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★北京はなぜ「アリの引越し」式の外貨交換を規制?★ 2017年5月25日

Posted on May 24, 2017May 25, 2017 By minya-takeuchi No Comments on ★北京はなぜ「アリの引越し」式の外貨交換を規制?★ 2017年5月25日

中国のメディアの報道によると、7月1日から、中国政府は、毎日1万米ドル以上の国外送金は報告して審査を受けなければならないという新たな「マネーロンダリング規制」を開始します。1カ月前に、中国の外貨事情はやや好転したため、外為管理はやや緩むだろう、というニュースがもたらした喜びは、これでたちまち消えうせてしまいました。

 

新規制は、「アリの引っ越し」的外貨流出防止

 「21世紀経済」によると、2016年末、中国中央銀行が出した「金融機関の高額取引と、疑わしい取引報告の管理方法」が7月1日から実施されます。新規定では、回数を問わず1日の取引で、5万人民元以上、外貨1万ドル以上の預け入れ、引き出し、外貨売買、現金交換、現金送金、小切手支払い及びその他の方式による現金の収支について、金融機関は全てを高額取引として報告しなければならなくなります。

 目的は、当然、国外送金への規制強化です。ただ、民衆が毎日やりとりできる額が「多額の現金取引」として報告対象になるので、「アリの引越し」方式でちょっとずつ資本を国外に持ち出そうとする個人に特に不利になります。報道によれば、外資系銀行の行員は、「銀行の内部規定では、中国国内から国外に毎月1万ドルを超える金額を送金する際には、具体的な用途証明を提出しなければならず、それが無いと口座が閉鎖され、関係データが国家外国為替管理局に送られる」と話しているそうです。

 元々の規定では、国内の企業口座から、国外へ大量送金の場合、人民元200万元か、20万ドルの限度額を超えた場合に、関係部門に報告するとなっており、これは依然として有効です。

 と言う話になると、新規則は、投資移民に対するショックが極めて大きいと思われます。現在の移民費用(*米国)は申請を含めて58万ドルですから、個人の毎年5万ドル以下という現行制限下ですと、これまでは12人の協力者を探して送金すれば済んだのですが、7月1日からは、1万ドル以上の送金が報告されてしまうので、58人もの協力者を確保しないと安心出来なくなってしまいます。ですから、海外に移民しようとする中産階級家庭にとっては、これは悪い知らせです。(参考;北村豊氏;米国の投資移民枠、83%を中国人富豪が占拠 2015年4月24日) 

外に出ていいのはドルではなくて、人民元。

 実は、4月に報道された「外国為替規制の緩和」というニュースには、初めから誤解があったのです。

 4月中旬に、「南華早報」が、近日中に、中国は人民元の資本外国流出規制を緩め、企業と個人顧客の送金要求に応えて、銀行は自由に外国への人民元支払いを処理できる、と報じました。4月19日には、「ロイター通信」が、中国中央銀行は、国外への資金流通管理を適度に緩和し、銀行は国外での人民元決済の受領支払いを1対1とする原則を厳格に実行しないでもよい、と報道。短期の中国の外国への資本流動情勢に改善の兆しがあり、当局の為替レートの弾力性容認の度合いが、多少は向上すると言われました。

 ここでお気づきの通り、この二つの報道は「人民元」という名詞をいささか軽く見すぎて、人民元に対する制限緩和を、米ドルの送金への緩和と勘違いしてしまったようです。このニュースの意味は、人民元が国外に出るのは緩めるという事です。人民元として国外に送金するのならば、香港やオフショア金融センターで、米ドルなどのハードカレンシー(国際決済通貨)と交換しても良い、ということです。

 これには、中国当局がなぜ、人民元の外への流出をコントロールしているのかについての説明が必要です。2016年、人民元値下がりの予想が極めて強かった時、直近10カ月で、外国からの人民元収入は3.1兆元で、支出が5.1兆元で、ちょうど2兆元が流出し、収支バランスに巨大な圧力となりました。外為管理局はやむを得ず緊急対応として、「一帯一路」戦略の推進中止や、中央企業の国外投資の暫定停止も含む、国外直接投資を全面的に暫定停止し、資金流出の管理を厳格にしました。こうした政府の強い管制によって、2017年以来、中国の国外資金流出は明らかに緩和されました。今年2月13日に、中国銀行の副行長、国家外国為替管理局局長の潘功勝は、「第一財経」のインタビューに答えて、「一度開けた窓は閉められない」ので、元のような資本管制に戻ることはないと言いました。

 3月10日には、中央銀行トップの周小川が、国務院の記者会見の席上で、「国外への直接投資は流行に乗って加熱し、盲目的現象で貿易額が急増しており、スポーツや娯楽クラブ業界への対外投資は国家に利点はない。だから、政策的指導を行う。総体としての企業の海外進出や発展に助けとなる研究開発、業界の進歩といった対外投資の継続については、一切変わらない」と述べました。

 周小川のこの談話は、王健林(大連万達集団会長)がもくろんでいた、アメリカの映画館など娯楽産業の買収計画にストップをかけることになりました。しかし、それでも投資業界は周小川の話は、資本の管制は暫定的だろうと楽観視していたのです。しかし、今年の5月4日になって、周小川は「中国金融」雑誌の公式「微信」ブログに、署名入りの文章を発表しました。

 ; 長期的に見て、「一帯一路」の投融資協力は、一方通行の資金援助でなく、各方面の「共商共建」で、共同に支出し、共同に危険を負担し、共同で収益をあげる利益共同体であり、同時に、必ずやマーケットの力を借りて、市場としての融資を中心とし、積極的に人民元の力を発揮する。現地の備蓄と国際資本をより多く使って、少ない資本で大きな取引を行い、前向きのフィードバックを形作る。

 これで、業界は、やっと今後の中国資本の国際的流動で制限を受けないというのは、主に人民元のことなのだと理解したのです。

 

「一帯一路」サミットは、なぜ竜頭蛇尾に?

 中国政府のポケットのお金が少なくなってしまったということ。それには少なくとも二つの証拠があります。

 一つは、対外投資のデータです。安永中国海外投資業務部(China Overseas Investment Network/COIN)グローバル主管は、こう言いました。

; 今年の1月の中国の対外非金融直接投資は、約77.3億ドルで、昨年同期より35.7%減少し、2016年12月の前月比でも4.6%減少、この減少スピードは大きくないとは言えない。

中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

 二つには、「一帯一路」サミットが竜頭蛇尾だったことです。

 今回、西側の「7強」国家ではイタリア政府首脳だけが参加しました。独、仏、英、ギリシャ、ポルトガルなど欧州連盟(EU)諸国は北京サミットの共同声明にサインしませんでした。その理由は、公告される文書の中に、EUが重視する公共市場の透明度や社会保障、環境保護などの条項が強調されていなかったからでした。

 これまでずっと中国と並ぶ新興5カ国(BRICS)メンバーのインドとブラジルも協力しませんでした。インドは「アジアインフラ投資銀行」の第2の大株主ですが、モディ首相は参加を断りました。2015年の「アジアインフラ投資銀行」の開設メンバーだったブラジルも、最初は3万2千株を購入して30億ドルを出資する約束をしていました。しかし、会議の一月ちょっと前に、購入は50株にすると伝えてきました。これでは最初の予定の640分の1です。

 何でこんなことになったのか? インドの高官は、「『一帯一路』がグローバルに影響力を持つのは、制度の魅力ではなくて、お金の吸引力だ。だから、中国が実際にどれだけお金を出すかが指導力の大きさを決めるキーワード」と言いました。

 中国の外貨のお財布は大きく変化しています。3年前に計画が出された時には、中国はお金持ちだったのですが、計画遂行の過程でお金が少なくなってしまいました。お金持ちの時には、中国は資本の外国流出の巨大な潜在力を低く評価していました。しかし外貨の4分の1が流出してからは、財布の紐をしっかり締めることにして、ケチになりました。北京サミットの前夜に、周小川が発表した先の文章は、はっきり言ってしまえば、今後、「一帯一路」の沿線国家への投資は、お金を出すのは中国だけではなくて、受け入れ国側の企業や機関も出資して、危険を分担すること。次に、中国の投資は人民元が主で、もう米ドルの大盤振る舞いはしないよ、ということです。影響力の根源がお金だと言うのなら、お金が減れば影響力も大々的に低下します。

 しかし、「一帯一路」計画は3年以上前に出されて、今までにどれだけ成功したでしょうか? 中心となるプロジェクトはどれぐらい建設されたでしょうか? 協力国家と地域はどこで中国と共同したでしょうか?

 政府側の発表資料によれば、過去3年以上かけて「一帯一路」にちょっとでも関わるプロジェクトで完成したのは、たった5つしかありません。サウジアラビアの製油工場、バングラデシュの橋梁一つ、パキスタンでの道路改修、トルコで埠頭が一つ、中国国内で天然ガスのパイプ一本の他に、6つが建設中です。この11のブロジェクトの共通点は、4つが、中国が石油や天然ガスを輸入するためのもので、中国に直接の利益関係があります。7つは地元国でのインフラ建設や改造ですが、全て中国の大型国営企業によって行われ、援助資金は施工と材料費で中国が回収しています。ヨーロッパ—アジアの各国の鉄道網を使った国際貨物列車の運行も「一帯一路」の成果だと言っても、これは中国の援助ではなく、それぞれの国の国有鉄道会社の力によって実現したことです。

 中国商務部のデータでは、2016年の中国の「一帯一路」提案国家に対しての直接投資は2%減少しましたし、2017年まで更に18%減少しています。中国の去年の53の「一帯一路」国家への非金融直接投資は145億ドルで、中国の海外投資の9%でしかありません。

 総括して言えば、中国の対外影響力は、外貨でお財布が一杯かどうかに関係するのです。今、このお財布は急速にやせ細ってきていますから、一般国民の「アリの引越し」式の外貨交換も、当局がコントロールしようという政策になったということなのです。(終わり)

 拙訳御免。
 原文は;北京为何要限制蚂蚁搬家式换汇?

当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
「中国2015 何清漣」Amazon電子ブック発売中。「中国2016 何清漣」近刊予定。
 何清漣さんの「中国2015」表紙

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