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程暁農氏★中・米貿易戦争の核心 — ICメモリチップ戦争の話 2018年11月29日

Posted on December 4, 2018December 4, 2018 By minya-takeuchi No Comments on 程暁農氏★中・米貿易戦争の核心 — ICメモリチップ戦争の話 2018年11月29日

 中国の三大ICメモリーチップ製造企業、福建省晋華集成電路(晋華・JHICC)の失敗(訳注;米商務省によって2018年10月、米国企業の輸出が制限され創業前に”倒産”したことを指す。後述)は、中国がハイテク戦略で米国を追い越すことが出来るか否かを占う窓口です。そして、また中・米貿易戦争における知的財産権という”戦場”での「硝煙に包まれ、毎日砲火が飛び交う」事態の真相を見ることが出来ます。ハイテク技術立国の競争で、中国の嘘で固めた”詭道戦略”は、トランプ大統領という障害に出くわして躓いてしまいました。

 ★1 挙国体制でICチップの国産化は出来るか?

 中・米貿易戦争では、知的財産権の侵害に、他方は自分たちの知的財産権の防衛に焦点が当てられています。様々なケースが争われる中で、ICメモリーチップを巡る戦いは最重要の一戦だと言えるでしょう。中国のICメモリーチップ研究開発の歴史はすでに半世紀にもなっています。しかし、今日でも相変わらず「ICメモリーチップは急所となる弱点」のままです。その根源的な原因は、中国ハイテク技術研究体制が誇りとする挙国体制そのものにあります。この体制は、全国の技術開発の力を全て、政府によって牽引され、命令が下され、資金が提供され、ブレークスルーを求められるからです。コストを無視しても達成された成果は、往々にしてまず軍事工業分野で使われます。なぜなら、軍事面では使えさえすれば、コストは政府が払ってくれますから考えなくても良いからです。民用品分野では、国産品の高コスト技術を使うより、外国技術を購入したほうが安く、信頼できるのです。

 中国のICメモリーチップ研究は永川半導体研究所(現在は中国電子科学技術集団第24研究所)で始まり、1970年代はじめ、中・米関係が改善されてからは欧米の技術を導入し、エリート科学者たちによる軍事研究体制がとられ、「両弾一星」などの軍事目的のICメモリーチップを研究しました。しかし、こうした研究の進展は極めて遅いため、瞬時に変化する市場には対応できませんし、ましてや巨大な市場の要求には応えられません。つまり、軍事目的の研究開発体制には産業化と、産業の血液といわれるICメモリーチップの開発への「造血」能力を欠いているのです。ですから、この時期の中国は、チップの科学研究、技術水準で世界から15年は遅れており、工業生産体制ともなると20年の遅れがあったのです。

 1990年になって国家計画委員会と電子工業部は、民間市場向けに「908チップ・プロジェクト」を立ち上げ、江南無線電気と電子部第24研究所を合併させ、無錫微電子連合(華晶電子集団)を基本として、研究者と経営者を雇用して、懸命に構想を練り、20億元を投資して、一挙に世界水準との差を詰めようと計りました。しかし、このプロジェクトはみじめな失敗に終わり、プロジェクト立案から7年かけて(経費申請に二年、米国Lucent Technologiesから生産ラインを輸入するのに3年、工場建設に2年かかった)、1997年に操業を開始したときには、国際的な主流技術から4〜5代は遅れていました。当時の投資損害額は2.4億元にのぼりました。「操業開始即落伍者」の典型的な事例でした。中国の民間ビジネス用のICメモリーチップは依然として、大量に輸入だよりで、割高な特許使用料も中国政府と企業のウィークポイントなのです。

 「908チップ・プロジェクト」の失敗後、ICメモリーチップの国産化へ向けて、中国は国家が後ろ盾となった「909チップ・プロジェクト」を立ち上げました。結果はまたしても昔ながらの「産業の突破口が見つからない」問題にぶつかりました。これは、いわば高速鉄道列車のように、時間、角度、速度を正確に測って一気に立ち上げなければいけない困難なことです。民間分野用の国家チップ製造は、軍用チップのコピーという欠陥を持っており、研究が国際的な最先端技術に追いつけず、産業化のレベルが低すぎ、いきおい大量生産の能力も持てずに、コストが膨れ上がり、生産価格も高すぎて顧客に喜ばれないのです。
 「909チップ・プロジェクト」後、中国が毎年輸入するICメモリーチップの量は、ますます膨大なものとなりました。2017年には、889億米ドルになり、前年比で25%増となったのです。この時点で中国のIC・チップ開発は方向を変えていました。つまり、外国のハイテク企業を企業合併することによって、特許、技術、生産ラインを丸ごと一挙に傘下に収める方向です。そしてもうひとつは、外国企業のエンジニアを高給で誘い、彼らに「銃を持ったまま投降しておいで」とばかりに呼びかけたものです。

★2 買えるものは買収、それでもダメなら盗む — 福建晋華の消滅

 米国議会で、中・米双方の関係を精査、分析したのは、20年前に設立された米・中経済安全審査委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)です。中国の外国向け宣伝メディアは今年8月1日に、この委員会のマイケル・ウェッセルの談話「中国は、国際半導体企業の買収にとんでもないブームを巻き起こし……自分たちができない研究技術を、買えるものは全て購入して、買えないものは盗んでくる」を掲載しています。この方法はこれからもうまくいくでしょうか? 最近の中国三大ICメモリーチップ製造基地ともいうべき晋華の失敗事例は、「死亡事故現場に供える花輪」です。(米国では若い人が交通事故死した現場に花を備え、追悼と戒めにします)

 商業用ICチップは大変重要で、DRAM((ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ=読み出し/書き込みが自由に行えるRAMの一種の半導体メモリ)に不可欠ですが、中国ではその技術がありません。ですから、中国政府はこの研究開発と量産を経済発展の重要プロジェクトとしています。2016〜2020年の経済発展計画では3大メモリー・プロジェクトを取り決め、福建晋華、合肥長鑫、清華大学紫光集団が大株主の長江メモリを政府のICメモリーチップファンドとしてサポートすることが決定していました。そこで、中国のチップ産業と米国の主要メーカーの一つであるマイクロン・テクノロジー社の間の事件が起きました。

 まず、精華紫光集団が、中国政府のICチップ支援基金を得て、2015年に230億ドルでマイクロン・テクノロジー社を買収しようとしました。がこの買収は成功しませんでした。2016年、同集団は、台湾で、マイクロン・テクノロジー社と取引のあるDRAM委託製造企業・華亜科技から高級エンジニア5人を高い給与で引き抜き、この5人は企業の秘密を紫光側に教えました。2017年9月、台湾桃園地検が、5人を産業スパイ罪で起訴しました。最近では、紫光集団は26億ドルでルクセンブルグの私設ファンドCVC共同資本会社から、フランスのICメモリーチップ企業のLinxens社を買収しようとして、仏国の監督監査部門の許可を待っています。

 精華紫光集団に比べて、福建晋華の方が、各国メディアの一層大きな騒ぎとなり、結局、晋華は誕生する前に死亡してしまいました。晋華の騒ぎも、マイクロン・テクノロジー社の技術と関係しています。「大紀元時報」がこの問題を詳細に報道しています。それを要約すると、晋華はもともとはある起業家が作ったものですが、台湾の聯華電子の技術支援と、中国政府のサポートによって、20ヘクタールの工場用地と、わずか一回の投資で370億人民元を得て、今年9月に正式に操業を開始して、DRAMの大会社になるはずでした。これが軌道に乗れば、中国の国産DRAM技術は一挙に、最先端技術との距離を5年以内に縮めることが可能だと言われました。しかし、開業のまさにその時になって、中国のナンバーワンのDRAM製造会社の栄冠を勝ち得るはずだったのが、突然、営業ストップとなり、その公式サイトは真っ白のまま残されています。つまり、政府の数百億元の投資は、突然”蒸発”してしまったのです。

 晋華の早死にした直接の原因は、米国司法省が11月初めに、晋華とそのパートナーの台湾聯華電子と聯華の3名の社員を、マイクロン・テクノロジーの知的財産権侵害と企業秘密窃盗により、87億5千万ドルの損害を与えた容疑で起訴したからです。全被告が共謀経済スパイ罪に問われており、もし有罪となれば、被告企業は最高200億ドル以上の罰金が課せられます。同時に、商務省は晋華に対する一切の米国企業が技術や生産品を販売することを禁止する命令を出しました。この時点で、一部、米国や台湾で購入した設備や商品は中国に到着しており、実装される段階でした。しかし、商務省の禁止令が出た途端に、米国の半導体関連設備、部品、ソフトウェアの提供は、ただちに停止されました。それどころか、晋華からの電話も受けようとはせず、メールにも回答がなくなりました。晋華の台湾のパートナーである聯華電子は、台湾国貿易局の命令で、晋華との協力を停止しました。現在、晋華は政府からの投資以外は、何も所持していません。先端技術は一旦、元を断たれるとたちまち「頓挫」プロジェクトになってしまうのです。

 米国司法省が起訴した3人の台湾人の一人は、事件が起きた時の晋華の社長で、2015年にマイクロン・テクノロジーの子会社のトップを辞職して、聯華電子で働き、聯華と晋華の橋渡し役を勤めていました。別の一人は、もともと米マイクロン・テクノロジーのエンジニアで、やはり辞めて聯華に移ったのですが、マイクロンを辞める前に、大量のマイクロン・テクノロジーの技術文書をダウンロードしていました。台湾の雑誌「天下」によると、2017年末、台中地検が聯華を捜査した際に、機密窃盗の証拠が見つかり、当人は減刑と引き換えに、検察側の証人として聯華を被告としたとのことです。現在この事件は裁判中です。

★3 輸入代替え品から世界市場狙いで中・米貿易戦争を触発

 中国が2016年から始めた三大DRAMプロジェクトは、表面上は「908チップ・プロジェクト」「909チップ・プロジェクト」同様、ICメモリーチップ産業の努力発展のためでした。しかし、新DRAMの目的とやり方は、明らかにそれまでとは異なりました。その違いこそが中・米貿易戦争の引き金となったのです。簡単に言えば、以前のチップ技術は西側企業の過去の技術を模倣するだけでしたが、今度は西側企業の未来を奪い取ろうという試みだったのです。

「908チップ・プロジェクト」「909チップ・プロジェクト」の目標は基本的にはICメモリーチップの国産化、つまり輸出に頼らない国産代替品の製造で、その方法は、外国から二流の技術と設備を購入して、国内市場に提供することでした。しかし、これでは輸出競争力は得られません。新DRAMプロジェクトの目標は、国内市場用産品製造だけではなく、グローバル市場で米国のシェアを奪おうというものでした。このためには、外国の二流技術の導入だけではダメで、最先端技術が必要となります。ですから、その方法は「買えるものは買う。買えなければ盗む」しかないのです。これは米国にしてみれば、中国がIC戦争で盗もうとしているのは米国の技術だけでなく、さらに進んで、こうしたハイテク先端技術の背後にある知的財産権とその収益なのです。これによってうまれた中・米貿易戦争では、ICメモリーチップ戦争は、中でもとりわけ重要な戦場なのです。

 11月20日、米国通商代表部(USTR)は、中国対象の301レポートを発表しました。これは今年の3月の301報告の改訂版です。11月版は、事実上、当面の中・米貿易戦争の注目を集めている焦点の所在を示しています。3月のレポート以後、中・米双方は何度もハイレベル対話を行なってきましたが、中国側は「米国の注目する問題について、中国側は調整したり約束したりしなかった」とし、その重点は、技術転移と知的財産権の補償問題だったとします。中国政府のメディアは、このレポートは中国側の「4大罪状」をあげ、その第一は、中国が引き続き米国企業の商業ネットワークに侵入し、違法にビジネスの機密、知的財産権、技術データを盗み出していることで、第4に挙げられているのは、中国政府が不公平なやり方で、中国企業と志保運が米国企業を買収し、先進技術と知的財産権を獲得していることだ、と書いています。この二つの点は、中・米ICメモリーチップ戦争の中でも、大変はっきり見られます。

 情報化時代の現代経済の特徴は、知的財産権が経済の中で締める比率がますます重くなってきており、米国のGDPの4割が知的財産権関連です。21世紀の主要国家間の経済競争では、キーとなるものは知的経済方面の競争だと言えるのです。知的経済領域の競争は巨額のリスクを負った投資が必要です。知的財産権の収益には、研究投資が身を結んだことによる利益も含まれますが、同時に失敗に終わった研究開発投資も含まれるのです。あらゆる研究投資で、失敗の比率は通常7割以上です。常に失敗した経験がなければ、成功だって得られないのです。もし失敗に終わった研究が、成功した研究の利益によって補填されなければ、、未来の研究開発のリスクを負う投資もまた失われるのです。

 中国政府と企業は常に、西側の知的財産権の利益は、その技術の開発かかった研究コストを超えていると文句を言うのですが、こうしたものの見方は、中国式の視野狭窄なのです。今日に至るまで、中国は市場かのリスクを負って先端研究開発を支えてきたことなどありません。そうした研究は往々にして、政府によって国家利益だと見なされて、国家財政や国有銀行から資金援助されてきたので、研究開発が失敗しても、破産、倒産などしなかったのです。

 国家がハイテク技術研究の勘定を全部負担する長所は、一つは、資金潤沢で人間がサボれる(研究開発者は自分の運命と前途を賭ける必要がないし、寝食を忘れて頑張らないでも良い)、二つには「お金が無駄になっても構わない」。国家がケツ持ちする欠点も同様に一目瞭然です。第一に、官僚下で管理効率が低下する。行叡官僚はハイテク研究の成否に自分の命運を賭けたりしませんから、必然的に用心深くなりますし、ことを遅らせようとします。第2には、決定を下す立場の行政や科学研究官僚は、第一線の研究者のような眼力はありませんから、技術発展の方向を見定めたり出来ないのが常態となります。

 これで、最初に述べた問題の回答が出ました。なぜ、挙国一致体制ではビジネス用ICメモリーチップの国産化が出来ないのか? 疑う余地なく、挙国体制がもしビジネス分野の先進ハイテク研究開発でトップをとれるのであれば、ソ連は崩壊しなかったでしょうし、中国も改革開放なぞしなくて済んだでしょう。

 中・米ICチップ戦争は、中国が齧り取っているのは、米国企業の知的財産権による収益ではなく、最小の費用で技術をパクリ、それでもって米国企業を押しつぶし、米国の知的経済の基礎を空っぽにしようとしていることを米国政府がはっきりと知っているということです。これが、この貿易戦争で米国政府がしっかりと知的財産権に目を光らせている根底の理由です。しかし、中国政府が知的財産権問題では、歯を断固として食いしばり、うわべだけ色々言いながらも、決して具体的な事件について語ろうとしないのは、この種の活動がまさに、現在もどっさりと進行中であり、この分野こそが、中国政府と企業が抱いている最後の希望だからです。あるいは、晋華に類似したケースが増えて、買収合併や窃盗がどちらもうまくいかなくなった時、知的財産権交渉は、やっと実質的な段階に入るのかもしれません。(終わり)

  原文は;体制失灵和诡道失败 中美贸易战芯片版探祕
作者:程晓农

日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;2015、2016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です。
何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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