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★習近平の「待った」とワシントンの政局  2019年10月16日

Posted on October 16, 2019October 16, 2019 By minya-takeuchi No Comments on ★習近平の「待った」とワシントンの政局  2019年10月16日

 「香港人権・民主主義法案」 が米下院で(超党派の支持を得て全会一致で)可決したことは、北京のメンツを傷つけ、北京は米国の介入を口実に、香港に暴力的な方法で収拾しようとするかもしれない。

中両文収録「何清漣 2017中国」Amazonで発売。「2018」編集中;2015、2016Amazon改訳版を電子ブックで。Kindle Unlimited なら無料です。
何清漣氏の2015~2017までのエッセイ改訳版

 10月11日、米・中双方は、米・中貿易協議の「第一段階」に署名し、全世界はこれでやっと一息つきました。ホワイトハウスの主人のトランプ大統領は、中国が今後、総額400〜500億ドルもの大量の米国農産物を購入するだろうと喜色満面で宣言し、ツィッターに太い文字のキーワード付きで、このニュースを報じました。しかし残念ながら、2、3日後に、北京は、中南海の主人・習近平の「待った」として「条件についてもっと話し合う」要求を出しました。この「条件」とは何でしょう?

 この「条件」は、トランプが10月15日に下院で審議、通過させようとしていた「香港人権・民主主義法案」 です。「香港関係法」(United States–Hong Kong Policy Act または「米国 — 香港製作法」「米港関係法」は、大統領が批准(サイン)すべきかどうかを決定する権限があります。習近平は時を逸せず、この「火中の栗」をトッランプに押し付けたのでした。いったんこの「火中の栗」が上院という焙烙の中で炒られたら、トランプ大統領は、大火傷を負うことが必至になりましょう。

★ 「香港人権・民主主義法案」

  「香港人権・民主主義法案」のこれまでの経過を知るには、まず「香港関係法」を理解しなければなりません。香港の特殊な国際的地位は、二つの法律の文章に基づくものです。

一つは「中英共同声明」(訳注;1984年12月19日に中国の国務院総理趙紫陽とイギリスの首相マーガレット・サッチャーが北京で署名)で、香港の主権が英国から中国に移った後も、自由高と独立関税区としての地位を維持することを保証するものです。香港は「中国香港」の名前で国際組織に参加でき、貿易レベルでは他の国々と二国間協定を結べます。

 二つ目は、1992年に米国議会を通過した「香港関係法」で、香港が中国に復帰してからも、引き続き貿易上の優遇措置を受けあれ、香港特別区のパスポートを承認し、香港がハイテクなどの「敏感なる技術」を購入出来るということです。

 そして、香港関係法の第202条(米国連邦規則集 外交第5722条)では、米国大統領は、もし香港の自治状況が中国によって十分ではないと認めた場合には、大統領はこの法律を中止し、また自治を回復したら復活させることが出来る、となっています。

 香港で2014年にオキュパイ・セントラル運動が起こってから、米国議会では超党派議員が何度か「香港人権と民主法案」を提出し、これは「香港関係法」の強化版です。この法案の2017年版では香港の特別待遇の法律と協議を与えるにあたっては、国務長官が国会に「香港が十分な自治を与えられていること」を確認しなければならないことになっています。

 このほか、国務長官は、毎年、議会に「米国の利益に関わる香港の状況」を報告することになっています。しかし、オバマ大統領時代には、この提案は議会を通過しませんで、今年、香港の「逃亡犯条例改正案」反対運動が起きてから、米国上院、下院の両党議員がようやく一致して法律改正を行うようになったのです。

 ★トランプは香港の「逃亡犯条例改正案」反対に不介入の姿勢

 トランプ大統領は自分の政治姿勢が利益を土台にしたものであることを隠そうとはしません。冷戦終結後、歴代の米国大統領は世界の大統領たる立場をとりました。とりわけオバマ前大統領は、常に米国の利益を犠牲にしても世界の他の国々の必要性に応えました。

 トランプは違います。彼は「米国を再び偉大に」で、米国の利益を優先させます。ですから、彼は「世界の大統領」の1人となるより、「世界の大統領ではない」のです。ですから、彼は人権や世界の普遍的価値など、民主党の大統領が高らかに叫んできたスローガンを好みません。これが香港の「逃亡犯条例改正案」に介入しようとしない姿勢の理由です。

 香港での「逃亡犯条例改正案」反対運動が起こってから、トランプ大統領の香港に対する政策姿勢には、香港の反対派の不満だけではなく、各種の道義的責任を追及する非難がありました。例えば、7月22日には「香港の抗議活動は長い間続いており、中国はそれを阻止しようとしていないが、しようと思えば出来る」と言い、習近平国家主席は香港のでもに対して「よく責任を全うしている」と言いました。

 8月1日には、人民解放軍の香港進駐問題について記者の質問に答え、これは香港の反対派からは大いに反感を買いましたが、中国政府は逆にトランプは正しいことを発言したと賞賛されました。それは「香港は中国の一部分であって、中国と香港が処理すべき問題だ」というものでした。10月7日に、トランプは「香港問題は人道的に解決されるべきだ」として、もし香港で「好ましくない状況」が生じたら、米・中両国は貿易協議に支障がでると言いましたが、これも、米国の利益を一番に置いた発言です。こうしたことは、香港の反対派やその支持者にとっては大変不満です。

 10月11日に、中国との間に「第一段階の貿易協議を達成」した宣言した時にも、トランプは、香港の抗議行動は弱まっており、中国側と話したが、デモ参加者も減っているので、問題は自然に解決するだろう、と言い、各方面から強い非難を浴びました。

 トランプのこうしたあけすけな態度表明は、確かに政治家としてあるべき円熟味に欠けており、批判は完全に理解できるものです。しかし、トランプのおかれている現在の政治状況下では、香港問題に介入するというのは確かに、選択肢にはありません。

 ★「香港人権・民主主義法案」のゲームプレーヤーたち

 「香港人権・民主主義法案」のゲームは、2014年にテーブルが用意されましたが、オバマ前大統領時代はゲームは始まらず、今年になってからスタートしました。現在のプレーヤーは、強烈に法案通過を求める民主党と一部共和党議員、現状のままを願う米国の多国籍企業(350社が香港に支社を持つ)、まだ態度を表明していない共和党の一部上院議員です。

 同法案支持者の共和党のテッド・クルーズ上院議員は数日前に香港を訪問した際、「香港人権・民主主義法案」は下院通過は問題ないが、上院通過は予想し難い。その理由は、実業界からの反対が強いと言いました。ですから、街頭行動での暴力のエスカレートを控え、暴力的画面をネットにアップして香港のサポーターーに泥を塗るようなことをせずに、法案を通過させるよう呼びかけました。

 米国がこの問題を正視しようとしまいと、今や、北京の政策決定が、中国国内政治の政策決定であろうと、深刻に米国政治に影響することは認めざるを得ません。トランプが香港カードを中国との交渉に使うことが出来るという人もいますが、間違っています。

 実際には、香港カードは民主党に役に立つもので、香港問題に関わりたくないトランプ大統領を、厄介で気まずい立場に追い込むことが出来るのです。一旦、上院を通過したら、トランプ大統領は「焼け栗」を触らざるを得ません。香港の民主運動を支持しようが、何百億ドルの農業産品の発注書を選ぼうが、どうしたってヤケドしてしまうのです。

 今、勝負の結果に影響を与えるべく努力中のプレーヤーは

●香港の反対派と支持者、台湾で中共に打撃を与えたいと願う人々。この法案が香港の街頭闘争への援護射撃になることを期待。
●香港特別区政府と北京。この法案が通過しないことを願っている。
●香港実業界と中産階級は、一人一人違う。というのはこの法案は香港経済に打撃となり、直接自分たちの利益に関わるから。

 ワシントンでこのゲームテーブルを囲んでいるのは、もうギッシリいて、その関係は矛盾の極みです。

① 米国の350社の多国籍企業の香港支社(クルーズ議員のいう実業界の利益がこれ)で、香港では毎年350億ドル以上の貿易黒字があり、貿易赤字削減を重視するトランプ大統領からすると、これは貴重。なので、これまでトランプと仲の悪かったウォール街や多国籍企業とトランプ大統領の利害が一致。

② 米国の多国籍企業はずっとグローバリズムは最大の利益を産む元だし、クリントン大統領がグローバリズムの旗手だったことから、ずっと民主党の硬い支持者で金主だった。しかし、今年は民主党の候補者が次々に金持ち課税と高福祉を言い出しているので、ウォール街は正式に、もしウォーレンやサンダースが候補者になれば、民主党支持をやめると宣言している。

③ 香港政府は経済安定を願っており、米国政府と実業界は経済利益を必要としており、この点では双方一致。

④ 民主党はトランプの票を減らしたいので、トランプが道義上不利な立場に置かれるのを期待。「香港人権・民主主義法案」を支持するのは、その殺傷力と、道徳的にマウンティングするための切り札。

「香港人権・民主主義法案」の結果となると更に複雑で

① 法案は反対派を支持して、直接香港経済に打撃を与える。損害を蒙るのは香港の実業界と中産階級。北京は間接的に損害を蒙る。

② 米国では、この法案はまだ一連の手続きを経なければならないが、最後に法案が成立、(トランプ大統領がサインして)発効したときに、香港がどんな状況になっているかは、トランプのいうとおり「おのずから解決」するかもしれないが、今この時に限れば、北京のメンツをひどく傷つけることになる。

 メンツは中国の政治文化では、「中身」より重要なのです。ですから、この法案にサインしたならば、北京はおそらく、香港情勢をあやつり中国を分裂させようとするものであり、米国勢力の介入だとして、街頭抗議活動がますます暴力的になっているという理由で、強権を行使して香港の事態を収拾しようとする可能性が極めて高いのです。

 そして、北京を道徳的な批判では止めることができません。外交は内政の延長であり、米国の政府と議会間の戦いは更に激烈になり、民主党はトランプが厳しい状況に置かれるのを喜んで見ているでしょうが、ただ責めるだけで、決して香港出兵を求めたりはしないでしょう。(終わり)

原文は;习近平“悔棋”与华府的政治牌局

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