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「アラブの春」から7年 — 西側のイラン抗議運動への抑制報道の背景には — 2018年1月6日

Posted on January 7, 2018January 7, 2018 By minya-takeuchi No Comments on 「アラブの春」から7年 — 西側のイラン抗議運動への抑制報道の背景には — 2018年1月6日

 2017年12月27日に爆発的に始まったイランの大規模なデモに対して、西側メディアの反応は、おしなべて2011年の「アラブの春」当時に比べると抑制されたものです。米国のトランプ大統領だけが2018年1月2日のツィッターで「イランのプロテスターが、テヘランの残酷で腐敗した政権に対して、とうとう立ち上がった」と褒め称えていますが、メディアは、基本的にウォッチャーの立場に回帰し、かつてのように全力で反対派を支持するというようなことはありません。

★米国政府と西側メディアのイランのデモに対する態度の違い

1月3日、英国のフィナンシャル・タイムズ紙の社説、「イラン政府は国内プロテスターの声を聞くべきだ」が、大変はっきりと指摘しているのは、「イラン現行体制では、ロウハニ大統領が依然として一番大きな変革への希望」でした。「欧州連合(EU)は米国の強硬な態度に左右されるべきではない」ということです。イラン国内の開明改革は、ロウハニ現大統領を代表とする開放と体制改革が国家の長期的安定の鍵だと考えていることを強調しています。同紙は、強硬派は、物価値上がりや生活水準の長期停滞への民衆の不満を利用して、意図的にロウハニ大統領の人気を傷つけようとしている。ロウハニ大統領の改革への約束は、イラン国内の宗教指導者とその手先の革命防衛隊によって脅威を受けており、また一方では自分たちの政権内部のタカ派やワシントンのタカ派政府の左右から挟撃されている、としています。トランプ大統領とイスラエルの政治家が、デモを支持するのは賢明ではない。外部からの関与は、強硬派に抗議鎮圧の格好の口実になるばかりで、さらにロウハニ大統領の力を弱めることになるだけだ、と指摘しました。

 2011年に「アラブの春」が起きた時、西側メディアの大半は革命的熱狂の中で、少なからぬメディアの記者たちは、ウォッチャーとしての冷静さを失い、革命の参加者、実行者になってしまい、西側国家は四つの国家の独裁者を倒すのに行動すべきだという主張一辺倒でした。それから7年が過ぎた今、メディアは昔と同じ、当時の主な記者も多くが現役を続けていますし、政治傾向も依然として左派傾向です。ただ、唯一、彼らの頭を冷やした要素は、北アフリカと中東の四カ国の現実です。「アラブの春」は長い「アラブの冬」となってしまい、最後には、ISIS(自称イスラム国)とヨーロッパの安全を失わせるほどの大量の難民を生み出しました。

 トランプ大統領のイランデモに対する評価と熱情は、オバマの「アラブの春」支持にも劣らないものです。「人々を圧迫する政権は永久に続くことはなく、人民が選択する日は近い…イランの指導者がもっとも心配するのは、米国の強大な軍事力ではなく、イラン人民である。そして、それこそがイラン政権がインターネットを制限し、衛星アンテナを破壊し、徒手空拳の学生プロテスターを射殺し、政治改革人士を監禁する理由である」と語っています。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)1月3日報道によると、米国政府は、世界の同盟国にイラン人民を支持するように訴え、テヘラン政権に新たな制裁を加えることを考慮中とのことです。

これに対して、フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、明快にトランプ大統領に反対しています。「米国政府が盟友国家に指示を求めても、米国の強硬姿勢に左右されてはならない」とし、イラン政府に圧力を加えても問題は解決しない、より賢明な方法は、引き続き接触を保ちながら、イランの漸進的な改革を鼓舞することなのだ、と述べています。

 メディアの意見は政府の意見ではありませんが、EU主要国のドイツとフランスは、最近の対米関係から見て、トランプが求めるイランへの圧力で共同歩調を取ることは、かなり困難でしょう。英国にしたところで、積極的にかかわらないでしょう。1月5日、国連安全保障理事会が米国の要求で緊急会議を開きましたが、メンバー国の代表には、デモはイランの国内問題だと米国を批判する声もありました。イランの外務大臣は、会後、「米国のお節介な態度に対して、安保理は抵抗し、これはトランプ大統領の外交政策のまたしてもの大失敗だ」と言いました。

 

★★西側メディアはなぜおとなしい?

 かつて、中東北アフリカ四カ国の民衆が、自国の専制独裁者を倒すべく広場に集まり、西側メディアが「アラブの春」として報道した時には、広場の群衆同様に革命の狂騒に歓喜一色で、都合の悪い事実、例えばエジプトのタハリール広場での集団強姦事件などは自主規制して報道しませんでした。もし、五年も経った2016年2月15日になって、2016年の大晦日にドイツのケルンでイスラム移民による大規模な集団痴漢事件が起きたのを背景に、ドイツの週刊誌デア・シュピーゲルに、ベドウィン族の血を引く女性作家・Miral al-Tahawyが書いた「エジプトの性行為、女性の体は階級闘争の目標」がなければ、この革命の狂った熱狂の中で起きたこの事件は歴史は埋もれてしまったかもしれません。

「アラブの春」の時、同じフィナンシャル・タイムズ紙は多くの社説を掲載していました。2011年3月21の社説は「カダフィを打倒する正当性」というタイトルで、無条件にカダフィ政府を欧州同盟軍が攻撃するのを支持し、更にはアラブ国家の指導者は皆、この行動を支持すべきだと呼びかけています。同じような専制反対の人民の行動なのに、今回とは大きな違いがあります。なぜでしょうか? 当然、トランプへの反感が原因ではありません。それは「アラブの春」の後に続いた、長い「アラブの冬」のせいです。メデイァは「アラブの春」があまりにも軽率な判断だったと、公式に認めたわけではありません。でも、おそらくISISがしたい放題の暴虐の限りを尽くし、中東、北アフリカ四カ国が全て革命後遺症の苦しみを舐めている姿を見て、西側世界もやっとこの件を反省するようになったのだと確信しています。

 ニューヨーク・タイムズの記者やコラムニストの中にも、かつて、Facebook革命とかtwitter革命を熱烈に鼓吹していた人たちが少なからずおりました。「アラブの春」から「ウォール街占拠」、さらにイスタンブール、キエフ、香港の広場でおきた政治運動で、ソーシャルメディアの果たした役割を手放しで褒め称えたものでした。しかし、「アラブの春」が長い「アラブの冬」に変わってから、そのうちの一人は、「硝煙がおさまっても、こうした革命の大半は、いかなる持続可能な新たな新政治秩序を生み出せなかった」と振り返っています。グーグルのエジプト職員だったWael Ghonimは、匿名フェイスブックを使って、当時のムバラク大統領を倒したタハリール広場の革命を支援しましたが、最後に。彼は「ソーシャルメディアは旧来の秩序を破壊するには大変簡単だったが、それを使って新たな秩序を打ち建てるのは、極めて困難である」と気がつき、ソーシャルメディアに対して、深い懐疑心を持つようになりました。

 

★西側の恐れ — 革命は出来ても、収拾が難しい —

 2011年、中東・北アフリカのジャスミン革命が始まったとき、世界は賛美の声一色になり、それが「アラブの春」と呼ばれるようになりました。それは「未完の大業」である第三の民主化を完成させるもとして、大変な希望がかけられたのです。しかし、エジプトで2013年に「第二次革命」が起こり、軍政府がイスラム同胞団を残酷に弾圧してから、西側はやっと目が覚め、今回の革命の血潮の中から、民主の嬰児は誕生せず、民主の成果を守ることは、民主を打ち建てるより更に困難なことを思い知ったのでした。

 今日、2018年1月、アラブの春から7周年になりますが、上述の四カ国のうちには一つとして、「民主の春」を迎えている国はありません。

 チュニジアは、血まみれになった「アラブの春」の中では唯一の民主の果実」が残るところです。しかし、2017年になっても依然として高失業率、膨大な財政赤字、沿岸部と内陸部の激しい貧富の差などの問題があり、反腐敗、反テロの極めて厳しい情勢があって、全体の状態は、革命以前の水準に回復していません。

 シリアは2017年に転換点を迎えました。ISISの崩壊、終末に伴って内戦、聖戦、代理戦争が一体となった7年間に及ぶ戦争はついに終結し、国内は全体としてみれば落ち着いて、戦争の傷を癒そうとしていますが、しかし、米国とロシア、その代理人の間での大国のゲームは依然として終わってはいません。

 エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシーは、「第二次革命」で政権の座につきましたが、現在の政権のテーマは依然として、経済の発展、治安の強権による維持、テロとの戦いに追われています。2011年のエジプト革命について、ムバラク時代の新自由主義経済改革が中産階級と政府を反目させた主要な原因だと考えています。革命再発を防止するために、政権側は構造改革と私有化の進展をストップさせ、政府主導の経済発展を試みています。治安維持ではムスリム同胞団を封じ込めることには比較的成功をおさめ、幹部指導者たちを拘束しています。現在、ムスリム同胞団は平和路線と暴力蜂起路線の対立があり、各地方組織が混乱して、落ち目になっており、現政権に挑戦する力はありません。しかし、中東情勢の変化は、エジプトにも及んでおり、イラクとシリアのISIS組織の流動化によって、兵士や資金、武器が少なからず、シナイ半島に流入しています。実戦経験を持つエジプト人の武装勢力分子が帰国したことによって、2017年はテロ事件が多発しました。

 リビアのメディアは「カダフィ時代は、カダフィ以外は皆良かった」と書いたことがあります。しかし、現在は毎日が戦乱に明け暮れており、部族間同士の戦闘が絶えず、経済は崩壊に瀕死、失業率は前代未聞の高さです。更に恐ろしいのは、リビアが奴隷貿易の盛んな国家になってしまったことです。CNN放送によると、2017年12月初め、リビアでは「奴隷オークション」が開かれたと言います。Walk Free Foundationが出した、「2016世界奴隷指数」(The Global Slavery Index)によれば、4580万人が、ある意味で現在の奴隷だといわれます。そのうち、シリア、イエメン、イラク、そしてリビアがトップ6をしめます。前指導者カダフィのSaif al-Islam Gadaffiは、2018年内に行われる大統領選挙に出馬すると、ちょっと前に宣言しています。

  

★社会の転換と「経路依存」

 西側メディアが一番認めたくないことが二つあります。一つはシリア内戦による400万人の人々が最後に、欧州を飲み込む巨大な難民の潮流になったことです。もう一つはISISが混乱の中から漁夫の利を得て、国際的にもっとも恐るべきテロ組織になったことです。「ポリティカル・コレクトネス」のタブーに触れるので、西側メディアは、こうした無茶苦茶な狼藉の結果は、実は数年前のアラブの春と関係しているということを認めたがりません。しかし、現実がもたらす懸念が、西側メディアに、今のイランのデモ活動に対して、慎重かつ抑制的な報道姿勢を取らせているのです。

 中東・北アフリカ四カ国の経験は、いかなる国家も現代化に向かう家庭でその制度の向きは全て、「経路依存」(path dependence)から逃れられないことを証明しています。この理論のポイントは、「革命前の社会政治発展程度が、新たな社会建設の過程における政治的選択を決定する」です。

 2016年12月、イラクのIyad Jamalal-Din(イヤード・ ラオフ ・モハメド・ジャマル・アル・ディン /イラクの宗教指導者、政治家)はトランプ大統領に公開質問状で、テロ組織に打撃を与えるには歩調をあわせるべきだとしました。そして、政治化したイスラム教をナチスや共産主義より更に悪質だとする決議を行い、更に安全保証理事会は、イスラム教国家に対して、世俗化する義務を追わせるべきである、としました。そして手紙の最後に、「前任の米大統領の最大の誤りは、世俗化がまだ行われていないときに、民主と自由を私たちの国家に植え付けようとしたこと。今後大事なことは世俗化とムスリムと非ムスリムの平等である」と書いています。(原文はこちら;http://www.focus.de/politik/experten/ghadban/kurs-des-designierten-us-praesidenten-donald-trump-und-der-islam_id_6286253.html)

 簡単に言ってしまえば、西側世界の「アラブの春」に対する「七年の恨み」は、つまりは自らが「龍のタネを蒔いて、結局ノミを収穫してしまった」ということ。実に考えるに値することが山ほどあるのです。(終)

 原文は;《民主中国》サイト。2018年1月6日,https://minzhuzhongguo.org/MainArtShow.aspx?AID=95216)

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