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程暁農★ハイテク分野で「中国が米国をコーナーで追い抜く」の”三つの神話”   2018年8月20日

Posted on August 22, 2018January 2, 2019 By minya-takeuchi No Comments on 程暁農★ハイテク分野で「中国が米国をコーナーで追い抜く」の”三つの神話”   2018年8月20日

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何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

 ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は8月18日、11月のトランプ大統領と習近平国家主席の会見の準備と、両国間の貿易戦争の解決を図るため、王受文商務部長が今月下旬に訪米すると報道した。中・米両国の次の貿易交渉が、どんな結果を招こうと、中・米間にはこれまで口にされなかったテーマがある。中国が「中国製造2025」(メイド・イン・チャイナ2025)計画を未来の発展の柱と考えているのに対し、それは西側国家から”無断借用”した技術でもって、米国経済を潰しにかかるものだと米国では懸念していることだ。

 ZTE(中興通訊)が中・米間の問題になってから、中国政府の民間支援で国産ICチップ問題の解決しようという論議は絶えない。この考え方は、実際、過去数十年にわたって中国の軍事工業分野の技術開発がたどって来た伝統的な路線だ。中国は、軍用装備の方面で一部、「先行車がブレーキを踏むコーナを利用して追い越す」方法を実現して来た。しかし、それが民間分野でも同様にスイスイと実現するか?

 まさにこの点で、中国の政治、科学技術のエリートたちは”神話”を信じ込んで、政府の援助が問題解決の鍵だと思い込んでいる。そして、政府は財力と科学技術の実力不足を十分に承知しており、「コーナリングで抜く」ために、あの手この手の合法、非合法の手段を使って、”借用”する手法を使ってきた。

 スペインの日刊紙「エル・パイス」は8月17日付で「米中;戦争の背後の戦争」という記事を掲載し、こうした”借用”の結果、つまり中・米貿易戦争の背後には、実はハイテク領域における戦争が勃発しているのだ、と指摘した。

 つまり、中・米経済衝突は、事実上、両国の知的財産権保護問題での根本的な対立があるということだ。もし、中国が、これまでのような技術の”借用”が出来ないとなれば、果たして独立自力でハイテク領域で「コーナリングで抜く」ことは出来るか?

 ★”神話”1 — 毛沢東時代の「コーナリングで抜く」が第一波

 中共が軍用設備の分野で「コーナリングで抜く」が始まったのは、1950年代だった。当時、ソ連が提供した156の工業プロジェクトの大部分は軍用サービス目的で、中共に軍用航空機、兵器、軍用艦艇建造などの工業的基礎を築いた。

 50年代末に中ソ関係が悪化して、ソ連は技術援助を中止した。この後、中国が原子爆弾、ミサイル、人工衛星などの分野でブレークスルーを果たしたのは、ソ連の援助による基礎の上に、中国の専門家が自分たちで研究を重ねたものだった。文革時期に中国が、自分たちは完全な軍事工業体系を持っていると誇った時、一種の信念が社会の共通認識となった。それが、独立自主、自力更生で中国は軍事強国になれるのだ、と。

 この信念はあまりにも強いもので、今年になってZTE問題が起こった時でも、多くの人々の最初の反応は、国家が乗り出して米国のICチップになど頼らず、自力でかつてと同様に作り出せるというものだった。ここで、毛沢東時代が「最初のコーナーオーバテイクだ」という話をするのは、この前世紀に生まれた信念が、未だに衰えていないからだ。

 しかし、この宣伝によって作り出された信念には、”神話”がある。この第一の「コーナーでオーバーテイクした」話は本当に完全に独立自主、自力更生だったか? 当然、違う。中国はその頃、初歩的な軍事工業体系を作り出しただけで、独立自主、自力更正などではなかった。

 より肝心なことは、ソ連は技術だけではなく、設計図、設備、見本を提供し、更には大量の専門家を派遣し、手取り足取り中国人に教えたのだ。ソ連人がいなくなってから、こうした技術や設備、設計図、見本は全部、中国に残された。だから、それをモデルに中国の軍事体系は、そっくりそのまま真似をしただけで、大量に軍事装備を生産し、ベトナム、朝鮮民主主義人民共和国、アルバニアを援助出来た。

 この最初の「コーナーで先行車を抜いた」では、中国は、たった30年で遅れた農業国家から、軍事工業システムをもった大国になれた。しかし、中ソ関係が悪化した1950年末期には、ソ連はもう技術提供を辞めてしまったので、中国の軍事工業システムの技術も停滞しした。

 例えば、1980年までずっと中国の戦闘機は依然として、ソ連のミグのコピー版だった。これは、一時的なソ連の技術援助では、中国の軍事技術の進歩は保証されないこと示している。もちろん、「核爆弾、ミサイル、人工衛星」の研究開発では、ソ連が何もかも教えてくれたわけではないので、中国の専門家の研究は大変、大きな働きをした。しかし、「核爆弾、ミサイル、人工衛星」式の技術開発が、あらゆる分野で可能か?まさにこの点で、絶対多数の中国人が、第二の”神話”を信じている。

 ★第二の”神話” — 国家がやれば万能

 毛沢東時代の「核爆弾、ミサイル、人工衛星」の研究開発モデルは、つまり中央が重視し、国家をあげて、全国的に支援し、重点的に突破するやり方だった。「国家をあげて」というのは、政府の財力と全国の技術人材と実験施設を集中的に投入し、コストを惜しまず目的達成を図ることだ。これは、独裁集権国家体制の利点を生かしたもので、そういう国家だけがやれる。疑いなく、このモデルは目標を重点的に絞ってやれば、重要な進展が得られる可能性があるが、もちろん、ボトルネックに引っかかって挫折する可能性もあるのだ。

 「国をあげて」の有利な点は、コストを厭わず、と言う点にあるが、その欠点もまたそこにあある。コストを無視してということは、「中央が重視し、全国的な支援のもとに、重点を突破する」プロジェクトだから、短期間に進展が可能です。これについては中国の軍事工業企業や研究機関は、十分体得している。

 だから、いかに、各研究機関のプロジェクトを中央の「重点攻略」の範疇に押し込むか、ということが軍事工業化学研究部門の主要な任務だ。プロジェクトの総コストは大して問題にもならない。プロジェクトを立ち上げさえすれば、「エビでタイを釣るような話で始まって、最後は大幅に予算を超過するプロジェクト」方式でオッケーなのだ。

 スタートさえすれば、あとは中央政府とのんびり値段交渉をしながら、予算の心配、外貨の心配無用。このやり方は軍事工業分野では使える。なぜなら、軍事装備の開発は、顧客は中央政府だけだから、中央頼りでも、誰にも文句など言われないから。

 しかし、民用の製品の研究開発は、「国をあげて」路線で必ずしもうまくいくとは限らない。中央政府だってあらゆる分野の技術開発研究の需要に応じる無限の資源があるわけではない、とい点はさておいても、もっと大事なことは、民用製品のお客さんは、何千、何万といるから、研究開発した製品が商業価値があるかどうかは、お客さんが使ってくれるかどうかだ。

 経済改革の前ならば、中国は鎖国状態だったので、一般大衆は国産品を買うしかなかったし、質が悪くて値段が高くても、仕方なくお金を払っていた。しかし、経済改革後は、輸入製品と国産品の競争になって、遅れた国産品はマーケットを失った。国際市場では、外国の消費者は、デザイン、性能、信頼性、そして値段しか見ない。そして、中国製品がたとえコストを無視して研究開発したものだって、商業的価値がなければ、国債市場の価格競争を勝ち抜けない。

 「中国製造2025」の目標は、国内の民用製品の空白を埋めるのが目的ではなく、国際市場で外国の消費者の争奪戦なのだ。こうした状況の下で、中国製品が商業価値があるかどうかは、中国政府がどう評価しても意味はなく、全ては国際市場競争で決まる。

 中国は外資導入に際しては、「メイド・イン・チャイナ」は低コストであると強調し、国際市場で競争力があると言うが、これがハイテク研究開発の国際市場競争の話になると、たちまち「国家がやるから万能だ」論に切り替えて、「コストを気にしない」ことが強みだと言い出す。

 この考え方の混乱は、民用品の技術開発に対する無知が原因だ。民用品分野では、「国家をあげて攻略」は、万能ではない。政府の政策を決める役人や技術専門家には、不断に変化する市場の需要を理解、コストとマーケットの関係という概念を持たない。技術集約型やハイテク産品の国際市場競争では、「国家をあげて攻略」のモデルの「コストを度外視できる」という国内での優位性は、実際には国際的な劣勢になる。

 と言うのは、中国製品の競争相手である外国製品は、国際マーケットを中国より深く理解しているばかりか、コスト的にも優位に立っている。つまり性能が良いだけでなく、「コスト節約」面で。

 では、民用品の分野では、誰が技術開発の主役か? 当然、政府が組織した科学研究所ではなく、企業の自主開発だ。しかし、この点においても、中国経済界には、第三の”神話”が存在する。

 ★第三の神話。「政府依存の企業が強い」
 
 政府位依存の企業は国際市場でどんな長所と短所を持つか? という話は中国では、ほとんど討論されない。それどころか、多くの中国企業は、嬉々として自分達のバックには政府がついているということを大ぴらに強調します。こうした「中国モデル」的な考えは、内から見ると優位のように見えても、外から見たら逆に劣勢になるの要素なのだ。

 中国の経済学界はいつも国有、民営企業の活力の話をするが、原則的には間違ってはいない。確かに、国有企業のトップは、政府にコントロールされ、片目でしか市場の変化を見ていない。もう一方の目は常に政府の需要を見ている。同時に、技術研究開発の国際競争では、いつも政府の国際的パワーの助けで「コーナリングで先行車を追い抜く」つもりでいる。

 しかし、こうすることによって、政府によって牽制されてしまい、政策的な面でのうまい汁は吸えても、政府の「見えざる手」に絡め取られてしまう。政府は、競争の危険からちょっとは助けてくれるかもしれない。しかし、政府は普通、失敗など受け付けないから、こうした企業の危険に耐える力は、ほとんど無い。

 具体的に言えば、ある国営企業に中央政府の役人が許可を与えたとする。しかし、彼は絶対に、国際競争の失敗とか、自分の地位が危なくなるような危険は冒さない。国営企業の老幹部たちも同じだ。中国民営企業は、その独立性の程度如何に関わらず、危険への認識は国営企業よりは強いが、中国というお国柄では、民営企業ですら「政府がバックについているから強い」という病にかかっている。

 民用品分野では、よく創造とリスクということが言われる。これは一体どういう意味か? 創造とは具体的な技術の発展の可能性とマーケットの需給を判断して、大量の資金を投入して新製品を開発するということ。リスクとは、そうして創造した結果、通常は広くタネを蒔いても収穫は少なく、技術的なネックにぶつかる可能性と、市場で受け入れられずに売れないことを言う。

 いずれにせよ、一旦、失敗しようものならそのツケは、企業のオーナーと外部の投資家(ベンチャー投資家や株主)に、容赦なく回ってくる。国際市場では、新たな技術の唯一のテスト基準は、政府の評価ではなく、市場価値、すなわち消費者が、市場が受け入れるか否かなのだ。

 そして、新たな技術の発明が市場で成功するのは、発明者のうちのホンの少数に過ぎない。大多数の発明者たちは、みな何度も失敗の痛みを味わう羽目になる。多くの人々は、米国のハイテク企業の競争の勝利者の栄光に満ちた誇らしい姿ばかり見ており、失敗した人々の涙と苦悩など気にもかけないから、技術さえしっかり研究開発すれば、どんな企業でもビル・ゲーツのように成功すると錯覚する。実際は、技術研究開発の道は、平均して失敗の可能性が7割から9割もあるのにだ。

 西側国家では、市場競争の成功者は、知的財産権費用として、研究コストを回収し、失敗者は水の泡となった投資に黙々と耐える。これがなぜ、米国政府が、米国企業の知的財産権を侵犯されることを許さないかという理由だ。

 さもなくば、米国の成功した技術が窃取され、研究投資を回収できず、失敗企業のコストだけが、益々かさんで米国の国力を削ぐだろう。「中国製造2025」計画には数々の「コーナリングで追い越す」成功への期待は込められているが、どれほど多数の中国企業が失敗するかについては、まるきり忘れられている。ただただ「コーナーで追い越す」ことばかり考えている中国政府が、民間技術開発の巨大な危険とその代償について、全くわかっていないということだ。

 「追い越す」ことは考えても、国営企業や準国営企業がそのために、研究開発において、破産することは望んでいないから、最後には、また自然に、「補助金」によって、国際マーケットに割り込んで行こうという「コスト無視」のモデルに戻ってしまうだろう。これこそが、中・米貿易戦争の主要なテーマの一つだ。

 中国の現在の技術開発環境の下では、軍用プロジェクトはコスト計算はせず、成功だけを願うから、概ねいい加減で、一流にはなれないが、二、三流にはなれる。

 しかし、民間技術研究方面では、このモデルはうまくいかない。政府頼りで本当の市場競争力が無かったり、ただ早急にお金儲けになる技術ばかりに走ったりするだろう。民間企業は通常、長期にわたる基礎研究に大投資したりしない。そして、しっかりした基礎研究の土台が無ければ、応用技術開発は結局、モノマネか窃取になります。

今、中米貿易戦争が警鐘を鳴らしているのは、外国の知的財産権を侵犯して、「コーナーでオーバーテイクする」重要な助けにしようとするのは難しいということ。だから、中国が技術発展の分野で、自主的な創造が出来るかどうかは、またしても、昔からの問題、つまり現在の政府の企業コントロール、企業の政府依存の体制が、本当に、中国が「コーナーでオーバーテイクする」ための役に立つのか?ということなのだ。(終)

 原文は;中国高科技领域“弯道超车”的三个迷思 https://www.sbs.com.au/yourlanguage/mandarin/zh-hans/article/2018/08/20/guan-dian-zhong-guo-gao-ke-ji-ling-yu-wan-dao-chao-che-de-san-ge-mi-si
 原文は;中国高科技领域“弯道超车”的三个迷思  筆者の程暁農氏は経済学者。何清漣氏の夫君。

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