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今節の中国総理は”やってらんないお仕事”

Posted on May 28, 2016 By 何清涟 No Comments on 今節の中国総理は”やってらんないお仕事”

何清漣

2016年5月15日

全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

https://twishort.com/S12kc

 

中国共産党の最高指導部のある中南海の「南院」と中国国務院のある「北院」間のトラブルはますます多くなってきています。これまでは経済官僚とかブレーンの間でチラホラと囁かれていたことでしたが人民日報の5月9日付の「第1季の大勢に関してのインタビュー」という重量級の記事(*ジジ注;「党の喉舌」であるはずの人民日報が2016年05月09日 付で匿名の「権威人士」に長文のインタビューをして、しかも「中国の回復はVとかUではなくLだ」などと抑制されてはいるが”批判的”なトーンになっている;paper.people.co..160509_6-01.htm)、そしてその後、李克强総理が「国のために我慢し譲歩する」という(*ジジ注;経済に対する権力の干渉をすくなくすべきだ、との内容)報道が行われ(*同;gov.cn/xinwen/2..ent_5071754.htm)、南院と北院の矛盾があからさまになったのでした。

★今季の中国総理は損な役どころ

「人民日報」のこの記事が重視されるのは内容が正しいかどうかではなく、人民日報は中共中央の機関紙であり、通常は”天子”のお声を伝える中共の「ナンバーワン機関紙」だということです。今回の「権威人士」はこれまで「中国経済への5つの質問」(2015年05月25日 finance.people…4-27048523.html)や「サプライサイド構造性の改革についての7つの質問」(2016年01月04日 paper.people.co..160104_1-02.htm)で人民日報に登場しています。先の人民代表大会・全国政治協商会議の席上、李克强総理が政府報告を行った時の習近平総書記の礼儀を失した拍手ぶりから、「習近平は李克强首相に対して極めて不満なのだろう」という憶測が外部にかけめぐりました。総理を取り替えるかもしれない、といった話はこの数年、海外の中国語メディアでは時折でてくる格好の中南海ネタになっています。

側からみていると、今季の総理は確かに運が悪いです。この「不運」には二つの意味があって、ひとつは彼が引き受けさせられた「家産」がボロボロなことで、紅楼夢の「外観はちゃんとしているが中身は空っぽ」だからです。私は2012年10月に「黄金の10年が残した経済遺産」(bbc.com/zhongwe.._10_years.shtml)で習・李が引き継ぐのは中国経済がピークをすぎて衰退に向かう転換点であり、経済牽引のトップの不動産業界はバブル化、世界の工場は衰退し、いわゆる経済成長率の鈍化はただの表向きの指標で、本当の問題は、いかにして新たな経済成長のポイントをみつけ、失業の大軍に飯を食わせるかであり、李克强は、全世界的な経済の中で経済における相対的な優位性を再構築するには数々の困難がつきまとい、ひきつづき通貨増発による経済刺激策は大変危うく、失業問題を解決するのは大変な困難であろうと書きました。

第二の「不運」の意味は「船長と一等航海士の仲が良くない」ということです。江沢民の時代は、江沢民は「中心人物」ではありましたが、朱鎔基総理の国務院の仕事には対して口出ししませんでした。朱鎔基は鄧小平が「あいつは第一人者で二番手にはなれない男」といったとうり個性的な人物でしたが、江沢民総書記も李鵬総理もそれぞれの役割を果たしたのでした(朱鎔基にまかせた)。胡錦濤は温厚な人柄で国務院に嘴をいれたりせず、温家宝が2013年から国の内外で大いに民主だの、世界の普遍的価値だの政治改革だの中共からみれば「政治的に正しくない」立場の話を山ほどしたのをきいても知らん顔をしていました。

しかし、今の習近平に対しては官僚たちは各種の談話には決して異議をとなえず、。南院が北院のやることにいちいち嘴をはさむなどというのは当たり前になって、例えば昨年の株式市場介入やマーケットと戦って負けた(*株価値下がりをくいとめられなかった)ら、数十人のマーケット政策を担当した役人を逮捕するなどということにたいしても北院はどうすることもできなかったのでした。

というわけで、もし、政治協商会議や人民代表大会ならのんびり国家指導者の役割を果たせたでしょうが、今季の総理役は不運で、「間違った時間に間違った権力の場にたってしまった」のです。李克强はあいにく中国という大船の一等航海士になってしまい、その上に唯我独尊の船長をいただくことになってしまい、残された道は「国家のために我慢する」しかないのでした。

★「リコノミクス」と真反対の経済政策ひたはしり

「間違った時間に間違った権力の場にたってしまった」というのは別に冗談ではありません。というのも李克强が総理になる前の2009年から中国は世界最大の貨幣印刷機になってしまったのです。
スタンダードチャータード銀行 のレポートでは中国の広義の貨幣供給量(M2)は最高で13.8兆米ドルで全世界で第一の貨幣大国です。「中国通貨の過剰発行、経済貨幣化は世界トップ」という記事には2009年以来、中国の中央銀行の通貨供給量は前後して日本、米国、欧州を抜いて世界最大の通貨印刷機になったと。2012年の全世界の新規通貨供給量は26兆人民元で、中国はその半数近くを占めるとあります。

李克强は中国経済の問題がどこにあるかわかってないわけではありません。ですから彼は首相になる前の2012年に政府に世界銀行と国務院発展研究センターと共同で「長期経済改革路線図」をつくらせ、そこには

1; 銀行の私有化進展。外資銀行の中国市場参加で競争を許し、同時に政府の銀行に対するコントロールを弱める。
2; 土地の私有化、農民に自由に土地を売買させる。
3; 国営企業改革をすすめ、民営企業の発展を促す。
といったことが含まれていました。

この改革の青写真はやがて「大安売りの値引き」をさせられましたが、それでも金融の自由化はなんとか保っていて、2013年5月、李克强は新しい経済改革措置を宣言し、バークレイはそれを「リコノミクス」と名付けました。その内容は主に3つあって

1;経済刺激政策をやらずに、構造改革を推進し、大まかな考えの基本としては政府の行為を制限して、2008年経済危機以来の政府の投資と国有経済の過度の膨張を修正する、例えば「財政による経済刺激を制限」は「国家主導の投資行為を縮小する」であり、「レバレッジ化をやめる(金融機関の負債を減らす)」は、信用貸付の増加を抑制して債務削減を大幅におこなう、ことで、「構造改革の推進」はさらに内容が豊富で、金融、財政、土地など各方面を網羅しており、政策の目的は短期的な痛みを覚悟して長期的な経済の持続的発展にもっていくことでした。

しかし、問題の在り処がわかるのは問題を解決できるということは違います。2013年7月に私は「李克强経済学」の制度基礎は何処に?(heqinglian.net/..nomics-japanese)
で「リコノミクス」の最重要理念は政府行為を制限して、経済主体は自ら責任を負うという点だと指摘しました。しかしこれには権力の市場に対する働きを制限しなければなりませんが、問題は中共政治は、政治・資源・世論の3つを独占しており、必然的に無責任政治となり、中央政府は(首脳も含めて)、いかなる間違いをおかしても下野することはなく、行政長官を含む地方政府もいくら借金がつみあがってもその責任を問われて地位から降ろされることはない、というその一点だけでリコノミクスは現実的な制度的基礎を欠いているといいました。

一ヶ月後、「リコノミクス」のうち「経済刺激政策をとらない」「レバレッジをやらない」という二項目は地方政府の投資への進軍ラッパのもとで破産してしまいました。20以上の省や市では次々に下部に対して鉄道、道路、飛行場建設プロジェクトを頑張るようにという要求を発しました。約36の市は地元で都市建設、交通プロジェクトのスタートを申請し、鉄道建設と都市の貧民街改造が新たに地方政治の投資先のホットスポットになりました。つまり、国際投資業界が「中国政府は無理なレバレッジをやめる」というリコノミクス市場改革の表明に歓呼の声をあげていたとき、中国政府はもうすでに銀行が地方政府の投資を大規模にささえる方針を決めて、このレバレッジを「限定的な金融支援」と称していたわけです。

当時のことは「政府投資の大号令がリコノミクスを吹き飛ばす」( 2013年8月13日 heqinglian.net/..econ-japanese-2)に書いております。その中では「人々が期待している『リコノミクス』改革というのは前任者の温家宝が2008年以来やってきた政府刺激による経済発展政策の延長であり、せいぜい『古い瓶に新しい酒を入れる』程度のもので、中国経済は政府投資の刺激の元で前の通りの道筋を狂奔するしかない、と述べています。

★どんな強者であろうと形勢は如何とも…

総理は全国の経済に関する事務を掌握する立場だ、といったところで事実上は政策の方策をもっているだけで、そんな姑が家計を預かっていたところで無数の気の強い嫁さんの群れに勝てるわけがありません。地方政府のいうことももっともで、教育、医療、老齢対策などに全部お金がいるわけで、そのお金をゲットするためには不動産業を発展させ、地方の安定がかかせず、国営企業の労働者は失業させるわけにはいかないし、さらに発展のための各種プロジェクトもやらなければならず、つまり何をやるにも銭、銭、銭、でお金がなければ何もできません。であるからには銀行からジャブジャブお金を流して嫁さんたちの食卓に食べ物をあたえなければならないのです。

つまり、リコノミクスというのは生まれた時からその運命は決まっていたのです。金融マーケットは西側市場経済国家の産物で、中国の金融は政府がコントロールし、政府が経済行政にかかわる道具にすぎないし、国営企業と政府がシャムの双生児のように一体となった重要なファクター要素なのです。それを市場化するというのは病人に自分の手術をさせる外科医になれというようなもので、メスを手にとるより先に病人は逃げ出してしまうのです。

この後の「一帯一路(*海と陸のシルクロード計画)」は南院のお得意の絵図です。今年になって債務を株式化して中国銀行の不良資産を外資にファンドにパックして売りつけるなどは朱鎔基が在任当時に編み出した古い手口ですが、しかし十数年がたっている今、中国経済と国際経済の環境はすでに昔とはすっかり異なっており昔のような結構な景色の構図はなく、昔のやり方を新しい情勢でやろうとしても基本的には効果はのぞめません。

ある人が「人民日報」がああした記事を掲載して南北両院の争いを表面化させたのはどうも李克强に罪をなすりつけるような感じがすると言っています。でも私はそれなら却って、後になってからなすりつけられるより今のほうがまだマシではないかとおもうのです。現在の情勢のもとではどんなに冷遇されてしまっても、「塞翁が馬」になるでしょう。

今や通貨政策は極度の疲労状態で、お金をバラバラばらまいても深い井戸の中にほうりこんでもポチャンという音すらも聞こえないような状態ですから、誰が現政府の総理になったところで中国経済に起死回生の術などほどこすことはできず、結局は「功績なく、過誤ばかり」ということになってしまいます。

もし、習近平が自ら「習近平ミクス」をやりたいというのなら、むしろ結構なことです。習近平が大権を握っていれば経済情勢がさらに悪化して、通貨を印刷するお金すらなくなってしまったとかいわれるかのベネズエラのようになったとしても、中国政治の「罪のなすりつけゲーム」では「現役最高指導者に罪をなすりつける」ことはこれまでなかったのですから。(終わり)

拙訳御免。
原文は;何清涟:本届中国总理不好做 voachinese.com/..14/3330462.html
何清漣氏のこれまでの論考は;heqinglian.net/japanese

 

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日文文章 Tags:中南海, 中国総理, 何清漣, 李克强

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