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★共産党資本主義の宿命 — 富豪たちの御難 —⑵ 2017年8月11日

Posted on August 11, 2017March 28, 2018 By minya-takeuchi No Comments on ★共産党資本主義の宿命 — 富豪たちの御難 —⑵ 2017年8月11日

★共産党資本主義の宿命 — 富豪略奪 —⑵ 2017年8月11日

 政府と実業家たちの関係が、変化する前兆は、実はとっくにあったのです。しかし多くの人々は、肖建华が北京に秘密裏に拉致され、呉小暉が自由を失ってから、やっと、この事実を正視する気になったのです。あの先読みのカンの鋭い王建林ですら、数年前から情勢がどうもうまくないようだ、と予感しながらも、事態がここまで早く変化するとまでは予想出来ませんでした。

 ★大資本家が「野蛮人」「人食い妖怪」と呼ばれる

 習近平は政権を掌握してから、ずっと、私企業のとめどない肥大ぶりに対して、どうやって私企業の優秀な資本を国営企業に取り込む「混合所有制」によって、国営企業を大強化するかを考えて来ました。

「混合所有制」が提起されたのは、2014年の「国有企業改革を深化させる指導意見」と「公有性を完全に実現する形式に関する指導意見」が、意見を公募を発表して以来であるのは周知のことです。しかし、民間私企業側は、これに対して全く熱意を示しませんでした。

 私は、「国営企業改革;官民双方が弾くソロバン」(VOA,2014年9月7日)で、当時の民営企業側が、いずれも「混合所有制」をワナだとみなしており、もし、そんなものに参加しようものなら、株主支配権も得られず、参加後に「朝廷側にうまく丸め込まれて恭順」させられたり、ひどい場合は、「逃げ道を塞がれて、ひっぱたかれる犬」にされると思っていると指摘しました。万達のトップの王建林は、「もし混合所有制をやると言うのなら、民間企業が株主として支配権を持つか、少なくとも相対的に優位にあるべきやがな。もし国営企業が支配圏を持つなら、自分の金を国営企業援助のために使うのに等しい。そんなアホなことやってられまっかいな?」と新浪の記者の取材に答えています。

 2015年9月に「中共中央、国務院の国有企業改革の深化に関する指導意見」が正式に発表された後でも、民営企業は、「混合」を陥穽だと、皆、見ていましたが、まさか、「水を飲まない牛には無理やり飲ませる」になるとは思っていなかったのです。当時、多くの海外の論者たちも、関係文書を読むことなく、「混合所有制」とは、国営企業を私有化するのだろうと見ていました。そうした見方に対して、私は、「国営企業改革法案」の目的地は「公」か「私」か?(2015年9月20日)で、この方案の目的が私企業の優秀な資本を国営企業に入れるが、指導的な地位は与えずに、国営企業を強大化するのが「混」の意味だと、逐条分析しておきました。

 危険な臭いを嗅ぎつけた人は、逃げ始めました。2014年から始まって、王建林、呉小暉は、どちらも海外拡張の道を歩みだしました。やり方は違っていて、王建林の万達系は、中国国内で債券を発行し、呉小暉の安邦グループは、各種の保険理財商品を発行して、それぞれ資金集めしたのです。しかし、本質的には同じ事で、どちらも国内で多額の借金をして外国に資金を転じる、「金蝉脱殻」(もぬけの殻)作戦です。2人の企業の多額の借金の話は前に論評しましたので、ここでは省略します。

中国当局側も、ぼやっとしていたわけではありません。ただ、「ネズミを殺そうとして、傍の器物までぶっ壊す」のを恐れていただけです。2015年の株式市場の大混乱の後、劉士余が中国証券監督管理委員会委員長に選任されました。満身創痍でボロボロの株式市場に対して、劉士余は、多くの富豪たちが仰天するような話をしています。例えば、2016年12月3日、中国証券投資基金業協会の第2回代表大会の席上、「資産管理人は、奢り高ぶった土豪や、波風を立て、民を害する妖怪変化のようにならないよう希望する。真っ当な来歴でないお金をもってレバレッジ(元手を何倍にも使う)したり、素人を野蛮人に変え、最後には強盗にまでしてしまうようなことをしてはならない!」「国家の法律に触れ、人としてもとるような行為を行い、刑法に挑戦するようなことがあれば、当然、君たちを待っているのは、広々と開け放たれた牢獄の大きな門である」といったものです。

 当時、業界では一般に、劉士余の言葉は、恒大系、宝能系、安邦系を代表とする派手な企業買収を行なっている保険系のファンドに対しての発言だと理解されました。更に、大胆な投資業界人士からは、劉士余の言い分は不当であり、金融改革を阻害するという声もありました。しかし、これを、中国政府が実業界とのスタンスを変えようとしているのだ、とまでは誰も思わなかったのでした。

 ★中国の政治と実業界の関係のポイントはどこに?

 急激に実力をつけてきた実業人たちに対して、中国政府はちゃんと目を光らせて来ました。江沢民は「三つの代表」理論で、新富裕階級のプロフェッショナルたちを、社会基盤に組み入れた後も、少なからぬ政府調査が行われています。人民日報旗下の人民論壇2010年第4四半期のトップ記事「中国新富裕家族」では、「関係機関が2009年発表した、中国三千富裕家族番付で、三千家族の財産の総価値は1兆6963億元で、平均は5億654万元。番付の1万位以内の家族の財産総価値は2兆1057億元で平均は2億元」とあります。

当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
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 この記事では、中国の「新富裕家族」の構成を

: その1 草の根から身を起こしたタイプ。最も典型的なのは浙江省人と広東商人。

: その2 体制内でスタートして、実業家になったタイプ。またはもともと半分役人半分ビジネスマン、みたいな共産党ビジネスマン。この記事では蘇南(蘇州や無錫など)商人を代表としている。しかし、「92派商人」(鄧小平南巡講話を契機に役人をやめて独立企業下実業家たち)もこれに入るでしょう。

: その3 紅色家族。深い政治的バックと政治的な”資本”を持っており、容易に社会的リソースを獲得出来る連中。この種の紅色家族は、許可の必要な貿易、インフラ整備、エネルギー産業に多くが従事。不動産業もお気に入り。

 興味深いことは、この記事では第一と第二は、どちらも人物名を列挙していますが、第三のタイプには一人も名前を挙げていません。ただ、こう書いているだけです。

  : 「一般にこの手の富豪家族はいくつかの特徴を持ち、第一類は創業者が絶対多数で、第二類は競争の激しい分野の実業家が多い。これに比べると、第三の実業家たちの家族構成や存在自体の多くが秘密にされている。近年、権力資本、権力と銭の結婚と非難されていることが、このビジネスに携わる家族の上に、暗い影を投げかけている」。

 この記事は、再び、中国の政治と実業家の関係における明暗をはっきり見せて、こう書いています。

  : 表面的には、政府と企業の関係のように見えるだろうが、実質的には、官僚と実業家、ビジネスマンの関係である。この二つの層が一緒に関係しあって、中国の政治とビジネスの関係に、二重の制度的呪いをかけている。

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 ★中国の政治と実業界の二重の呪いは、解かれていない。

 ●第一の制度の呪い : 役人たちの「一家で国家をゴッチャン体制」

 中共政治は独裁政治で、「三つの独占」、すなわち、政治、経済(資源)、言論の独占です。この三種の独占構造は、計画経済時代に既に出来上がっていました。しかし、その頃は権力を売る”市場”がありませんでしたから、大小の権力を握っている連中でも、ちょっと家が大きいとか、子供の就職で特権を振るう程度しか出来ませんでした。しかし、それが、改革開放時代になるや、政府の役人たちの握る権力は、市場を通じて大化けしました。これを私は、「権力の市場化」と呼んでいます。この一点が、中国の役人が必然的に、利益を貪ろうとする動きをもたらしました。もし、家族の能力では不足なら、権力ブローカーが登場し、役人とビジネスが結託したのです。例えば、妻や子供達が、兄弟姉妹に能力のあるものがいれば、自力で事業を起こさせます。誰かに金を儲けさせるより、自分の一家の誰かにやらせた方が、絶対安全ですから。これが、近年の反腐敗キャンペーンで、役人一人が落馬するや、往々にして家族や友人たちが、一緒に監獄入りになってしまう理由です。

 役人たちに、この重い呪いから逃れさせるにはどうしたらいいかを巡って、数年前に中国では大変真剣に「どんな条件で汚職役人を特赦する政治改革を行うか」という話が、大真面目に論じられました。こうした論議は2000年になってからずっとありましたが、2012年には最高潮になって、論議には一部のかなり社会的に尊敬されている人士まで登場したほどです。私も「汚職役人特赦を推進する政治改革はなぜやってはいけないか」(《“特赦贪官推动政改”为何不可行?》VOA,2012年8月3日)でその議論の来歴と顛末を分析しています。

 ●第二の制度的な呪い : 起業家の原罪

 中国政府が全ての資源とその配分権を握っているために、政府と企業の関係は、「恩賜」の関係にあります。いわゆる「権力の市場化」で、その特徴は、「権力」を金に変えるには、絶対「市場」が必要だということで、両者は緊密に結合しています。ですから、資源配分の巨大な権限を握っている役人が「王者製造人」になります。これが、絶対多数の起業家が、官界に依拠せざるを得ない理由です。たとえ、ハイテク企業の大富豪と言えども、自分は政府に頼らないでやっていけるとは言えません。なぜなら、市場に参加するにも、税金面でも、企業に対する検査でも、全ての関門が、皆、ビジネス界にとっては難関だからです。実業界の人士は誰でも、政治との関係をうまくやっていくことが、「重要なリソース」を確実に得る手段だと承知しています。

 2005年から、中国の実業界、学界では「企業家の原罪」を巡る論議が起きました。主な観点は、「原罪 — 転換期の中国起業家の原罪の反省と贖罪」(2007年出版)という本になっています。この本で「原罪」は三つの大きな原因を挙げています。すなわち、制度が悪いためにモデルチェンジの条件が先天的に不足していること。政策と法律という後天的な欠陥、及び、原罪を生み出す社会的環境と、それに対する、三つの反響、追求、反対、折衷的な意見です。

 このダブルの制度的な呪いを、江沢民は、意識的に取り除こうと努力はしました。米国のロバート・クーンの「彼は中国を変える 江沢民伝」のタイトルからして、この点を強調しています。しかし、江沢民は「三つの代表」理論を提起したものの、この呪いを解くことはできないまま、引退しました。胡錦濤は前任者の道を踏襲しましたが、任期中、両会代表には多くの億万長者が増えてしまい、最初からこの制度的な呪いを解こうとはしませんでした。そして、習近平の時代がやってきたのです。

 ★笑い事でなく、江沢民が変えた中国は、今、習近平で逆戻り

 2013年、習近平王の反腐敗キャンペーンが始まって以来、多くの省部クラス(大臣クラス)の高官が次々に”落馬”し、そのビジネス界の友人たちも次々に入獄と相成りました。今年になって、砲口は、ついに中国大富豪中のトップ級に照準を定めたのです。

 中国での、先の3種類の新大富豪たちのうち、第一の草の根型と第二の帽子型に対して、当局は容赦なく雷を発するように対処しました。しかし、紅色家族たちに対しては、ただ、「春の雨がしとしとと濡らすような」ソフトな対応を採りました。習近平の圧力によって、姉の夫や姉、朱鎔基の息子の朱雲来、温家宝の子の温雲松などは、次々に金融界から退出して行きました。中共前総理・李鵬の娘の李小琳は、中国電力集団の理事長兼総裁の地位にありましたが、大唐グループの副社長に左遷され、現在、同グループの4番目の地位でしかありません。

 国外逃亡した汚職役人に対しては、「狐狩り」が行われており、リスト上の”狐たち”は、既にかなりの数が捕らえられています。また捕まっていない”狐たち”も、裁判で財産を使い果たしたりして、「国外逃亡も楽じゃ無い」状況にあります。

 今や飛ぶ鳥を落とす勢いの中央紀律委員会は、元来は、中央機関の中でも、ツンボの耳の同様のお飾り的機関だったのです。しかし、王岐山がトップに就任してからは、汚職官僚に対する摘発で、その殺傷力は大変なものになって、「閻魔様より恐ろしい」存在になったのです。今回、”郭文貴革命”(アメリカでツイッターを通じて、色々暴露騒ぎを起こしている)のサポーターの一部は、汚職役人の家族や愛人です。

 こうした一時、天下を取ったかの様だった官僚界の大物や、実業界の大富豪は、現在、結末がどうなるかわからない「紅楼夢」のような世界に置かれています。ただ、数年前に海外に移住して住み着いた金持ちと、役人の家族だけが、自分たちの財産と共に、相対的にやや安全といえるかもしれません。

 しかし、中国の今回の、「富豪略奪」が、王岐山や、王岐山と習近平連合によるものだと思うなら、中共の政治制度というものに対しての深い理解を欠いた、皮相な見方です。一党独裁政治の最大の特色は、他人と権力を分け合わないところにあります。米政治学者のサミュエル・P・ハンティントンは、かつて理論仮説として、「一党独裁政権にとって、主要な脅威の一つは「源が新興社会グループの勃興を源とする、自主性のある経済パワー。すなわち、独立した豊かな工業・商業のエリート階層の発展がもたらすエリートの分化にどう対処するかである」と述べています。

 実業界のエリート諸氏は、自分たちと中共政権の関係を考える際には、必ずやこのハンティントンのこの視点を理解したほうがいいでしょう。江沢民は確かに「三つの代表」理論で中国を変えました。しかし、習近平は、今、江沢民が変えた中国を、ゆっくりと元に戻しつつあるのです。
 王滬寧(第18期中国共産党中央政治局委員、党中央政策研究室(zh)主任。復旦大学教授)は、江沢民、胡錦濤、習近平の三代を支えてきた中共の最重要な、理論面の”お化粧師”です。彼は、かつて「三つの代表」論でもって、三つの革命的階級(労働者、農民、兵士)に取って換えたのでした。彼の今後の重大使命は、おそらく、いかにして、「三つの代表」を取り消して、中共に新たな社会支持基盤を探し出すことではないか、と私は推測しております。(終わり)

拙訳御免。
★共産党資本主義の宿命 — 富豪たちの御難 —⑴
原文は : 共产党资本主义的宿命:富豪劫 (2)

中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

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