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★習皇帝、「汝ら罪を許すゆえ、功名手柄せよ」路線へ  2019年12月12日

Posted on December 13, 2019 By minya-takeuchi No Comments on ★習皇帝、「汝ら罪を許すゆえ、功名手柄せよ」路線へ  2019年12月12日

 19カ月も続く米中貿易戦争は、世界の産業チェーンの再配置となって、中国経済は苦境にあります。しかし、中国政府の官僚には、この禍が福に転じたようで、反腐敗キャンペーンは「間歇期」を迎え、皇帝陛下は、理想とする「腐敗ゼロ」を諦め「腐敗を許す」と言いだしました。これで「許される」のは、「犯罪を犯しても逮捕しない」民営企業家と、各種の”軽度の腐敗”の官僚たちです。紀律委員会や監察システムは、地方官僚が経済成長を求めるようにと追い立てる、督戦隊になりました。

 ★経済活性化に「督戦隊」登場

 まず、このニュースの元はというと、多維ネットニュースの2019年12月9日付け「もっと働けと、習近平が『太いムチ』で動員令」という記事です。

 ;「12月6日に開かれた中央政治局会議で、習近平主席は…これまでの比較的単純な経済への検討評価に比べて、中共は、官僚たちの仕事分担とインセンティブ、中央紀律検査員会や監察部門による『督戦隊』を作って、ニンジンとムチ戦略を採用し、過去の過ちは許し、激励と懲罰によるシステムで改革の実行を迫る、2020年の中国経済に向けての『動員令』を下した」とあります。

 この「過去の過ちを許し」というのが、つまり「罪を認めて、功名手柄を立てよ」なのです。

 多維ネットニュースの分析では、「この習近平談話は、中国経済の重要問題は、”米中貿易戦争”の外部的圧力や、いわゆる経済専門家が言う「投資の限界効率」「人口老齢化」などファンダメンタルズの問題ではなく、実は依然として人間の問題で、それも、特に地方官僚の思想と利益の問題だと十分理解しているのだ」と書いています。

 このお話は、中国の今上皇帝陛下の理論と実践の結合レベルが、あらゆる中国経済学者の上を行くばかりか、データしか読めない外国経済学者よりはるかに優ることを表しています。経済専門家連中ときたら、去年は中国経済構造の調整の困難さばかり強調し、今年も早くから、アフリカ豚コレラが、中国経済の困難さの病根だなどと言っていました。皇帝陛下のお膝元の新華ネットでも、少し前には、「故意でないとしても腐敗はいささかも許してはならない」と書いていたのが、変わりました。

 皇帝陛下が「病根」を発見した今となっては「いわゆる経済問題とは、結局のところ『地方官僚の思想と利益の問題』だ。だから、処方箋を出せば良い。すなわち『ニンジンとムチ』である。ニンジンとは昇進。ムチとは紀律委と監察部門で、当然この両部門は、既に官僚たちの腐敗の証拠を握っている」と。だから「今、それでもお前らが職にいられるのは、党中央が英明にも罪を許すからだ。頑張れば昇進も出来る」ということです。
 
 かって中央の八項規定(訳注1)に違反し、厳重な警告を受けた元上海市常務副市長の周波は、経済面の才能を買われて「罪を許され」、遼寧省の副書記になっています。

 これは、鄧小平が唱えた「ネズミを取れば黒でも白でも良い猫だ」という「猫論」に似ていますが、違いもあります。鄧小平時代は、腐敗はこっそり行われ、「ネズミを捕る」とはGDP増大の意味でした。江沢民、胡錦濤時代には猫にネズミを捕らせるには、猫が違法行為をするのを許して、再議には猫が何億もの現金を溜め込み、ツテを利用してオフショアに口座を開きました。

 しかし、習近平政権になってからは、反腐敗キャンペーンによって、違法行為が出来ず、八項規定の禁止によって、公費で飲み食いもままならず、猫どもはネズミを取ろうとしなくなりました。党中央は、声を枯らして官僚たちにサボるな、働けと何年も言い続けて来ましたが、効果はありません。そこで、ようやくムチばかりではダメで、ニンジンが必要だと気がつき、お前たちの過去の悪行は問わない、という話になったのです。

 ★中国官僚の経済道

 でも、これは官僚操縦術ではあっても、経済管理の道でありません。ただ、中国の各級の官僚たちはやはり、中国の制度環境の中で「経済を発展」について、よく承知して、かつ学習能力も高いのです。
 広東省や沿海地域では外資を導入して発展しました。すると全国でもすぐ外資導入を開始しようとなりました。しかし、外資は、中・西部地区には行きたがりませんでしたから、ため息をつくばかりでしたが。一部の省や市では、不動産開発を牽引力として経済を成長させましたが、すぐ国を挙げて土地財政を行い、不動産価格は世界のトップクラスになり、上海や北京は、世界不動産価格トップ10にまで躍り出ました。地下鉄建設でも、全国の30以上の都市では、6千億元を費やして市内の交通を整備しましたが、収支均衡するのは、ほんの僅かです。

 中国経済には、依然として何頭もの「灰色のサイ」が存在しますし、公認されたサイには、上述の政府の鉄道インフラによって生まれた巨額債務があります。金融方面では、幸い中央も権限を地方移管しませんでした。もしそうしたならば、全国各地に埋設された「地雷」の数は、P2P(訳注2)といった個人理財商品どころでは済まなかったでしょう。

 と言うことは、官僚たちがこの数年、サボってくれたおかげで、一部の不動産開発が抑制されて、いわゆるインフラ整備にお金を使わないで済み、金融システムの焦げ付きも少なくて済んだわけです。中国経済のこうした構造的な問題は、10年前ならまだ何とかなったでしょうが、2008年のリーマンショック時が最後の節目でした。当時、私はこの調整のチャンスを逃せば、もう改革の望みは無くなるだろうと書きました。米・中貿易戦争で、米国側は、国有企業の輸出奨励金をやめるようにと構造面での調整を要求していますが、中国側は答える術がありません。もしそんなことをすれば、自殺も同然ですから。

 中国の経済不振の原因を、官僚の思想と利益の問題のせいにしてしまい、紀律委員会とか監察システムで督励して、ニンジンとムチを使えば問題解決と信じる認識び一部は、中国人が愛してやまない毛沢東に由来します。

 毛沢東は、「人間は天にも勝つ」、権力の意思は経済のルールに勝てると思っていました。1958年から1961年まで行われた「大躍進」時代には、「人間が大胆にやればやるほど、地は多くの恵みをもたらす」という毛沢東式経済理念が聖典となりました。毛沢東の考えに基づかない経済人は、全て間違った政治路線の代表とされました。

 例えば、農村合作時代(訳注3;1950年代)の時期に、時の副総理と中央農村工作部部長の鄧子恢(訳注4)は、人民公社の数を1年以内に56万から100万にすべきだと主張し、それが毛沢東の130万より少なかったために、毛沢東に「情勢についていけてない」と罵られ、「纏足されてよたよた歩く女のようだ」と批判され、党内の誤った路線を歩む代表として、失脚させられてしまいました。

 習近平は、毛沢東のやり方を少し変えて、中共の官僚には多かれ少なかれ腐敗は存在するとして、紀律検査委と監察機関を督戦させて、官僚たちに「罪を帳消しにする功名手柄」をたてさせて、経済を上向きにさせたら罪状は消滅、もし出来なければ紀律委と観察機関行きだ、と言うのです。これは、なんとも悲劇的な話です。汚職しない官僚は政府には皆無で、誰でも捕まえたら必ずやってるから、腐敗の罪を使って官僚を管理しようというのですから。これなら階級闘争も世論工作もいらないと言うわけです。


 ★民間企業の「原罪」は、「罪」である

 民間企業の「罪を認めて、功名手柄を立てよ」のニュースの元は、最高検察庁の張軍が12月3日に明らかにしました。張検察長官は「容疑のある民営企業の責任者で、捕まえないで良いものは捕まえず、起訴しないで済む者は起訴しないし、執行猶予に出来るものにはそうする」として、データを使って、政府の「寛大さ」をアピールしました。「今年の10ヵ月間で、非国有企業の人員の犯罪の、不逮捕率は29%で、刑事事件全体より6.9%高い」と言ったのは、「お前ら企業家の犯罪率は大変高いのだが、我々は寛容で逮捕しない。だからしっかり稼げよ」の意味です。

 これに驚く人は、多分、国務院がこの9月12日に発表した「事前事後監督規範と強化に関する指導意見」をお忘れになったのでしょう。この「指導意見」は、企業やその他の機関に、内部告発者制度を作って、違法行為を通報させようという狙いです。中国政府がこのような措置を取るのは、依然として、中国の民営企業には”原罪”がある、という考えで、民間企業が各種のグレーゾーンで金儲けをしているからです。

 しかし、それは中国の制度環境が悪すぎることから起こるわけで、政府の官僚が土地や許可権限、税金徴収、消防法検査などの公共機能を全て自分たちの金儲けのツールと見なしているような状況の下で、民営企業が生存や成長を図ろうとすれば、実権を握る官僚達に賄賂を贈って、経営の許可や、土地、銀行からの借り入れ、脱税するのは、もう当たり前なのです。

 内部告発制度を通じて、贈賄、違法経営、脱税などの情報を第三者から得て、ビジネス界を牛耳るのは、まさに中国政府の「漏らすところ無き」政策で、どんな大きさの卵であろうと、隙間から逃さないぞということです。その一方、政府は「捕まえられるが敢えて泳がせる」(犯罪不逮捕率)で以って、こうした民営企業に「罪を認めさせ」つつ、資金の外国逃避を許さず、かといって営業停止もさせません。「卵をとってトリを殺す」のではなく、「トリを大きくして、卵を産ませる」やり方です。民営企業経営管理や市場販売の経験を利用して、引き続き稼がせて、労働者を雇用させ、ゆっくりと民営企業から税金をとりたてて、就業数を確保し、GDPに貢献させようということです。当局は”身の程”をわきまえ、非独占企業である民営企業を次第に公営化して、締め上げていこうということです。

 しかし、政権が民営企業家全体を「罪を認め功名手柄せよ」状態にしておいて、「法治国」の見てくれすら捨ててしまうとなれば、民営企業家のやる気は冷め切ってしまい、政権への敵意にさえなるという点を分かっていません。

「罪を大目に見てやる」方式と、紀律委と監察機関に尻を叩かせ、官僚とビジネス界という大エリート集団を「罪を認め功名手柄せよ」と迫ると言うのは、大戦争映画と「ドン・キホーテ」を合わせたような姿です。地方の官僚と民営企業家は、後方から拳銃を持った紀律委と監察機関に「戦え」と督励されて、バラバラに敗走する将軍のもとに駆けつける兵士のようですし、一方、「敵陣」には誰もおらず、ただ巨大な風車が回っているだけみたいなイメージです。

 昔から「手厚いご褒美をくれる部隊には、必ず勇者が出る」と言います。しかし、「高圧的に脅かせば、経済は必ず生き返る」なんて聞いたことがありません。世界各国がどこもここも、経済問題で困っている時に、こんなやり方で、中国が新たな経済成長を遂げることが可能だったら、まさにノーベル賞ものの政策でありましょう。(終わり)

 原文は;何清涟:掌门大方“容错” 官商“戴罪立功”
訳注1;2012年に出された贅沢をするな、とか過剰な宴会、旅行、警備などを戒めた規定。

訳注2;P2P ピア・ツー・ピアはネット上の貸金業★中国金融システムの爆弾処理と金融難民★  2018年7月30日参照)

訳注3;農村合作化;第一期は1949年10月〜1953年、第二期は1954年至1955年上半年)

訳注4;鄧子恢 党中央農村工作部長55年農業合作化の発展速度などについて慎重論を主張。毛沢東との意見対立が起き,「右傾日和見主義」と批判された。 1960年代初期,農業生産の請負制を主張したが,再度毛沢東によって批判され実権を失った。 69年九全大会で中央委員に当選したが,文化大革命で迫害。 72年北京で病死。のち、名誉回復された)

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