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★トランプの”全方位戦争”の狙いはグローバル構造の再構築  2018年07月11日

Posted on July 16, 2018July 16, 2018 By minya-takeuchi No Comments on ★トランプの”全方位戦争”の狙いはグローバル構造の再構築  2018年07月11日

 7月6日、米中貿易戦争が正式に始まりました。各国の大メディアは、双方の課税対象リストの品々をチェックするのに大忙しです。興味深いのは、誰も予想しなかった米中のこれまでの役割がすっかり入れ替わってしまったことです。中国はなんと、グローバリズム進展の擁護者、現在の国際秩序のガードマンとなって、自ら「人類の運命共同体の建設者」となり、一方、米国は国際秩序を覆そうとする者になったのです。これが滑稽なのは、この国際秩序とは、第二次大戦以後、米国がお金も力も費やして築き上げ、維持し、国際社会に提供してきた「世界の公共財」だという点です。

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 ★米国はなぜ、現存秩序を変えたいのか?

 この役割逆転の原因は、米国がグローバル化の受益国から、最大の損失国になってしまったからです。各国と国連はどちらも、米国をずっと「おいしい三蔵法師のお肉」としてカモってきました。

 3月下旬、トランプ大統領が米中貿易戦争を始めてから、3カ月ちょっとの間に多くの事が起こり、今や世論の四方からの総攻撃を受けています。南のメキシコからはどんどん違法移民が、北はカナダと、西は欧州連合(EU)と、太平洋を隔てた世界第二の経済大国の中国とは、史上最大の関税合戦です。これと同時に、国連の各種の国際組織から次々に脱退し、WTO脱退も現在正式に考えていると宣言しています。統一戦線工作がお手の物の中共政府とは大違いで、トランプ支持者ですら、そのやり方は無茶苦茶だとおもっています。

 しかし、実はトランプの行動はただ一つの目的の為です。それは、「米国がこれまで金と労力を投じて、支えてきた国際システム」は、トランプと支持者から見れば、もう米国を国際社会のキャッシュレジスターと、世界最大の違法移民収容所にしてしまうものだ、という認識です。

 いわゆるグローバリズムには三つの面があります。経済のグローバリズムは、資本の自由な流動とWTOシステムが支える自由貿易です。人口のグローバリズムは、人材の流動を含み、この10数年以上にわたって続いている、違法移民や難民の米国や欧州への自由な流入を含みます。国際組織はグローバリズムの秩序の建設者であり、参与者で、国連はグローバリズムの進展の最大の推進役です。

 前任のオバマ大統領が自ら旗手となって推進したグローバリズムは、かっては人類社会の進歩のメルクマールであり、その最高レベルだとみなされていました。文化の伝播という観点からは、確かにその主流は西側文明から、発展途上国家に向かう巨大な滲透であり、影響でもありました。貿易や投資という観点から言えば、先進国の投資と技術が投資に適した国への転移であり、そして発展途上国から先進国へ製品が流れ込みました。

 これまで、技術を提供し、投資し、そして主要な販売市場になってきたのは、すべて先進国であり、投資や技術、外貨を獲得してきたのは、主に中国を含む発展途上国でした。疑いなく、過去20数年間、発展途上国は確かにグローバリズムに乗っかって、国家経済も繁栄してきたのです。しかし、では積極的に投資を開放し、技術移転を行い、国内市場を開放した先進国でも、経済は同様に繁栄したか?ということを誰も問おうとはしなかったのです。そうではありませんでした。米国の例が証明しています。グローバリズムの高まったまさにその時代に、米国は経済不振に陥りました。米中貿易だけを例に取っても、米国の対中貿易格差は3000億ドルの赤字で、これだけでも十分頭の痛い問題なのです。

 2016年5月、世界銀行の前上級経済学者のブランコ・ミラノビッチとエール大学の政治学教授ジョン・ローマーはハーバード・ビジネスレビューに論文を発表し、こう指摘しました。

;「グローバリズムの下で、中国とインドの2発展途上国は急速に発展して、大いに世界の不平等状態を是正した。しかし、多くの先進国内部では貧富の差が不断に拡大し、中産階級の貧困化を招いた」と。(何清漣「グローバル化と難民問題ー動揺止まぬその基盤」 参照)。

 移民はかつて、米国に人材と活力をもたらしました。しかし、近年20年以上の移民はもはや昔のようではありません。米国保健福祉省(HHS)のデータによると、違法移民は2000年の約160万人から去年の30万4000人に減少しましたが、親を伴わない児童は逆に毎月2000人から3000人だったのが、毎月1万人に増えています。オバマ時代には毎年10万人に達し、すべて米国の納税者の懐から経費が出ていました。今年、メキシコ大統領に当選した左派過激派エンリケ・ペーニャ・ニエトはきっぱりと「米国はラテンアメリカからの違法移民を養う責任と義務がある」として、おおっぴらに「米国の政策は、西側国家の価値観と異なっている」と不平タラタラです。

 現在のグローバリズムの構造を変えようというのですから、トランプはまず最大の利益を得ているのは誰かに目をつけます。違法移民ということでは断然、メキシコです。そして、経済利益というのなら、中国です。防衛問題ならNATOです。29カ国のメンバーで、要求された国防費を払っているのはわずか3カ国で、残りの国々はすべて国防費を節約して、福祉予算を増やし、米国にNATOの経費の3分の2を払わせています。国連はさらに、米国を「金のなる木」扱いですが、これは、私が前に書いた「★米国の国連人権委脱退ーいつまでも「カモ」役は御免 2018年6月29日」を見てください。国連は長年にわたって、米国を主要な資金提供国としながら、アフリカ問題や中東問題では多数決制でアメリカを縛って、何もさせず、大量の失敗国家を生み出し、流民が各先進国に流れ込む事態になりました。
 米国をカモるのは、国連の多くの国々にとっては、守るべき「既得権益」ですから、トランプはそれに対する「造反者」になるしかないのです。

 ★中国はどうして、「グローバリズムの守護者」に?

 トランプがホワイトハウスで机上演習するのに対して、習近平も戦略戦術の机上演習を行っています。

 中国が貿易で譲らない方針を選んだのは、周到な計算の上です。米国の対中国要求は二つです。一つは、米国への輸出を減らすこと。二つ目は、直ちに知的財産権の侵害をやめると約束することです。これは中国にとって、「首を伸ばせば切り落とされるし、引っ込めても切りつけられる」という厄介な立場です。米国への輸出を減らせば、外貨の黒字はなくなります。知的財産権侵害を止めれば、技術のタネがなくなります。首を縮めて譲歩しても丸損ですから、北京は戦況に応じて対策を講じることにして、米国が課税するなら、こっちも関税を増額する。そう簡単には負けないし、そっちも大損害を被るぞ、ということです。これが習近平の言う「歯には歯を」戦術です。
 
 戦略上、中国は米国と反対です。米国は現在の国際秩序を覆そうとしているので、中国はそれを擁護しなければなりません。というのはグローバリズムは西側と中国の眼中とでは違った景色にうつるからです。

 かつて、クリントン大統領在任時には米国は、強力にグローバリズムを推進しました。植民地化の悪名を避けるために、民主、人権、自由、民族平等などの核心理念の普遍的価値を唱え、付け加えたものです。しかし、中国は経済グローバリズムの世界唯一の純受益者であったのですが、この「普遍的価値観」についてはきっぱり拒絶しました。そして、「中国の唱える北京の価値観」でもって、ワシントンの「世界の共通認識」に対抗させ、「カラー革命」に抵抗し続けました。その結果、国際ルールを守らなくても罰を受けることなく、グローバリズムの利益だけを享受してきたことによって、中国のエリートたちの中には、中国的特色こそが、中国経済が成功を勝ち得た原動力であり、政府が経済をコントロールすること、労働者の権利を抑圧すること、社会を圧政で抑え込むこと、外国技術を剽窃すること、様々なルールの裏をかくことが、全て、経済発展のための合理的行為だと思うようになったのです。

 ですから、中国ははっきりと、現在の国際構造を維持してこそ、中国経済は繁栄し続けることができ、中共政権が安全でいられるのだ、と分かっています。

 ★北京の机上演習

 北京の机上演習では、三つの点に望みがかけられています。

 第一は、世界中の多くの国々が手を取り合って、米国に対して、カナダ、欧州連合が米の関税値上げへの報復措置をとること。Pictet Asset Managementのまとめた「世界で最も影響を受ける10大リスト」によれば、アジアでは台湾、韓国、シンガポール、マレーシアがあり、中国では、これらの国々も加わる可能性が期待されています。EUからはロイター通信に対して、五人の高官たちがEUは米国に対抗して北京と同盟を結ぶ構想があることを明らかにしました。米中関税戦争が正式に始まったのち、トランプは「中国だけを狙った、更にまだ何千億ドルもの(関税措置が)あるんだ」と語っています。しかし、中国は、依然として、米国が貿易戦争を始めたことによって利益を損なわれた世界中の国が、連合する可能性があると信じています。

 第二には、米国人が選挙を通じて、トランプを引き摺り下ろすことです。中国が、米国の農産物に関税を課すことによって、トランプの選挙基盤である農業州に影響を与えると、北京はみています。貿易戦争が始まって、商品価格は必然的に上昇し、米国国内の消費者は関税が物価上昇の原因だと不満を抱き、数百社の企業、業界、ウォール街が貿易戦争に反対しています。北京は、こうした要素が、共和党にとって中間選挙で不利に働き、2020年の大統領選挙に影響を与えると信じています。

 第三は、そのほかの勢力が、米国に対して引き続き面倒をかけ続けることです。米国国内では、民主党などの進歩派が、不断に、例えば、6月20日付のタイム雑誌の表紙に、ホンデュラスの少女が泣いている写真を使い、違法移民問題でトランプに重砲攻撃をかけ、EUやメディアは強く批判しました。この写真がフェイクニュースだったと証明されても、攻撃は止みません。国際社会では、北朝鮮が厄介ごとを起こして、トランプの「功績」をぶちこわしにし、メキシコの大統領が引き続き、米国に違法移民を送りつけることを願っています。

 つまり、一言で言えば、北京は米国国内の政治経済の情勢が変わること、逆転を期待しています。米英の主流メディアはこの点では、北京の願望に大いに応えて、トランプに米国独走や世界の現秩序を転覆させるべきではなく、EUやカナダなどの盟友を失うなと、中国側に肩入れしています。

 ★傍観中にも事態は進展中

 現在のグローバル構造を、米国は変えたいと願い、中国は守ろうとし、EUなどその他の国々は様子見ですが、誰もが、もう2016年以前に戻ることはできないとは分かっています。多くの多国籍企業は、もう幻想を抱いてはいません。米中抗争の渦を避けて、次々に生産ライン拠点を移しています。中国から他のアジアに移ったり、米国から撤退するケースもあります。プーマは靴の生産拠点を中国からベトナム、インドネシアに、服装部門はカンボジアかバングラデシュに移すとし、バイクのハーレーダビッドソンはEUの関税による長期的なコスト増の圧力に対して、一部の生産ラインを米国外に移すと発表。台湾の鴻海精密工業会長の郭台铭は賢明にも、米国では北米市場様を、中国ではアジア向け販売の製品を作ると発表しました。

 今のところ、米中貿易戦争がどこで収まるかは誰もわかりません。中国自身も、この「羊の毛刈り」だった関税戦争が、果たして、「羊の皮をひっぱがす」までに至るかどうか分かっていません。確かなことは、米国は依然として、「世界の親分」だということ。親分が国際構造を変えたい以上、他の国家はブツブツ文句は言えても、「米国などなくても、グローバリズムはこれまで通りだ」などといった大ボラは吹けないということです。中国は貿易戦争開始後、とうとう対米外交の定位置で間違いがなかったかどうか検討を始め、長い間、対米外交でお手本的な地位にあった「銭其琛(せん きしん 1928年1月5日 – 2017年5月9日)の米中関係論」が、名指しで批判されています。(終わり)

 原文は、台湾上报,2018年7月11日,http://www.upmedia.mg/news_info.php?SerialNo=44176

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