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★中紀委の映画「永遠の途上」は何を言いたいのか?★2016年10月24日

Posted on November 22, 2016June 7, 2017 By minya-takeuchi No Comments on ★中紀委の映画「永遠の途上」は何を言いたいのか?★2016年10月24日

 中国共産党中央紀律検査委员会のTV映画「永遠の途上」の放映が始まりました。中国の最高権力層が自国の政治腐敗をどう見て、どう解決しようとしているのかを知りたくて、党中央紀律委員会のドキュメンタリー映画シリーズ「永遠の途上」を本気で集中して見ました。第五回まで見終わった私の感想です。(訳者注;2016年10月27日開幕の第18期中央委員会第6回全体会議=6中全会=に向けて放映されている。この中国中央テレビで放映されているシリーズには習近平の”反腐敗”で失脚した幹部本人らが、連日出演し、過去の自分たちの「犯罪」を反省する)。

 ⑴ 明らかに「制度的な腐敗」という本質を避けて、根元の問題を腐敗は役人がだらしなく、自分を律してないから思想を改造しなければならない、とすり替えています。

 私は1998年に「現代化の陥穽」(邦訳;2002/11/30 中国現代化の落とし穴ー噴火口上の中国
)で指摘しましたが、中国の腐敗は制度的なもので、その原因は中国政府が、土地、森林、海、湖、鉱物資源などや、神社、文物、観光資源などの文化、さらに業界への認可、許可、開発権利への審査権など全てにわたって一切の資源を独占していることが原因だと指摘しました。これによって政府の役人が「国王製造人」になり、一家の中で妻や子供を代理人にしてビジネス界と結託し、自分の権限を金銭にし、利益と引き換えることができるのです。しかし、映画にでてきたのは全国人民代表大会環境資源保護委員会副主任委員の白恩培(収賄で猶予付き死刑)、全国政治協商会議副主席(副首相級)の蘇栄、河北省委員会書記の周本順(*河北省トップ)という連中でした。登場しなかった中央政治局常務委員だった周永康や中央軍事委副主席の郭伯雄なども同じパターンなのですが。

 しかしこれは「党員幹部の思想認識」の問題ではありません。制度的な権力のせいなのです。役人が各種の資源配分で強大な権利を握り、また監督役も兼ねていれば、この種の問題の起きることは免れません。ここでは、党の教育がどうだとか、汚職役人たちの立派なお言葉の語録などは中国人はもう耳タコですから、言及しません。

 しかし、中共はこの「自分で監督する」はダメだとは認めませんし、ましてや西側の三権分立体制での違った立場からの監督が有効だなどとは絶対に認めません。そんなことをしたら三権分立が一党独裁よりすぐれていると承認することになります。これは中共には絶対、譲れない一線なのです。

 ⑵ 腐敗官僚の汚職金額を大幅に縮小して呈示

 過去に始終報道されていた億元クラスの腐敗官僚は映画に登場しません。出てくるのは腐敗額が大体、2000万元から3000万元クラスです。何十ものマンション、時には100以上のマンションや住宅を持っていた腐敗官僚も登場しません。北京の土一生金一升の土地で金融街を牛耳って、のちに北京市副市長になった呂錫文が業者価格で購入した5つのマンションは市価大体2000万元以上とされます。この事件を中心にもってきて分析するという意味は、これが「中国での最大級の腐敗事件」だ、と言いたいわけです。

 一番滑稽なのは、もっぱら「汚職腐敗は飲み食い」だ、としていることです。飲んだり食べたりすることは江沢民時代からもうとっくに腐敗のうちに入りませんでした。これは私が中国にいた当時からもう役所の常識でした。しかし、この映画の中で登場した、飲み食いして失脚した役人はみな習近平が「反腐敗キャンペーン」を始めた中国共産党第18回全国代表大会は(2012年11月)以後にやらかした連中です。吉林省の副省長の谷春玉は2015年に40回以上の飲み食いをしただの、広州市委の書記・万慶良が贅沢な消費をしただの、天津医療集団の総経理長の張建津は茅台酒と魚料理が好きで庁内にそのための専用レストランを作ったとか、その詳細な話は、全くこんなに政治や仕事で発揮する知恵があるんなら、中国はダメになるなんて心配はいらないではないか?、といいたくなるようなお話ではあります。

 中国の役人の腐敗はすべて酒と色とカネです。この中で「酒」(飲み食い」は一番軽い方ですす。失脚した役人は大半が「色」がらみのスキャンダル付きです。しかし、この映画ではきれいさっぱりそういった方面は忘れられています。万慶良の話でも、もっぱら「飲み食い」だけが一番の腐敗行為だったように作られています。思うにこれは党のイメージを考えてのことでしょう。もしメディア上に伝えられてた無茶苦茶な、100人以上の情婦がいたとか、MBAのノウハウを使って情婦群を管理していたとかとか、無数の不動産王のようなオヤジだの叔父貴だの、大姉御の豪邸がゾロゾロ出てきたら、中国の一般庶民はカンカンに怒るでしょうから。85%以上の中国人は一家総力をあげても1棟の住宅を購入するのすら難しいのですが、役人となれば下っ端から国家レベルまで、ほとんどすべての役人が一家で何棟ものマンションや家を持っていますし、もしそれが映画にでもなれば、いかに中共だって「人民の政府」という看板を掲げるのは恥ずかしくなるでしょう。

 ⑶ 役人が「友を選ばば」

 役人とビジネス界の交友、これが中国の改革解放後のメインテーマになっています。ビジネスマンはみな、胡雪巌(清朝の大商人で役人の地位も得た https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%A1%E9%9B%AA%E5%B7%8C)に見習って、上は権力貴族と交わり、下は暗黒街の連中とも通じ、役人の妻や子女をビジネス上の最重要接点としました。役人の妻や子女は父親の権力は使えますが、しかしビジネスに関わることはできませんで、清潔でなければなりません。白恩培の妻の張慧清は代理人となって、夫の直轄地では「張姉御のできないことは何もない」と言われるほどでした。周本順も息子誰かと組んでビジネスを始めるときは必ず「来賓挨拶」に出かけて行きました。ビジネスマンの息子の上にバックがいるということをみせつければ、事が容易にはこび、どこからも攻撃されないと知っていたのです。李春城(中央委員候補、失脚)も妻子に勝手に賄賂をとらせてましたし、蘇栄一家は妻も子も、娘もみなして「大金持ちに向かって大躍進」していました。

 こうした官僚たちの事件の結論としては、みな一律に「ビジネスマンの危険性に対しての認識不足であった」と説明されます。北京の副市長だった呂錫文夫妻は自分の友達はテニスや健康、酒の品評会の人々だったが、後になってテレビで罪を悔いて見せたときには「友達だとおもっていたが、実はみな友達になるために自分の趣味や要求を調べ上げて迎合してくるのであり、最後には『友達のせい』でひどい目に遭った」みたいな話をしています。

  実際は、役人の権力が及ぶ「資源」がビジネスと無関係なら誰も寄ってきません。役人のビジネスマンとの「友情」の本質は初めから終わりまで明々白々で、監獄に入れられてから「友達の選択を間違えた」もないものです。

 ⑷ 外部の誘惑に耐えるのは「自分自身」という先進的制度

 映画の中では再三にわたり、延安時代から反腐敗をやっていた「我々の制度」は良い、と強調します。役人は主として家族に対する愛情から、外部の影響、とくにビジネスマンからの良からぬ誘惑に遭ったらどうすればいいか?その答えは「己を正しく保つ」で、つまり自分自身の思想を高め修身に励む、ということです。「修身」とか「精神を養う」ということなら、中国の伝統文化は周書の「卒名」から始まって、唐の太宗の「官吏を治める」まで、役人と企業家の間は「清く親しんで」関係を真っ白にしておけ、とか山ほど「為になる立派な言葉」があります。

 おそらく、プロデューサーから監督や映画作りに参加した人たちも、捜査した規律検査の役人だって誰も、本当はこうした「我が身を正しく保つ」などという言葉が役人に有効だ、などとはおもってはいないでしょう。

しかし、彼らもおそらくご存知ない原因があります。中国は周王朝以来の貴族教育と儒教思想の中で統治者には「権力を世襲する王家は天下が決める」という帝王教育が行われてきたことです。権力は権力の源泉にのみ責任を持ちます。そして天下が我が家のものであれば、皇帝は幼い頃から、いかに皇帝として、長い平和を保つために、いかに民を愛し、民に親しみ、民をなだめるかということはその教育にふくまれています。どの皇帝も先生から「天子は世界のすべての所有者だから、蓄財などしてはならない」と教えられます。しかし、中国の現代の最高指導者の権力は皇帝権力並みなのですが、総書記は帝王学教育を受けてはいませんし一般の「世襲力」も持っていません。そこで、常務委員はみな家族や子供のために命がけで権力を利用して蓄財に励み、みんなルイ15世のように「我が亡き後は大洪水もなんのその」なのです。
 
 この映画は当然のことながら、世界を仰天させた「中国オフショア金融の秘密」だの「パナマ文書」には触れていませんし、近年、アメリカのメディアが暴露した最高権力層の家族の腐敗にも触れていません。「裸官」問題も深刻ですが、これまでにみた5編の中では触れていません。今後に期待しましょう。

  この映画の伝えたかった要点というのはなんでしょうか?

 ① 18回大会以後に処分を受けた役人は、その多くが「飲み食い」が原因で落馬しています。例えば、職場のメンバーに月餅を二箱(315元)贈った海南島衛生局の責任者、子供の結婚式に同僚に参加を強要して2万元以上のお祝い得た局長クラスの巡視員、ブラジルにW杯を見に行くお金をださせた政府官僚……といった具合です。これは一つには、18回大会以前の汚職高級官僚たちに、今後騒ぎを起こさなければお前らは許してやる、というサインでしょう。そして役人たち全部に、「以前は気にしなかった腐敗でもいまはダメ。遠慮なく逮捕する」です。

 ② 反腐敗は効果があった。過去の共産党が戻ってきた。

  およそ権力のあるところに腐敗がないところはない。しかし、三権分立の制度だけが腐敗退治に有効というわけではない。映画でも大雑把に西側の反腐敗の理論をちょっと説明していますが、しかし最後には中国や外国の専門家たちに、中国の反腐敗のやり方のほうが効果的だと語らせています。つまり、本当に強調したいのは、「豚や鶏を殺すにも、それぞれ色々なやり方があるように、腐敗たち時にも中国には中国の立派な方法があって、同じ組織が監督するというのは、別に西側の別組織による監督方法に負けない」です。

 映画は、茅台酒の製造元が一般人向けに経営方針を切り替えたことや、高級キャバレーが廃業した話を並べて、反腐敗の効果をみせて、大衆エキストラたちにこれを賛美させています。そのなかでキラリと光る名文句が「昔の共産党が戻ってきた」というセリフです。でも言ってたのは60歳代にみえました。文革期に成長した世代で「過去の共産党」がどんなだったかを体験していないでしょう。次回は80歳代の土地改革時代の農民や国営企業労働者に、この文句を言わせたらもっと効果的でしょう。

 ③ 中央紀律委員会の仕事内容の変化。

 とっくの一昨年から、中央紀律委員会は、仕事内容とやり方が変わることを宣言していました。映画のなかでは中央規律委員会の現在の仕事は主に、日常業務として注意を喚起したり、「お話」したり、軽い処分などが主な仕事だと言っています。映画が紹介したのは、その対応に問題のある役人で、調査にあたってはその情状が深刻なものであるかどうかを調べて、司法処理に回すのは極めて少なく、大多数は党の規律、政治規律に基づく処分であり、情状が軽微な場合は戒告が主なものになるとして、懲罰のピラミッド構造をしめしています。つまり、大多数の役人は良いか、だいたい良くて、司法的な懲罰を受ける悪い役人は極めて少数なのだということです。

 こうした微妙な言い方にふくまれる深い意味は、つまり王岐山はここで婉曲に、彼の指揮下の中央紀律委員会はもう数年前のようにものすごい権力を振るうようなことはなく、平常に戻った、といいたいのです。

 映画は、反腐敗キャンペーンの重要な成果であり、外国メディアがもっぱら報道しているような、習近平がこれを利用して、すべての政治的ライバルを倒し、政治的な災いの恐れを無くしたことについては何も触れていません。勿論、統治の大計略からすれば、トップレベルの同僚に対しては、自分の政治の安定の邪魔になるか否かによって、習近平が決めることであります。18回大会を境界線として、聖人の教え通り「成功は自慢せず、行ったことの言い訳はせず、過去の失敗は咎めない」という原則で処理するわけです。腐敗の発生に関しては、教養豊かな中紀委書記の王岐山は、様子を見ながら進んでいくしかないことを知っておりますから、映画のタイトル「永遠の途上」の玄妙な意味はここにあるのでしょう。(終わり)

 原文は;《永远在路上》究竟传达了什么? 

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