判断した理由は、私はいかなる社会のモデルチェンジの過程であってもそれはかならず、パスディペンデンス(path dependence *経路依存性=過去の合理的選択が現状を生んだと推測されるケースの多くが実は歴史的偶然と政策的介入によって決定されているのだ、 という考え方)があると固く信じていたからです。つまり一国の政治、経済、文化など各種の要素は現在につくられるだけでなく、かならず国家の未来の選択に影響をあたえる、ということです。(埃及政治局势的“场景想定”2011年1月31)

中国と欧州ではシリア難民は米国が広めた民主政治が引き起こしたとがめである、とおもっています。事実はそんなことではありません。わたしが《“外部势力”对两波民主化影响之异同(未訳)》(2011年7月22日)で書いたのですが、革命が発生した理由はこうした国家内部の政治経済が演じる必然的結果なのです。冷戦が収束してから西側の自由世界は「社会主義」という共通の敵を失い、それぞれに外交政策を調整しましたが、もはやイデオロギーと政治制度を重要な考慮の要素とはしなくなりました。中東や北アフリカの革命がおきたとき、西側国家はまさに2008年からの金融危機がもたらした経済不況と財政難にあえいでおりました。革命が起きた時も米国の反応は鈍く、何日もたってから道義上の支持を表明しただけでした。

中東・北アフリカで革命がおきた理由はこの30余年の人口爆発と関係があります。1960年から2000年にかけてアラブ世界の人口は7500万人から3億人になりました。4倍に増えたのです。ハンチントンの「文明の衝突」ではすでにこの問題は指摘されています。彼は1990年に比べてチュニジアの就職マーケットに参加する就職者は3割増え、エジプトでは5割増えたと指摘しています。アラブ社会の識字人口は急速に教育のある若い世代と大部分が教育を受けていない年上世代とのジェネレーションギャップがうまれ、これによって「知識と力の間の分離」が「政治システムのあちこちに緊張状態をもたらした」のです。

*アラブの春のうまれた4か国に共通する特徴;青年失業率3割以上

シリア難民の危機が欧州を直撃したあと、すくなくとも二つの権威ある分析がアラブ世界の人口問題を指しています。アラブ学の専門家であるオーストリアのKarin Kneisslの「難民;青年男子の長征」は難民の波の一大原因はアラブ国家における人口激増だと指摘し、この30年間、シリアの人口は900万人から2200万人に増えたこと、欧州に向かう難民の8割は30歳以下の若い人だとしています。

ドイツ連邦の刑事警察公務員連盟の委員長・André Schulzは9月14日に発表した「難民政策の多変化」でアラブの春発生時に、ドイツ外事領域とドイツ安産部門ははやくも難民の潮の脅威について警告を発していたと指摘しています。例えばドイツ刑事警察BKAは蛇頭型犯罪が難民の量を増やす可能性について連邦政府に警告をだしており、そのご2012、2013、2014年にも度々警告したのに、欧州連合とドイツの政治政策決定権をもつ人々は聞こえないふりをつづけ、結局今日の様相を招いた、と。

*ノーベル平和賞は警告だが、平和は容易ではない。

オスロの今回のノーベル平和賞は世界に対してアラブの春の波及したたの国家、チュニジア以外はすべて動乱の中にあり平和は遅々としてこないということへの注意喚起です。

この教訓を一番に学ぶべき国家は、実は人口が多く、失業率の高い中国なのです。中国の朝野はジャスミン革命に対する見方が両極端にわかれ、政権担当者の中共は①アラブの春は民主は動乱をもたらす。②少数の異議人士はこれらの革命に無条件に歓呼の声をあげ、その声はいまは少しは薄まりましたが、革命の血の跡はかならず民主の子供を生み出すという考え方はいまだに存在します。

未来の中国の政治がどの方向に向かうかを決定するのは、中国当局が現段階では主要な力であり、異議人士の努力は決定的な力をもちません。ですから中国当局がまだ多少なりとも政治的責任感があるのであれれば、アラブの春の教訓をくみとり、ベンアリの啓蒙的独裁政治を学んで自国の各種社会組織に少しは政治活動の余地を残し、未来の中国と平和的なモデルチェンジのための力を残しておくべきなのです。(終わり)

拙訳御免。

原文は;阿拉伯之春与2015诺贝尔和平奖 http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-nebel-peace-prize-tunisia/3014291.html

何清漣氏のこれまでの論考は;http://yangl3.sg-host.com/japanese/

ごく最新のは;http://yangl3.sg-host.com/japanese/

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日文文章 Tags:アラブの春, ノーベル平和賞, 人口爆発, 何清漣, 失業率, 民主化

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