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程暁農★米国の中国研究者たちはどこで間違えた?★  2018年12月29日

Posted on December 31, 2018August 10, 2019 By minya-takeuchi No Comments on 程暁農★米国の中国研究者たちはどこで間違えた?★  2018年12月29日

日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;2015、2016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です。
何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

 米国の中国問題専門家たちが、丸ごと揃って失敗の中からお目覚めになった。以前、彼らは、経済の変革が民主化を伴うと信じてきて、「中国モデル」の本質を見誤った。つまり、中国の共産党資本主義は、他の元社会主義国家の変革の結果とは、まるで違うのだこと、共産党資本主義は必然的に民主化を拒絶するのだということをだ。

(1)目が覚めた「一世代丸ごとの中国専門家たち」

 2018年11月29日、スタンフォード大学のフーバー研究所が「中国の影響と米国の利益 建設的警戒を高めよ(Chinese Influence and American Interests: Promoting Constructive Vigilance)」というレポートを出した。一年以上費やして、32名のトップクラスの中国問題の専門家が参加した研究報告だ。その中には、フランシス・フクヤマ・スタンフォード大学教授、ラリー・ダイアモンド スタンフォード大学フーバー研究所上級研究員、ボニー・グレイサー(senior adviser for Asia and the director of the China Power Project at Center for Strategic & International Studies(CSIS),アンドリュー・J・ネイサン コロンビア大学教授、ミンシン・ペイクレアモントマッケナ・カレッジ政治学教授ら(*全員政治学者)がいる。これは長年来、初めての米国の中国研究学界が、中国がいかに米国の各方面に影響を与えてきたかについての専門的なレポートだ。

 そこでは、中国が米国の中国問題研究者たちに、事情聴取やビザ発給停止をちらつかせるなどの方法で、米国学者の観点を左右しようとしたことも書かれている。エバン・S・メデイロス 前米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長兼米大統領補佐官は、「これは、まるまる一世代の中国専門家のお目覚めであり、彼らはかつて自分たちで中国を世界の舞台にあげる手伝いをした結果、というとう自分たちが大変な失敗をしたことに気がついた」との感想を表明した。

 これ以前の2018年8月にボストンで開かれた米国政治学会の年会の席上、500人の中国問題研究者にアンケートした結果、68%の学者が、中国研究で「自己規制したことがある」と回答した。

 米国の中国研究分野は、従来「パンダ派(中国擁護派)」と「反パンダ派」に分けられてきた。明らかにこれは、「中国による影響」と不可分の関係にある。米の学者たちの観点は、北京からのプレッシャーと関係するだろう。ただ、全てがそうだとも言い切れないのだ。と言うのは、少なからぬ学者は、やはり批判的な文章を発表してきたからだ。ここでは、「中国の影響」と米国の中国専門家の観点の間にどのような関係があるかについて語る用意はない。それは今、始まったばかりのテーマであり、深く系統的に研究分析しなければ、軽々しく断言出来ない。しかし、考慮に値する事実としては、「パンダ派は中共を褒めすぎ」で、「反パンダ派」の見方が正しいかと言えば、必ずしもそうでないということだ。

(2)中国研究学者たちの視野の狭さ

 米国の中国研究者たちの世界には、二つの重大な欠陥がある。一つは、絶対多数が、非常に重要な研究課題を見逃してしまっている。例えば、中国では1970〜80年代には全人民所有制だった企業が、1990年代にどうして突然、少数者所有に変わったかだ。これを、一部の経済学者は、国営企業の変革は公有資産が、私有に変わったに過ぎないと言う。実際は、何十万という全人民所有制企業の私有化は、巨額の国家財産の私有化であり、何千万の「国家の職員労働者」が突然、労働者と資本家に二分化したのだ。この過程は、自国産品、社会の公正、大衆の参政権などの重大な問題を含んでいる。この私有化が深刻に社会の公正に反するならば、中国経済改革は、そう単純にプラス評価をすることは出来ない。

 しかし、惜しいかな、米国の中国研究者たちは、ほとんどこのテーマに注目しなかった。そのため中国の経済変革に対して、偏った見方しか出来なくなり、中国の現在存在する深刻な社会矛盾と政治の動向を把握する能力が欠如してしまった。更に、一部の米国の中国学者は、中国の独裁的政府は政策を果断に推進する力があって、それが経済改革に有利に働くとみてきた。彼らが軽視しているのは、独裁型の政府というものは自分の必要のために動くのであって、自分たちがやりたくないことは、故意に手を引いてしまうということだ。例えば、朱鎔基は全人民所有制企業を少数の人間に私有化させるために、国有資産管理局を閉鎖してしまい、私有化の過程で広範に発生した国有資産の窃盗行為の監督をやめさせたのだった。こうした状況の下で、管理を怠り、さらに独裁体制によって、社会に与えた損害は一層酷いものになった。しかし、こうしたことに対して、中国の独裁モデルを褒め称えていた米国の学者たちは、見て見ぬ振りをしたのだった。

 第二に、米国の中国研究者たちの世界は相対的に閉鎖的だった。多くの中国問題研究者たちは「中国はどうせ中国であるから、中国なんだ」とか「中国は他の国とは全く違う国なのだ」と認識する傾向があった。彼らは、中国をロシアや東ヨーロッパ諸国とは違った特別なものとみなし、真面目に国際的な比較をしようとしなかった。そうなると、中国研究は、単一の中国という国家しか分析しないこととなって、容易に頑固に自分の立場に固執し、簡単なことでも目に入らず、もし、国際的な比較をすれば、とてももたないよう研究、結論にを下してしまうのだ。

 例えば、多くの専門家は、中国は「漸進的な改革モデル」を選び、ロシアや東欧、中欧などの元社会主義国の”ショック療法”(*短期間に命令で無理やり体制を変更する)より、はるかに良いと思っている。しかし、彼らが理解していないのは、元ソ連陣営がやった方法の中身だ。中国での類似した現象が実際にはどうだったかということを無視して、中国のいわゆる「漸進方式の優越性」を判断してしまい、完全に事実と違っている。事実は、価格自由化と全面私有化面では、中国も同様に「ショック療法」を採用した。前者は1993-1994年,後者は1997から2002年のことだ。そして、中国での「ショック療法」は、ソ連陣営の各国のそれより、さらに過酷なものであった。似たようなことは民主化と経済変革の相互関係への理解でも言える。

(3)民主化と経済変革は、その順番次第

 米国の中国研究者の間で、「パンダ派」の人たちはどうも、今の「中国式モデル」が最良の選択で、民主化は必ずしも中国には適さないと見ている人がいるようだ。そして、「反パンダ派」の多くの学者は、経済の変革後は、中国は民主化を推進すべきだと考えている。彼らは、それが理の当然だとし、経済の変革と民主化の相互関係についての国際的な比較研究をしようとしない。経済の変革と民主化は、本当に社会主義国家の変革の過程で、自然に生まれる「双子の兄弟」でいつも一緒のものなのか? 経済の変革は、民主化を圧殺することもあって、その典型的なケースこそ中国モデルだということを「反パンダ派」の学者たちは分かっていない。

 元社会主義国家の変革ぶりを研究する西側の学者の大半は、市場化イコール民主化、という一種の理想主義的な仮説を受け入れている。経済の変革が、政治の変革を促進するというわけだ。その理由は、中産階級が市場化と経済発展の中で次第に大きく成長し、彼らが民主化を支持するから、そして、共産党のエリートも、現代の市場環境の中で、西側の普遍的な文明の価値観を受け入れる、と。

 この考え方は一見もっともらしいが、間違い。だが、中国で民主化を主張する知識人の間でも大変人気がある。中欧国家(ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア)では、この見方が正しいと証明されているからだ。しかし、ロシアでは経済の変革は早くから完成していたが、政治のそれは逆戻りしている。そして、中国モデルは、私有化が基本的に共産貴族たちによって行われたならば、その結果は、共産貴族たちによる資本主義制度が実行されることを証明している。「中国モデル」が生んだ資本主義経済制度は、政治的民主化を滞らせるばかりか、共産貴族たちが共産党専制支配を強化しかねないのに。

 私は、元社会主義国家の変革について、その大部分を研究した結果、実際にははっきりと異なった3種類の経済転換モデルが存在することに気がついた。中央国家は、「共産エリートはもううんざり」の資本主義(making capitalism not with red elite)。ロシアは、「昔の共産党の仲間でうまくやろうぜ資本主義」(comrade capitalism)、そして中国は「共産党指導下の資本主義」(communist capitalism)”だ。中国とロシアの変革の比較から、変革の規則性を認識出来たのだが、それは、経済の転換が政治体制の転換に有利に働くか、不利となるかは、その順序が鍵だということだ。

 経済の転換と政治の転換の順序には二つの可能性がある。経済転換と政治転換が同時なら、例えばロシアのようなケースだが、共産党のエリートが「変身」を遂げた「民主派」は、自分たちがこれまでの社会関係で金持ちになったことを、必ずしも妨げないわけだから、民主化に反対しないのだ。しかし、共産エリートも、民主化の過程では一定の制約は受けるので、好き勝手に私有化を利用して、欲しいままに公の富を私することは出来ない。ロシアや中欧国家ではこうした特徴が見られる。

 しかし、経済の転換が、政治の転換の前に既に完成していた場合、例えば中国のようなケースでは、既に産業資本家、金融資本家、不動産資本家に成りおおせてしまった共産エリートたちは、民主化を強く阻止しようとする。何故ならば、民主化によって自分たちの政治的特権が奪われかねないばかりか、自分たちが違法に獲得した富も追求されかねないからだ。だから、共産資産階級は、保守的な老共産党員より更に民主化を敵視するのだ。それだけでなく、共産資産階級は中国の未来と国民の将来に大した関心もないので、自分たちの財産や親族を国外に移転させ、中には外国人の身分を獲得して、一旦、雲行きが怪しくなれば、財布を掴んで飛行機に飛び乗ろうとする。共産エリートたちは、こうして「外人に化けて」国内の社会矛盾から逃避する。だから、ソ連や各国の共産党エリートのように、自分たちが将来、国内で生きていくために、政治的妥協を求めることはしないのだ。

 (4)彼らが残す教訓は何か?

 米国の中国問題研究者たちが残した教訓は、少なくとも三つある。第一は、視野狭窄。彼らは中国の数々の微細な変化を注目しながら、帰って「中国モデル」とその他の元社会主義国家転換モデルの違いをないがしろにした。それによって国際的な比較を行えば、得られたはずの教訓を得ることが出来なかった。

 第二には、「中国モデル」に対する認識が浅薄だったがために、全人民所有が少数者の所有に変化するという、一番肝心要の部分を見逃してしまった。それによって、例えば「中国モデルは『先に甘い思い=経済繁栄=をして、あとで苦い思い=政治転換の障害=になる必然性」についての十分な認識がなかった。

 第三に、民主化のプロセスに対する理解があまりにも教条主義的になって、自分の理想を「必然的な現実」としてしまい、共産党資本主義体制が、民主化への方向をズタズタにしてしまう可能性を無視した。

 改革開放40周年の際、中国の多くの知識分子は、現在の情勢は鄧小平、江沢民、胡錦濤時代より悪く、政治的に後退していると感じている。しかし、この種の見方は実際のところ、今回「目が覚めた」米国の中国学者と似たようなところがある。実は、共産党資本主義は、政治、経済が一体となった体制なのだ。中国におけるソ連・東欧型の民主化の可能性は、朱鎔基の時代にもう早々と扼殺されていたのだ。

 制度的な面では、共産党資本主義体制は、1990年から次第に形成され、完成に至った。中共は、この共産党資本主義体制によって、「20年間の経済繁栄」を生み出した。今、それが次第に色あせてきているが、しかし、この共産党資本主義体制は、却ってメンテされて維持されてきている。もし、鄧小平、江沢民、胡錦濤時代の「前進」を肯定するなら、まさにそうした「前進」こそが、政治変革の道を妨げたのだということを同時に認めなければならないのだ。

 この角度から見れば、今の中国の政治動向は、共産党資本主義から伝統的社会主義制度へと後退しているわけではなく、全くその正反対で、1990年代後期以来形成されてきた共産党資本主義体制というモデルが自らの力で”治療”をし、生き延びてきているのである。前ソ連などの資本主義の基礎の上に民主主義や”ハーフ民主主義”を形成したのとは、全く違う軌道を走っている列車のようなものなのだ。

 2018年に中国経済が下降の道に入ったことは、共産党資本主義というこの体制が、短期間にそのピーク時期を過ぎてしまい、下降しはじめたことのメルクマールだ。習近平が役人たちの外国逃亡の道を封鎖したと言うことは、彼ら個人の「救命ボート」を奪ってしまって、彼らに「船と運命を共にする」ことを強制したわけだ。役人たちは「庇が低ければ、頭を下げるしかない」わけだが、内心、大変不満に思ってることは明らかだ。だから、サボっているわけだ。

 しかしながら、経済の苦境は、必ずしも政治変革につながらない。ベネズエラがいい例だ。経済が崩壊しても、何百万人もの国民は別途生計の道を探しに外国に逃げ出しはしたが、選挙で大統領を変えようとか、その責任を追及しようなどとはしなかった。そして当局はさまざまな行政的な方法で、危機の爆発を遅らせ、緩和させた。

 「中国モデル」は、伝統的社会主義や資本主義とは全くことなる制度方式を切り開いた。それがすなわち共産党資本主義だ。今日、仮に鄧小平が生き返っても、絶対、民主化への門戸を開いたりはしない。こうして見ると、米国の中国問題研究者たちは、「お目覚め」以後でも、中国国内の知識分子と同様、同じスタートラインに並んでいるだけで、中国がどこへいく? という問題では。誰もその答えを持ち合わせてはいないのだ。

 原注;これは2016年に発表した私の観点であり、論文名は“Capitalism Making and its Political Consequences in Transition” 呉国光教授が編集した“China’s Transition from Communism—New Perspectives”に収録。
原文は、程晓农:美国的中国研究出了什么错?http://www.epochtimes.com/gb/18/12/29/n10939606.htm
何清漣★2018年 — 中国は、なぜ米国を失った?(上)
何清漣★2018年 — 中国は、なぜ米国を失った?(中)
 何清漣★2018年 — 中国は、なぜ米国を失った?(下) 2019年01月08日

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