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★ウクライナのTVドラマの滑稽な腐敗⑵★ 2017年9月30日

Posted on November 9, 2017March 1, 2018 By minya-takeuchi No Comments on ★ウクライナのTVドラマの滑稽な腐敗⑵★ 2017年9月30日

 ウクライナのテレビドラマ「人民の公僕」は二つの山場があります。16回目と最後です。どちらも喜劇仕立てで笑わせられますが、同時にその後で深く考えさせられます。
 
★人は文化の蓄積で作られる

 インフラ建設たんとうの役所内部の深刻な腐敗ぶりに、女性記者のアナは、会見の席上、ワーシリー・ペドロビッチ大統領に対して、「あなたは、当選してから、まるで泥棒たちの親分のようになって、お喋りなったような気がするのですが?」と問いただしました。

 この言葉にワーシリーは、思いのままに心の内を率直にさらけだし、ウクライナ人が、社会人になる過程で、どんな影響をうけるか、という大演説を始めてしまいます。この演説の内容は、中国人にとって、まるで自分たちの姿を鏡の中に見るように思えます。

 「我々がこの地に生まれたのは運命だ。そして我々は生まれた時は誰もが正直なウクライナ人だった。我々も、両親も、いや先祖もみんなそうなのだ。我々は生まれつき、こんなありさまではなかったのだ」

「生まれた時はちいさな、赤いほっぺの、3500kgぐらいの赤ん坊だった。それが、なぜ大人になると、デブで嘘つきの口のうまいろくでなしになってしまうのか?私は、自分たちの間違いのせいだとおもう。アンナさん、あなたや私、みんなが間違っていたのだ」

 「産院で生まれた時から始まったんだ。赤ん坊が生まれたら、金がかかる。医者には”ご挨拶”として金一封包まなきゃならん。それをしなければ赤ん坊の姿は無事に拝めない。包めば、赤ん坊を無事に家に連れて帰れるというわけだ。でも、このときはまだ赤ん坊は純真なウクライナ人だ」

 「子供が物事を覚え始める頃から変わリ始める。まず、自分の親父がテレビを見ながら、『このバカヤロー、畜生ども、クズ政治家どもめ』と言いながら、昨日、デモに参加して稼いできた200ウクライナ・フリヴニャ(UAH/1フリヴニャ=約4円)を数えます。このデモは、まさにテレビにでていた、『バカヤロー』の議員たちを支持するデモだったのです。『どうってことないさ。パパが行かなきゃ、誰か他のやつが行くだけ。パパが行かないで、誰か他の奴が、俺たちのゼニを稼いでしまうだけだろ?』と言います」

 「子供はこうした親の言葉を記憶します。私たち正直なウクライナ人は、こうして一歩ずつ変わって、自分の父親と同じような人間になります。彼にはもう一点の良心が残っているでしょうか?そうとは限りません。みんな無くしてしまったかもしれません。彼のおじさんは外国人のビザを発行する仕事をしていて、おばさんは技術情報局の仕事をしているかもしれません。皆、この子のことを大事にしています。では、どうするか?学費の高い学校にやろうとします。それもとびっきりのすごい学校に。子供が中学を終えると、一家でドニエプル川で休暇を過ごし、一家で焼肉を食べたり、ブランデーを飲みます。まったくうまい、ゴミ?どうでもいいじゃん。誰かが片付けるさ。俺らはゴキゲンで大学に進学して、家族一族で助けあう。大学を卒業したら?またドニエプル川に行って…あら、なんでこんなに汚いの?ゴミだらけじゃん。『ゴミ捨て禁止』の標識を立てなきゃな。なんでゴミを捨てたりするんだ、とか言って、気持ちよくホンダの車にのってドライブします。このホンダも大学卒業のお祝いです」

 「我々のうちこうして、良識を失ってしまった大半のウクライナ人は、早朝の首都キエフを暴走します。その騒音はきっとその時間には眠っている人々や、仕事を終えて帰宅途中の通勤者、ダブルの仕事で暮らしている人々や、子供をたべさせるのにやっとで、疲れ切った母親が、ようやく寝かしつけたばかりの垢あちゃんをびっくりさせるでしょう。しかし、我々が問題にしている彼自身は、前途洋々たるもので、20歳から25歳には議員になったりするでしょう。こうして、生まれた時は正直な赤ん坊だったウクライナ人は、社会人になると完全なロクでもない大人になってしまうのです。彼の暮らしはいいかもしれません。実際、そのまた子供達はスイスに留学したり、もうドニエプル川の代わりに、もっとよい観光地や、ロンドンに家を買ったりして、馬鹿者どもとは遠く離れて、無関係に暮らすでしょう。これが我々ウクライナ人であり、心の中で憧れている姿なのです」

 この演説で言われているウクライナ人は別に、特定の階層を指しているわけではなく、中・上層も、底辺のウクライナ人も含みます。中学卒業後のウクライナ人というのは、中・上層で、彼らは出国して留学し、政界入りを狙っています。こうしたことは、中国人ならピンとくるでしょうし、赤ん坊が生まれる時の付け届けから、大学卒業後の就職探しまで、人生の節目節目で、みな中国人も体験しています。ともに広大なウクライナと中国は、ほとんど交流はありませんし、民族の伝統文化も違いますし、まるで黄河とドニエプル川のような違いです。それなのに、両国の国民性が、なんでこんなに似ているのでしょうか?その説明はひとつしかありません。ウクライナはソ連という巨人のくびきにつながれ、社会主義国家として80年近い歴史を持っています。中国は中共統治下の社会主義の歴史も70年近くあります。社会主義の全面的な独占(政治、経済、文化)体制は、特権階級を生み出します。そしてチャンスがあれば特権を享受し、人生の栄誉と幸福が保証されるのです。社会主義の公有制度はこの病気をますます悪化させ、人々は公共財を自分の財産とみなし、権利を持つものが多くを得て、権利の無い人々は得ることがはなはだ少なく、うまい汁にありつけないと、損をしたと思うようになってしまいます。

 当然のことながら、人間とは文化の積み重ねですから、経済学者の経済学者のダグラス・ノースのいう「経路依存」(制度の轍にロックインされてしまうこと)という指摘通り、一国の現状を決定する要素は色々ありますが、無視することができないのが、この国家の政治と文化の慣性です。ただ、ウクライナ人と中国人はやはり違います。ウクライナ人はスラブ民族であり、政治的なユーモアの感覚は中国人より強くあり、阿Qのように恥を隠したり憚ったりはせず、上層の腐敗と悪徳を暴露すると同時に、底辺層の民衆の貪婪猥雑さも暴露して風刺するのですが、その風刺ぶりはやはり中国の趙本山(著名コメディアン)とは違っており、気が重くなります。(*訳者はこのコメディアンを知らないのですが、中国人ならわかるのかな(・・?))

 この大統領の、心からの演説を聞き、民衆の心は動かされはしましたが、しかし、続くドラマでは、別に事態は何も変わらず、今までのままです。そこで、大統領は大変辛い思いをして、「三びきの大クジラ」と総理大臣の腐敗同盟との対応に苦慮するのですが、それがドラマのクライマックスになっていきます。

 それは大統領と総理大臣、外務大臣、議会の与党のリーダー達が揃ってテレビに出演し、腐敗問題で討論会を開くのでした。ゲスト達は、世界の古今東西の腐敗の歴史の体験を語ります。喜劇ですから、創造力に富んだもので、語られる内容は以下のようなものです。

  — — 極刑をもって威嚇する。死刑と死後の恥辱によって。古代ペルシャ帝国のカンビュセス2世(前529〜前522在位)は、裁判官の腐敗に対して、怒り狂い、裁判官の皮を剥いで、椅子に貼り付けその後継者の裁判官の椅子に、その裁判官の息子を座らせて、父の死を戒めとして再び腐敗に染まらぬようにと裁判を行わせた。 — 私は、古代ペルシャ歴史を知らないので、これが本当かどうかは専門家の考証にお任せしますが、中国の明朝の初代皇帝朱元璋が汚職役人の皮を剥いだのは本当で、民衆の前にさらしたというのは史書に記されています。

 このような極端な刑罰は当然、大統領や議会の指導者、総理大臣から反対されます。ドラマの小さなエピソードに、腐敗役人の死刑を論じるシーンで、中国では一挙に2万人の汚職役人を殺した、という話が出てきますが、これはシナリオの怠慢です。中国ではこの十数年来、汚職役人が死刑になったのは極めてまれなことですから。

 二つ目はチェコで、社会的に恥をかかせる制度が語られます。汚職役人を罰するには、その豪邸を開放させ、人々の見学に供するというのです。見物客が目をみはる中で、誰でも好きに出入りできて、批判できるることから、役人一家はもういかなるプライバシーもなくなって、食事もくつろぎもみな衆人環視になってしまうというものです。チェコで本当にこんな刑罰があるかどうかは、知りません。

 三つ目は、財産を没収して牢屋入りです。これは世界中で通用します。中国でもこれです。反腐敗キャンペーンの成果を展示するのは、中国でもやりますが、チェコとは違って、それを見世物にして、汚職役人が罵倒されるということはありません。

 この三種類の刑罰は実際に、腐敗を罰する三種類の形ですが、その中で腐敗者を死刑にするというのは、反対がますます強まっています。2013年1月、広東省人民代表大会会議の席上で、全国人民代表、甲州市公安局政治部人事部長の陳偉は、シンガポールのむち打ち刑を提案し、この種の刑罰だけが、犯罪分子を震え上がらせることが出来る。これを今年の両会に提起したい、と言いました。しかし、当時の国内世論の多くは、この「鞭刑」は、世界の大多数の国家で軽蔑されている肉体的に残酷な刑罰に当たる、というものでした。

「人民の公僕」は、中国より西側文明に近い、ウクライナですから、当然、ワーシリー・ペドロビッチ大統領とイワン雷帝の対話の中で、残酷な刑罰で死なせるのは現代の文明ではもう適切ではないので、民主的な方法で腐敗問題を解決することを願う、というシーンがあります。

 ★ウクライナの現状は中国にとっての鏡

 このテレビの討論会では、司会進行役がワーシリー・ペドロビッチ大統領に「人類社会の腐敗現象は数千年にわたって存在する。あなたが大統領になる前の歴代のウクライナ大統領も腐敗していた。あなたはなぜ、自分だけが、反腐敗をやれると思うのか?」と聞きます。「三匹のクジラ」と結託している腐敗し切った総理大臣も、「汚職役人を逮捕して、財産を没収して、それからやつらを銃殺して、彼らが奪ったものをとろかえす。あなたは人民を動かして何をやろうとしているのか?」と問いただします。

 このシーンは、郭文貴が9月24日に宣言した、「不」(やらない)約束の第一条、中国の19大(10月開催された中国共産党第十九回全国代表大会 )は法治国であるべきで、過去数年の冤罪を受けた人々、その家族には公平な結果を与えなければならず、郭文貴を含む、こうした人々の資産、違法に差し押さえられた資産、違法に没収された資産、違法に移された資産を、没収すべきは国家に没収し、返却すべきは返却べき人々に返す、これこそが郭文貴の七つの約束であり、冤罪をそそぎ、合法的資産を返すべきだ」という主張を思い出しました。

 このドラマはまさに、鏡です。中国人はそこに自分の姿を見るでしょう。ただ、注意すべきは、ウクライナには中国よりはるかに番付で上にくる項目があります。それは報道の自由度です。国境なき記者団の発表した世界の番付(Press Freedom Index)では、全世界180の国々の中で、ウクライナは102位です。決してよろしくはありませんが、それでも報道の自由はあります。中国はビリから5番目で、報道の自由のない国に属します。腐敗国家で、自由なメディアがないというのは、この国家の人々の、腐敗の危険度に対する認知の程度を表しています。少なくとも、ウクライナ人は、腐敗をなんとかしようという能力はあるようで、腐敗を素晴らしいと褒めちぎることはありません。しかし、今、海外の少なからぬ中国語メディアは、郭文貴ツイッター革命をこの3月から持ち上げ続けている点に、私は心配になるのです。(終わり)

 原文は;何清涟:腐败显示的路径依赖-观乌克兰电视剧《人民公仆》有感(2)

 ★ウクライナのTVドラマの滑稽な腐敗⑴ ★2017年9月26日

 《訳者より》 VOAのコラム欄は、郭文貴騒動で、VOAが外部筆者との契約を全て解除したため、何清漣氏の連載もこれにて終了しました。他のメディアに同氏が掲載した記事があれば、今後も逐次、翻訳は続けていきます。
 

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