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人民元のSDR入りーそれは強心剤?それとも鎮痛剤?

Posted on December 2, 2015 By 何清涟 1 Comment on 人民元のSDR入りーそれは強心剤?それとも鎮痛剤?

何清漣

2015年12月2日

全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

https://twishort.com/Rj5jc

中国人民元の「IMFのSDR入り(特別引き出し権対象となる”バスケット通貨”にくわえられたこと)」は人民元がIMFの本来定めたルールに合格したからではありません。IMFも米国も、他の国々も一種の政治的配慮から認めたものです。ことし4月にロイターはIMF第一副総裁が取材に対して中国が期待する人民元のSDR入りの訴えについて、IMFは将来、関係する監査に対して中国側がその基準を変えるならば人民元を認めると答えていました。IMFにたいして拒否権を持つ米国のオバマ大統領も人民元のSDR入りを支持して認めましたのでその時点でもう決まっていたことなのです。しかし、中国政府と中国の世論は今回のSDR入りを米国に対する重大な勝利であり「戦果」であるとみており、その成果を近い将来や遠い未来への期待を虚々実々、あることないこと並べ立てております。この「戦果」は一体どのぐらいの中身があるか、についてみてみましょう。

★中国の夢⑴;人民元が「SDRバスケット入り」によって、各国中央銀行が人民元を欲しがるようになるか?

鳳凰ネットは「人民元資産にいかなる変化が起きるか?」というイラストで3つのことを挙げました。それは「少なくとも一兆米ドル分の世界の外貨準備が中国資産になる。将来5年以内に、外国企業が中国で発行する人民元建ての債券、つまりパンダ債券は500億米ドルを超えるだろう。中郷銀行の外貨準備管理機構とそれへの投資者は人民元建て資産を買い占めるようになるかも」でした。

これは別に鳳凰ネットだけではなく多くの似たようなニュースが流れています。総じていえば;SDRに入っている通貨は危険回避のための通貨であり、この地位を獲得したら、間違いなく国際的範囲内の公共部門とプライベート部門による人民元使用が増えて全世界の資産配置の構造が変わり、人民元の割合は大幅に上昇する。よく引用されているのはスタンダードチャータード銀行アジア担当のベッキー・リュウの予想で;「SDR加入後の5年以内に、中国は4〜7兆元の国際資金を人民元債券市場にもたらし、来年に中国に5000億元の外貨資金が流入するだろう」というものです。

IMFの作ったSDRとは一種の「ペーパー・ゴールド」で、各国が使用する通貨の分量に応じて使用できるという一種の疑似通貨であって、実際の通貨ではありません。各国がSDRを使う用途は三つです。①IMF加盟国は必要時に申請し、その批准後、他国の貨幣(*大体米ドル)を自国通貨と交換し、外貨不足を一時的に免れ各種支払いに使える。② IMF加盟国が国際収支で赤字になったときに、SDRを通貨に換えて赤字を埋めることができる。③ IMF内部の貿易に使える。

IMFが人民元をSDRに組み込むことが”改革”の一部とみられている主な理由は「人民元が国際貿易の中で広範に使用されていることで、人民元を通貨バスケットにいれるのはSDRの構造をさらに合理的にしてSDRの汎用性と代表性を強化しより魅力のある備蓄資産価値を持たせようということである」というのは「政治的には正しい」説明なのですが、しかしSDRというペーパーマネーが世界中の貨幣体系の中では主要な地位を占めていないという点から見て、人民元がその仲間に入ったからといって世界的な資産の構成の枠組みが変わるかどうかは、各国中央銀行や機関投資家が「意識的に人民元を持とうとするかどうか」次第というべきでしょう。

★幻想実現の前提;各国中央銀行は人民元を貯めようとするか?

中国の幻想は肝心な点を見落としています。それはつまり、IMFはメンバー188か国に対して「絶対にSDRに指定された通貨を使って相応の外貨準備をしなければならない」という規定を設けていない、ということです。ですから、機関投資家や個人が人民元を備蓄資産として選ぶかどうかは別にSDR準備比率を参考になどしなくてもよく、自らの理性に基づいて選べばいいのです。この種の理性による選択がSDRの性質と用途の基本なのです。

つまりもっと簡単にいえば人民元がSDRの仲間になったからといって、別に各国の中央銀行は米ドルを捨てて人民元を備蓄通貨にするとは限らないのです。人民元がSDRに入る前は米ドル、英国ポンド、ユーロ、日本円が「バスケット」の中身でした。でそこに人民元がはいったとしてもそれはただ各国の中央銀行や投資家にとっては選択肢がひとつ増えただけの話です。

人民元を備蓄用に選ぶかどうかは各国の中央銀行がそれを望むかどうかによります。IMFのデータによれば、現在38か国・地域の中央銀行は人民元資産を総額で7800億元もっていて、それは全世界の外貨資産準備高の1.1%にあたります。現在の全世界の準備資産は11.3兆米ドルで、そのうち米ドルは64%をやや下回り、ユーロが21%、英ポンドが4.1%、日本円が3.4%です。

IMFの公式外貨準備貨幣構成報告は各国中央銀行の準備の傾向を表しており、ちょっとやさっとではこれを変えることは難しいでしょう。中国人民元の信用は必ずしもユーロや日本円より高いとはいえず、さらに現在、中国経済は衰退しており、各国中央銀行は基本的に米ドルを放棄して人民元を備蓄通貨にはしないでしょう。中国中央銀行自身、その外貨準備はずっと米ドルを主軸にしてきました。人民元が備蓄通貨の資格が得られた今、中国中央銀行が自国通貨こそ強い通貨であると確信するならば米ドルを減らしてもよさそうなものです。しかし中国中央銀行は必ずしもそのような選択はしないでしょう。なぜなら中国中央銀行の頭取といえども人民元が米ドルと肩を並べるほどの安全性があるとおもってはいないでしょうから。

投資家にとってみれば米ドルは依然としてその資産準備の第一の選択です。現在、外国投資家が人民元を持ちたいと思わないのは二つの大きな障害があるのです。第一に中国の資本の管制で、人民元が自由に交換される、資本の自由な流動(特に流出の場合)が実現する以前の、中国政府の約束はあてにならないからです。第二の障害は中国金融市場の透明度の欠如で、当局が自分の好きなようにマーケットを操れるということです。今年6月の株式市場に対する中国政府の強力な干渉は外国資本に目をむかせました。この二つの大きな障害に比べれば米国国債の安全性は際立っています。

ウォールストリートジャーナルは11月9日の「中国資本企業の人民元の先安すすむ」、12月1日には「人民元のSDR化も投資家の元の先安観を変えられない」という記事を掲載し、ともに中国投資家が中国経済の先行きがさらに弱まるとみており、中国中央銀行は引き続き人民元の値下げを続けるとみています。前の記事は読者に「現在のところ、人民元を見るには中国政府の言うことではなく中国企業の挙動をみるべきである」とアドバイスしています。

中国の夢⑵;人民元が米ドルの地位を襲う

「英米を追い越せ」という中国人の心奥に隠されてきた意識は時にひょっこり顔をだします。人民元がSDRに入ったということは人民元が国際化の道に最初の小さな一歩というだけの話なのですが、中国での論評の多くは人民元が米ドルに挑戦できる地位を獲得したとおもっています。これまでに中国の世論は「米国は人民元がSDRに加わるのに邪魔ばかりしてきた。それは米国が人民元の挑戦によって全世界の貨幣体系の覇王の地位を失うのを恐れているからだ」という論調一色に染まっていました。

人民元のSDR化は他の国々との支払いにおいての名義上の地位を獲得したにすぎず、米ドルに挑戦するというのにはまだまだはるかな道のりがあります。なぜならば米ドルは歴史的に形成された国際的な決済手段であり、貿易仲介手段であり、価値の貯蔵手段だからです。各大国の外貨準備が主に米ドルによるということ以外、国際貿易の3分の2が米ドル決済です。国際金融市場の卸売り交易は絶対多数が米ドル決済ですし、各国中央銀行の金融ハンドリングも米ドルベースでおこなわれています。国際銀行団の借款、国際債券市場の絶対多数の取引もすべて米ドル、米国債券です。現在、外国人は2000億米ドルの中国の株と債券を持っていますが、米ドル資産は16兆ドルで人民元の80倍です。

人民元は果たして米ドルと対等の地位に立てるのか?中国側はこれは時間の問題にすぎないとおもっています。一部の中国経済アナリストは謙虚にも「現在、人民元は米ドルに挑戦する立場にはない」と言っていますが、この意味は「将来、人民元が米ドルに挑戦する日は遅かれ早かれいつかは来る。それは15年後かもしれないし、もうちょっと遅いかもしれない」ということです。「経済学人」は今年初め、冗談ではなく「現在、人民元は全地球の舞台ではまだ小さな役割にすぎないが、しかし20世紀初め、米ドルだってそうだった」と書いています。

経済予測は結構ですが、強い通貨の地位というのには二つの大黒柱が必要です。一つは強い経済の実力による保証。二つ目は国の信用、評判です。この二つの点からみると中国経済は20世紀における米国のような発展は不可能です。

ひとつには中国経済の体質(技術の優位性、資源の優位性)ははるかに当時の米国に及びません。二つ目は米国の制度によって保証された国家の信用と評判の欠如です。ましてや、いま中国経済は長期的な衰退の時期の始まりにあります。国内の製造業が全面的に衰退し、金融業の危機が(巨額の赤字が再度出現し、シャドーバンクは相次いで倒産)かさなり、巨大な失業が暗い影をなげかけており、この近い5年から10年内に谷間をぬけだせるかどうかは大問題です。こうした状況の元で各国中央銀行や機関投資家が米ドルを捨てて人民元を選ばせるというのは大変に難しいでしょう。

100年のうちには世界にどれほどのことがおこるでしょうか?中国国内をみれば辛亥革命から現在にいたる歴史は「山が谷にかわり、谷が山にかわる」ぐらいの変化で何度も権力がうつりかわりました。中国の通貨も袁世凱の国民政府の紙幣から、金元券、人民元と変わりました。国際社会には二度の世界大戦と一度の冷戦があり、第三の波の民主化、アラブの春をえて国際通貨の歴史もまた巨大な変化があり、英国ポンドが首位の座を譲り、ブレトンウッズ体制が栄え、そして衰え、IMFのSDRバスケットの構成も三度かわりました。イタリーのリラが最初のバスケットに入っていたことを覚えている人はいるでしょうか?

ですから、米ドルの地位に挑戦するという話は多くの愛国者さんたち、やはり中国が共産主義を実現するぐらい遥かな未来の話だとおもったほうがいいでしょう。近い未来の目標は中国国内の人々にちゃんとメシをくわせることです。畢竟、紙幣時代以後の世界経済の発展しは「ある国家の経済が強ければその通貨も強くなり、経済が弱ければその通貨も強くなりようもない」ことを証明しています。

人民元がSDRバスケットに入ったというのは中国にとってみれば、起死回生のカンフル注射の強心剤というより、傷心を慰める鎮痛剤だともうしあげたほうがよいようにおもいます。(終)

拙訳御免。
原文は;何清涟: 人民币“入篮”,是强心针还是镇痛剂? http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-imf-china-deal-rmb-life-booster-painkiller-20151201/3083934.html

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日文文章 Tags:IMF, SDR, 人民元, 何清漣, 外貨準備

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