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★ソーシャル・メディアの効用 — 意見発表の快感と強化される偏執 2019年1月17日

Posted on January 26, 2019August 21, 2019 By minya-takeuchi No Comments on ★ソーシャル・メディアの効用 — 意見発表の快感と強化される偏執 2019年1月17日

日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;2015、2016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です。
何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

 バラク・オバマが2012年の大統領選挙で、ツイッター、フェイスブックを活用し勝利して以後、米英の選挙戦では、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の役割や影響がますますはっきりして、世論争奪戦陣地は、伝統メディアからSNSに変わりました。最近話題の(1月7日英国、1月19日米国で放映開始)英国のテレビドラマ「ブレグジット:ザ・アンシビル・ウォー」(Brexit: The Uncivil War)も、英国の国民投票におけるSNSの強大なパワーを描き出しています。

 SNSのもたらす「表現の快感」「あっという間に有名に」といった作用以外に、SNSの複雑な作用で一層明確になったのは、人々が極めて簡単に自分たちの偏執性を呼び覚まし、より酷いものにすることです。

 ★SNSの巨大な政治作用

 SNSの出現以後、かつて「第四権力」と呼ばれた伝統メディアの栄光は急速に薄れていきました。選挙の年の世論をリードし、有権者の候補者選択に影響を与える点で、SNSの力は、はるかに伝統的な大メディアより大きかったからです。

 2016年6月の英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票の前、「ブレクジット — ザ・アンシビル・ウォー」の主役の、離脱派を率いたドミニク・カミングスは、十分、ビッグデータの威力を承知しており、苦心して「コントロールを取り戻せ」という言葉をSNSにはやらせて、無関心な選挙民のキーワードにしようとします。

 この国民投票で、SNSは選挙戦の天王山になる。そして古い政治家の従来のゲームは、時代から次第に取り残されることを示しました。あの年、英国メディア界は二分され、EU残留支持派と、脱退支持側にはっきりと分かれ、中立メディアはほんの数社しかありませんでした。しかし、このテレビドラマでは、英国放送協会(BBC)以外、伝統的なメディア、特にペーパーメディアの働きは、ほとんど取り上げられていません。

 こうした現象は英国だけの話ではありません。米国の2016年の大統領選挙で、政治家経験のないドナルド・トランプがツイッターで、自分の政治的な訴えを広げることで、98%もの主流メディアと闘い、民主党と共和党の伝統派、クリントン、ブッシュの2大ファミリーをを打ち破ってホワイトハウス入りを果たしました。

 皮肉にも、イランの大統領選挙(2009年)の際に、時の国務長官だったヒラリー・クリントンは、ツイッターがイランの大統領選挙に重大な変化をもたらすことを発見。ツイッターのシステムメンテナンスの時間を十数時間遅らせることによって、ツイッターに革命を起こさせようとした、と言われています。

 これは後に、ツイッター社によって否定されましたが、この後、ヒラリー・クリントンが、「Eメール革命」に熱中して推進したことは事実です。彼女は「民主自由」のイデオロギーの担い手として、インターネットを革命外交政策の道具にして、これまでにない破壊力があることを明らかにしたことから、「インターネット革命の母」と称されたのです。まさか、自分が2016年の大統領選挙で、米国の伝統的メディアに熱烈に支持されながら、SNS上でウィキリークスの攻撃目標になってしまうとは夢にも思わなかったことでしょう。

 米英での2度の大政治的事件の後、もはやSNSの力を軽視するような人はいません。中国で一時期、流行した反腐敗テーマのテレビドラマ「人民の名のもとに」(2017年)では、省書記の沙瑞金は、専らネット上の民意に注目しましたが、伝統メディアには興味をもたず、ただの中共の宣伝道具としか見ていませんでした。

 ★米国民主党が遭遇するSNSによる苦境

 米国のツイッター、フェイスブックやグーグルなどの老舗は、皆、民主党左派びいきで、ずっと民主党の世論コントロールを手助けしてきました。しかし、最近、民主党は自身内部に新たな問題を抱えてしまいました。

 2016年の大統領選挙の民主党予備選挙で、「サンダース現象」を巻き起こしたバーモント州選出の上院議員、バーニー・サンダースが、「敗北宣言」して選挙戦を降りてから、サンダース陣営に集まった若手活動家たちが、民主党と米国議会の変革を後押ししようと、新たに「Brand New Congress」(まっさらな議会)という団体を組織しました。

 そして、彼らが推薦したスターが、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)でした。29歳の女性は、「投票の新開拓」戦略採用して、SNSを通じて、選挙権を持ったばかりの若い人々を獲得するために、社会主義政策綱領 — 「大衆の資源への生産的コントロール、経済コントロール、公平な分配、フェミニズム、人種平等とプレッシャーのない人道的社会秩序」をもって、直接、自分の選挙区民に呼び掛け、自分が貧しい移民出身で、バーで働いていることなどをアピール。ニューヨーク州第14選挙区でごく普通の市民であることを示し、「私はあなた方の仲間」と強調、極めて高い支持率を獲得し、民主党のベテラン議員のジョー・クローリーを破りました。クローリー議員は、下院民主党のナンバー4で、下院議員を10期20年務めた議長クラスの重鎮で、過去14年間選挙で挑戦者がいなかったのですが。

 コルテス女史は当選後、ずっと自分の社会主義綱領を具体化する努力をして、まず、米国で直ちに社会主義を実現する40兆米ドルの全国民生活無料計画(米国の2017年財政収入は3.25兆ドル)を提案しました。12年以内に米国の大気汚染源の気体放出を0%にし、米国を世界で唯一石油などの化石燃料を使わない国家にすると言うものです。1月6日、彼女はテレビに出演して、米国の金持ちから高額の税収、例えば年収1千万ドル以上なら6〜7割の税金を徴税すると言いました。これはすぐさま論議を呼び、支持者たちは、これは数兆ドルの財政収入をもたらし、社会の進歩を促進するものだとしました。
 
 新たに開かれた第116回連邦議会は、米国史上最も若い議員によって開かれました。25人がいわゆるミレニアル世代(基本的に民主党支持者)で、1980年代後半から2000年代初頭の生まれで、SNSを得意とする人々でした。彼らはSNSを通じて、社会主義的な意見を展開し、民主党の若いメンバーの熱狂的な支持を受けました。中でも、コルテスの、民主党の古参議員で下院議長に復活したナンシー・ペロシらへの攻撃的な批判は、民主党伝統派の反発を引き起こしました。

 最近、2000年の大統領選挙で民主党の副大統領候補だったジョー・リーバーマン(政界引退)は、フォックス・ビジネス・ニュースのインタビューに答えて、「自分は彼女が未来だとは思わない。彼女を信じない」とし、「金持ちから7割の税金を取るという発言は、中間選挙で民主党に不利を招くだろう」と言いました。民主党議員のクリフォードは「自分の陣営を攻撃してはいけない」と言い、また別の民主党下院議員は「国会の活動家と立法者は違う。彼女は、ツイッター界のスターになりたいのか、ちゃんとした立法府議員になるのかを決めなければならない」と述べました。こうしたまともな批判も、コルテスからは嘲笑されただけで、そのまま騒ぎは続いています。
 
 民主党は既に、はっきりと脅威を見とっています。

⑴ コルテス女史ら社会主義者は、SNSメディア上での影響力やフォロワーで、すでに自分たちの下院議長のナンシー・ペロシを超えている。
⑵ 急速に社会主義に傾く民主党は、分裂と中間的な立場の選挙民の支持を失いかねない。
 2019年1月に公表されたラスムッセン報告では、米国の32%の選挙民は、正副大統領候補を選出する民主党全国大会で、正式に社会主義政党だと宣言すべきだと考えています。去年の7月の調査では、こうした見方は28%でした。

 ナンシー・ペロシらの民主党伝統派は、中間選挙で下院で勢力を奪回するために、やむを得ずサンダース派の社会主義者を民主党に迎え入れたのですが、予想外にも、こうした「托卵カッコウ鳥」たちが、いったん、地位を得るや、たちまち伝統派に対して、ガンガン攻撃をかけ、はっきりと民主とを社会主義政党に変える立場を明らかにしたことです。

 ★両刃の剣のSNS

 メディアの形態の変化は、往々にして政治構造の変革を突き動かします。新聞の出現は、伝統的な欧州の貴族政治を崩壊させ、フランス大革命への動きを推し進めました。インターネットというこの新しい形のメディアの出現は、同様に現代の政治的な構造を変革し、この変革はもう既に20年近いのです。その間、様々な動きがありましたが、二つの大きな動きは、見て見ぬ振りをするわけにはいきません。

 (1)破壊力のあるネット革命のリーダーを誕生させる

 SNSの出現によって、大事件や運動の中から、巨大な政治的影響力を持つ、しかし、政治的な地位にはふさわしからぬ政治的人物を生み出すこと。その力と地位が釣り合わないことで、間違いなくこうした人々は伝統的な政治構造に対する、天性の破壊者となります。が、新たな秩序の建設者になることは、難しいのです。例えば、エドワード・スノーデンの機密漏えい事件(2013年)、ブレクジット運動のキーマンとなったドミニク・カミングス、更にはコルテス女史の、破壊力ははるかに建設的な力を上回っています。

 と言うわけで、インターネット革命の与える政治的安定への打撃は、民主国家において、専制独裁国家より、はるかに大きなものになります。後者と違って、民主国家ではインターネットが開放されているからです。

ツイッタラーの@sophyzhang2003が、「Brexit: The Uncivil War」を論じて、SNSについて語っていることが、当を得ています。

 ;「映画の中で何度も”toxic culture”(有毒文化)という言葉が使われている。これは、以前、職場や学校、人間関係、文化や圧力について使われていた。ブレクジットの国民投票で起きた論争は”有毒文化環境”と形容された。SNS上でも人々の心理や健康に”有毒な影響”を与え、言葉や文章によって糾弾攻撃を受ける」といいました。オックスフォードの辞書は、「toxic culture」を「2018年の言葉」として収録するようです。

 (2)SNSメディアは秩序を破壊するが、建設性はない

 SNSメディアには、ほとんど参加に敷居はありません。コストは低廉で、データを調べ、拡散するコストは、はるかに伝統メディアに勝ります。とりわけ、簡単に反体制的政治力に便利なツールです。こうした反体制パワーは、現実の社会構造の最も脆弱な部分を、正確に捉え、民衆の心の奥に隠された不満を窺い知って、SNSを通じて、扇動的な言葉によって、民衆の憤りを激発させ、簡単に政治的な嵐を起こすことができます。

 「アラブの春」の第一の火種は、フェイスブックによって点火されました。グーグルの中東・北アフリカの地域幹部のワエル・ゴニムは、エジプトのインターネット活動家で、「アラブの春」の推進者でもありました。彼は、ネットが世界を変えられると考え、フェイスブックで自らの考えを実践。2011年末、雑誌タイムの選ぶ「世界に最も影響力のある100人」の一人に選ばれました。しかし、数年後、ゴニムは、体験と思考を経て自分の考えを完全に変えました。2015年末、非営利団体主催の大規模な世界的講演会のテド・カンファレンスで、「SNSは、手っ取り早く現存秩序を破壊出来るが、新たな秩序は作れない」と述べました。彼が指摘する現存のSNSの、深刻な五つの問題とはこうです。

 ⑴ まず、デマに対してどう対応するか分かっていない。デマは人々の偏見を表しており、信じられて拡散される。

 ⑵ 自分たちと考えの同じ人たちの層を作り出す。我々は往々にして、自分と同じ観点の人たちとコミュニケーションを図り、SNSの協力の下に、意見の異なる人たちへの注目を取り消し、あるいはミュートする。

 ⑶ ネット上の討論では、簡単に人々を怒らせる。そして、スクリーンの背後には、アバターではなく、実際に生きている人間がいることを忘れさせてしまう。

 ⑷ SNSが、短文でしかも速いという特性から、簡単に結論に飛びつかせてしまう。こうした状況の下では、複雑で細かな観点を表明するのは極めて難しい。

 ⑸ 最後に一番重要なことは、SNSは伝搬のために設計されており、参加するためではない。リツイート(RT)による拡大は簡単だが、コミュニケーションは難しく、浅薄な観点や深みのない議論に便利なように設計されている。自分がお説教するためには都合が良いが、それは対話ではない。

 ゴニムの反省は、「アラブの春」の波が中東・北アフリカに及んだけれども、一つとして、2011年以前の社会経済の発展水準を回復出来た例がなく、リビアは部族時代に逆戻り、シリアは「イスラム国」(ISIS)の発生源となって、未だに平和になっていないという事実の上に立っています。

 世界最大のSNSメディア企業であるツイッター、フェイスブックも、とうとう、科学技術をもって、面倒を引き起こすのではなく、解決の方法になるべきだという認識に到達しました。そして、大量の外部団体の協力の下で、発言を禁じたり、不適当な内容を遮断したりしています。しかし、こうした解決方法は、今、存在する問題を完全に解決することは出来ません。ある団体は禁止すべきであるとし、別の団体はそうは思わないと判断することが、大衆の反発や、訴訟などの争いを含む別の一連の問題を引き起こしてしまいます。

 SNSは、今や既に人類の暮らしの一部となっており、人類の社会秩序はそれによって再構築されるでしょう。しかし、その再構築の過程の中では、山なす大波が揺れ動いているのです。(終わり)

原文は;何清涟专栏:社交媒体的效用-表达的快意与偏执的强化

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