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★一帯一路の「債務の罠」 — 大国追随の売値は? 2019年4月29日

Posted on April 30, 2019January 16, 2020 By minya-takeuchi No Comments on ★一帯一路の「債務の罠」 — 大国追随の売値は? 2019年4月29日

2017年の「一帯一路」サミットの後、一度は中国をお見限りにしたはずの沿線諸国家が、又しても次々に中国歓迎の姿勢を見せて、第2回の一帯一路サミットを共に盛り上げています。中には米国やIMFに「中国の投資は落とし穴だった」と泣きついたマレーシアやミャンマーの姿もあります。

★中国の魅力はどこに?

 2017年5月に開かれた第一回サミットに比べて、今回にはいくつか目を引くポイントがあります。

 まず、各国が中国に対する期待値を下げたことです。どの国も皆、中国の資金量に希望を持ってはいますが、2017年当時よりはるかに現実的になりました。

 2017年当時は、まさに中国では外貨備蓄が急激に減少し、中央銀行トップの周小川が、5月4日に金融雑誌に、「一帯一路投融資協力は、一方的なものではなく、共同作業で共にお金を出し合い、危険を分担しあって利益を享受する共同体で、市場融資を中心として、積極的に人民元を活用し、自国備蓄や国際資本を活用するのだ」、と書きました。あからさまに言えば、中国は今後、共同出資にはドルではなく、人民元を出すということでした。ドルを当てにしていた各国は大いに失望し、ここから同年の一連の国際的な事件が起こりました。一部の一帯一路沿線国家が、中国プロジェクトの停止を訴え、国際通過基金(IMF)に、中国からの債務が積み上がって大変で、助けてくれと訴えたのでした。

 しかし、この経験から今回参加の国々は、サミットに以前のような高望みはせず、「成果の有無はとにかく、参加してみないと分からない」ということになり、例えばイタリアの姿勢がこの典型的で、とにかく中国にお金があるのならばそれでOK、ということでした。

 次に、今回参加した中には新たな重要メンバー、イタリアとスイスという欧州国家がいます。イタリアはG7メンバー国で初めて、「一帯一路」計画に参加しました。その象徴的な意義は言うまでもありません。スイスは更に重要です。

 BBCが数日前発表した記事には、はっきりとそれが意識されており、「スイスの金融業は、国際的に一番名声を得ており、国際組織の本部が集中している。中国にとっては、このスイスの独特の政治的な”中立国”としての地位は、『一帯一路』に対して極めて重要な価値を持つ」です。ドイツは、これに対して大変不満です。それは加入するかしないかではなく、ドイツが主張してきた欧州国家は一体となって、引き続きドイツが指導者として行動する、という点に反したからです。

 第3には、中国政府は、経済協力の上で非常に巧みに立ち回りました。国際ルールに合わせると言ったのでした。この態度表明は、各国に大変好意的な印象を与えました。

 中国は2013年に「一帯一路」を提起しました。リフィニティブ社のデータでは、その総額は3.67兆米ドルで、アジア、欧州、アフリカ、太平洋、南米の数十カ国をまたぐというものでした。サミット当時、中国は膨張主義的な感じで、中国モデルを世界に広め、世界の新たなリーダーになるのだという言い方をしたために、一部の国家の疑念を生じました。

 米国は貿易戦争期間中に、色々、中国の紅色浸透に対して批判し、一部の国家が動揺しました。ですから、今回のサミットでは、北京の宣伝度合いはぐっとダウンし、重点は各国の疑惑の解消に置かれました。例えば、世界銀行と共同で、「一帯一路」の環境と社会基準を研究するとか、「債務に耐えうる枠組みを分析し、その危険を解消する」としました。これは、「一帯一路」の透明度と、イデオロギーの輸出という疑惑に対しての言い訳でした。発表文書の草案には、このサミットに参加した37カ国の全世界の指導者は、融資プロジェクト問題で意見が一致し、グローバル債務の目標を遵守し、環境に配慮した開発を行うとしています。

 ★中小国家が、超大国にたかる習慣はいつ始まったか?

 2018年10月以来、マレーシアなど数カ国が、中国が自分たちを「債務地獄」に陥れたと言い出し、米国はこれに対して高飛車に非難、2018年10月3日に、米国上院は賛成93票、反対6票で、「投資促進発展法案(BUILD)」案を通過させました。この法案は、もともとあった米国海外投資会社(the Overseas Private Investment Corporation  OPIC)や他の政府の下にある発展援助機関を統合して、新たなアメリカの国際発展金融会社(U.S. International Development Finance Corp.)で、600億ドルの資金で、発展途上国のエネルギー、港湾、水利などのインフラプロジェクトを資金援助するものでした。

 しかし、こうした国家資源を活用する話は、民主国家は制限が多くて、中国のような専制独裁国家の効率には敵いません。(原注;無論、この「効率」とは、自国の民主を犠牲にした上でのものなのですが)ですから、米国の投資計画がもたもたしているうちに、中国は本当にお金を出せるわけです。

 世界各国は、今、どの国も国内の失業が大変深刻だという問題に直面しています。例えばイタリアでは失業率は7年来で最低ですが、それでも2018年末の青年失業率は、30.8%もあります。2019年1月のギリシャの若者の失業率は39.7%です。ですから、各国国民(つまり指導者から見たら”票”です)にとってみれば、重要な仕事は、世界各国の人民が専制のくびきから脱することではなくて、自国人民の就職問題なのです。

 ですから、欧州連合(EU)の反対にもかかわらず、イタリアは中国と一方的な協力を選択したのでした。「自分の家の前で中国が
ジェノバ近郊のヴァド港の建設を行うことは、将来を考えると、当然嬉しくはない。しかし、新たな就職先が出来るのはいいことだ」という現実的な考慮からです。

 人口8000人のヴァドの町に400人の就職先が出来るというのは、現地にとっては喜ばしいニュースで、ヴァド市長は「ドイツの声」の取材に対して、「力のある投資パートナーが新たなチャンスと資金をもたらし、同時に、一連の条約、協定、法の規制の下で、中国資本が債務問題や労働者の利益を犯すといった心配は全くない」「中国人は問題ではない。彼らがお金を持ってくるなら、我らは大歓迎だ」と言っています。クロアチアやナイジェリアも同様で、「お金」が中国が一帯一路国家との関係をむすぶ最も強力な「紐帯」なのです。

 2年前、スリランカが中国のハンバントタ港建設援助費用を返還出来ず、港を丸ごと中国に99年間貸し出すことになりました。これが「一帯一路」の債務危険性であり、債務の罠の典型事例だと批判されました。しかし、各国は、借金は返さなければならないのだという市場の鉄則をもうお忘れのようです。よくよく考えると、こうした考え方が生まれたのには、原因があります。
 
 西側のメディアはずっと価値観を優先させ、経済の重要性、とりわけ米国の世界経済における中心的役割を、いささか軽視するきらいがありました。しかし、米国民主党が2018年中間選挙で勝利を得てから、社会主義政策が民主党の選挙戦で極端に好まれるようになり、米国有権者の主体が関心のあるテーマからどんどん外れていくようになりました。

 西側メディアは、焦って無意識のうちに、1992年のクリントン大統領が父親のブッシュを破った時の名言、「バカ!根本的な問題は経済なのだよ!」という言葉をよく引用するようになりました。この言葉で全世界の左派論客に、経済を何とかすることだけが勝利への道なのだ、と気が付かせようとしています。

 実際、この心理は全世界の国々の政治ばかりか、今回、各国が争って中国の「一帯一路」の「債務の罠」に飛び込んでいることへの説明にもなります。なぜなら、中国のお金を得ることだけが、自分たちが自国経済を何とかして、選挙民の支持を勝ち得る元手になるからなのです。

 本来、経済発展には各国自分たちの事情によるものでした。しかし、第2次世界大戦以後、世界はある種の大国追随の方法に慣れきって来ました。イデオロギー的理由を除いて、各国、とくにイデオロギー的色彩が薄い国々は、どちらかの勢力の端っこに立つことで、両方の大国から経済援助を得られました。多くの中小の国家は経済発展をさせる方法を持ちませんでしたが、しかし米ソ間の覇権争いというゲームをシーソーのよううに利用して、より多く呉れる側についたのです。

 米国は第2次世界大戦以後、国際秩序という「世界の公共品」を担って来て、それを自分たちの「ソフトパワー」の体現だと思っていました。各国もまた当然のように、それは米国の責任だと考え、別に感謝もしませんでした。しかし、中国は、金銭の力をはっきり知っており、国連の中で、合従連衡を画策し、人権に関しては、お金で発展途上国に重要な影響力を行使して来ました。(訳注;何清漣氏は、「在人权进步之路上的艰难跋涉―介绍两位国际人权活动家的亲历自述」でこの問題を私的。未訳。http://yangl3.sg-host.com/2010/11/16/humanrightschina/)

 ★冷戦モデルの置き土産 中国の目標と米の干渉

 中国政府の統計では、2019年3月末までに、既に125の国家がそれぞれ異なる協力協定にサインしています。これらの国家は全世界のGDPの36%を占め、世界の総人口の6割になります。こうまで費用と手間をかけるのは、本当にビジネスチャンスを得るだけが目的でしょうか? 当然、違います。

 今回のサミットの間、中国は他国の疑惑を解消するために少なからぬ努力をしました。各国も中国側の説明を受け入れ、中国が運輸とインフラ設備を通じて、欧州とアジア大陸の距離を縮め、貿易を進行させて、人類の連携と沿線国家の国民に有利なようにするということです。でも、これはだからと言って、こうした国々が「一帯一路」の地政学的上の戦略的意義を理解していないということではありません。「一帯一路」の目的は、中国を中心とする世界の建設であり、各国を中国と協力させる中で、高度に北京に依存させるためです。中国は「一帯一路計画」を通じて、ルールを制定する権限を勝ち取り、世界の構造を塗り替えるようとしているのです。

 各国も、米国がとっくに、中国の「一帯一路」に対して不満であることは承知しています。米国の戦略家たちは、中国が「一帯一路」を建設を通じてあたえる影響を軽視出来ないとみています。それはアジアと欧州大陸の地政学的なバランスを変えてしまう潜在的な力であり、技術の標準、軍事的安全、国際発展などの多領域にわたって米国が作っている構造に対する挑戦であり、米国が第2次世界大戦後に作り上げた全世界的な覇権の基礎を破壊しかねないと見ています。ですから、米国は決して中国のこの分野での強力な挑戦を容認しないでしょう。しかし、二つの超大国間の覇権争いは、必然的に世界の多くの国家に、自分たちをどちらか一方に、高く売りつけるチャンスをもたらします。

 今回の、中国の「債務の罠」に争って飛び込む各国というのは、ただアジア諸国が冷戦後に形成してきた「経済利益は中国から、政治的安全は米国頼り」がちょっと変わって、再び、冷戦時代の「シーソー」に戻っただけです。2018年10月の、マレーシアなどの国々が、IMFや米国に、自分たちは中国の罠に陥ったと訴えたようなことが、また必ず起きるでしょう。なぜなら、そうした泣き言もまた一種の、自分たちを高く売りつけるやり方の一種なのですから。(終)

 

 原文は;【观点】一带一路的“债务陷阱”:追随大国的索价

日中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売しました;2015、2016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です。
何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

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