この三日間の武漢肺炎流行データは、 まるでジェットコースターのようです。
世界128カ国が、 中国に対して入国規制を実施し、 ほとんどすべての航空会社が、 中国行きの便を暫時停止している今、 中国政府からは良いニュースが発表されました。
2月11日午後、 SARS流行時に「無双の国師」と名声を博した鐘南山大博士は、 ネット動画で「流行の転換点はまだ予測できないが、 ピークは2月中下旬、 4月には収束するだろう」との見解を述べました。
2月12日、 政府は、 武漢肺炎ウイルス病例は、 この一カ月で最低になったと発表。 鐘南山大博士の予測を裏付け、 グローバル株式市場は、 ただちに反応して上がりました。
しかし、 夜になって、 湖北省が発表した肺炎流行状況の数字が突然跳ね上がり、 1日にして確認された湖北省内の症例が1万4840件も増加しました。 国家衛健委員会が発表した全国(31省と市、 新疆生建兵団)の新増加症例も2015例、 湖北省1638例(2月11日)でした。 でもこれは中国統計資料の「中国的特色」のせいだったのです。
★中国統計資料の強い「中国的特色」
いつものやり方で、 時間順に関連データを整理してみましょう。
ロイター2月11日:中共トップの習近平は、 国家発展改革委員会(発改委)やその他の経済部門からの、 武漢肺炎流行状況に関わる報告を見たあと、 2月3日に、 共産党政治局常務委員会でこう述べた。
;「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ取り組みは行き過ぎており、 国内経済に悪影響をもたらしている。 地方官僚は『この上さらに制限するような措置』は控えるよう」と。
すでに多くの地方では、 地元の学校や工場を閉鎖し、 道路や鉄道を封鎖、 人々が集まる活動も禁止。 中には住宅区域の封鎖も行なっていたところもあります。 消息筋はロイターに、 習近平は、 こうした一部の措置は現実的でなく、 大衆を不安にさせていると認識している、 と言ったのでした。
中央政府の要求で、 16の省と市が湖北省各地を支援。 人を派遣して、 物資を送り、 流行状況を理解しました。 その結果、 昔から、 9省に通じる交通の要衝として名高い武漢市が、 今や地獄と化し、 さらに全省に疫病を拡大している深刻さを知ったのでした。 で、 その様子をヒソヒソと報告を受けた各省は、 期せずして一致した行動を取りました。 道路を閉鎖し、 省を閉鎖し、 各都市の住宅地域に閉鎖式管理(訳注1)を行なったのです。
国務院は、 2月3日から正常に仕事に戻るようにと決めましたが、 各省がそんな話をハイハイと聞くわけもありません。 皆、 10日間、 出勤期間を延ばし、 流行がピークを過ぎて下火になるのを待たないでどうする、 という態度でした。
中国の統計データは、 「中国的特色」が強いのです。 2月12日、 国務院連防連控機構(訳注2;産業の営業・操業の再開のために、 国家衛生健康委員会、 国家発展計画委員会、 工業情報化部など関連部門の統括と協力、 物資調達のために結成された組織)が記者会見を開きました。
席上、 国家衛生健康委のスポークスマン、 米鋒・宣伝部副局長が、 「良いニュース」を伝えました。
;「流行状況は全体にプラスの変化が見えた。 新たな増加症例の波は下り坂になって、 新症例は、 ピーク時の2月11日の3887例から2月11日の2015例に下がった。 新たな擬似症例も、 ピーク時の2月5日の5328例から2月11日の3342例になった。 下降率は48.2%と37.3%だ」と。
ところが、 数時間後、 湖北省が流行状況を発表して、 この「流行状況好転」を徹底的に否定してしまったのです。 当日の、 湖北省の新たに増えた確定症例は1万4840例だったと。 これでは、 国家衛健委の言った1638例の8.1倍以上。 全国の新たに増えた確定症例の2015例の7.3倍以上です。
この同じ日の、 中央政府と湖北省政府のデータの食い違いは、 神々が雲上で争うような奇妙な話です。 でも、 中国の統計が「中国的特徴」を持つ中共の言いなりだということを生き生きと証明しています。 中共の最高指導者が、 「工場再開、 業務復帰」と言えば、 たちまち疫病流行は好転して、 職場復帰推進を助けるデータが出てくるというわけです。
★統計資料は権力次第でゴム同様に伸縮自在
国家衛健委と湖北省の二つの流行状況報告のデータの違いに、 国家衛健委は、 仕方なく修正しました。 「2月12日24時の新型コロナウイルス肺炎流行状況最新情報」には「新型コロナウイルス肺炎の診療方法(試行第五版修正版)」なるものが出て、 「湖北省と湖北省以外の省の病例診断基準を分ける。 湖北省には『臨床診断症例』の分類を作る。 これは擬似病例で肺炎の映像がある患者を、 臨床診断症例として確定し、 患者が早期に確定例とすることで、 関連治療を早期に受けられて、 治療成功率を向上させるものである」となりました。
しかし、 これは表向きの言い方です。 これが物語る事実は、 つまりこうです。 国家衛健委は不断に流行状況の統計基準を変えていたのです。
国家衛健委の発表資料の2月6日から2月11日の5日間のうち、 「新型コロナウイルス肺炎防控方案」は、 全部で3回改定されて、 第四版、 第五版から第五版修正版があります。 最後の修正版は特に、 湖北省の統計資料と国家衛健委の資料の整合性のためです。
こうした改定は、 当然、 習近平総書記の各地方の防疫措置が過度に厳しいという不満によるものです。 疫病流行統計基準だって、 政治の需要に応えねばなりませんし、 中共のためには、 流行が好転したというデータを出さねばならないのです。
振り返ってみれば、 何が変わったかすぐわかります。 国家衛健委の2月6日に出した「新型コロナウイルス防控方案第四版」では、 無症状の感染者は、 病例範囲から審査して削減することになっています。
マスコミは、 黒龍江の13確定症例が減らされ、 山西省からも1例減らされていることを発見しました。 皆、 無症状の感染者です。 しかし、 この除外は明らかに速さが不足で、 2度の改定になりました。 国家衛健委の言い方だと、 変えたのは病例診断基準で、 湖北省の分は「臨床診断症例」分類が増えたからだということです。
上述の原因以外に、 湖北省の2月12日の流行爆発的増加には、 もう一つの原因があります。
13日に中共湖北省委員会書記の蒋超良と、 中共武漢市委書記の馬国強が免職となり、 中共上海委書記の応勇が湖北省書記に、 中共済南市委書記の王忠林が武漢委書記になり、 湖北省の救援に向かいました。 彼らは、 前任者の流行状況データの濡れ衣を着せられたくないので、 本当の数字を求め、 だから、 症例数が跳ね上がったのです。 「会計簿」を修正したわけです。
しかし、 武漢の流行状況は深刻で、 12日発表のデータだって本当の実情ではないでしょう。 きっとこれも何割引かされていましょう。 死亡データは、 さらに実情ではないでしょう。
と言うのは、 ネット上には、 次々に街頭での死亡者の写真がアップされています。 また、 河南省洛陽市と、 重慶市は火葬業務職員たちを緊急援助で応援派遣しました。 武漢の8つの葬儀場の力は、 死亡者が1000人に達しなければ、 他からの応援は全く必要ない十分な能力を持っています。
最後におまけ。
中国武漢の肺炎流行の変化は、 世界の株式市場に影響します。 12日午前の国家衛健委の流行状況データが「良かった」ので、 世界の株価は上がりました。 しかし、 湖北省の数字が出たとたんに、 株価値上がりはストップしました。
米国の多くの投資家は中国投資に熱中しており、 毎日、 数字を睨んでいます。 ただ彼らは、 中国統計データが、 上から下まで中共の必要次第でどうにでもなるという「中国的特色」に富んだものだとまでは知りません。
今回の小さな教訓が、 こうした投資家の記憶に残るかどうか…私は知りません。 (終わり)
訳注1;居住域の往来を原則禁止。 買い物なども2日に一度、 1人だけ、 などの制限を設ける隔離措置
訳注2;武漢肺炎中の産業の営業・操業の再開のために、 国家衛生健康委員会、 国家発展計画委員会、 工業情報化部など関連部門の統括と協力、 物資調達のために結成された組織
原文は:何清漣專欄:看懂中國疫情資料的「黨性」
これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。過去のものはウィンドウズやMacのサファリでは、句読点が中央配置になります。Macのchromeがおすすめです。なお、「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。